Salesforce Commerce Cloudでヘッドレスコマースを導入するメリットと成功事例

2024.12.23

2024.12.23

この記事は約8分で読み終わります。

Salesforce Commerce Cloudでヘッドレスコマースを導入するメリットと成功事例のメインビジュアル
市場の変化に合わせたすばやい対応が可能で、ユーザーの購入体験を最適化できる「ヘッドレスコマース」の導入をご検討中でしょうか?

本記事では、「ECサイトのパフォーマンス改善や、新しい技術を導入して競争力を高めたい」とお考えの皆さんに向けて、「ヘッドレスコマース」の基礎から、Salesforce Commerce Cloudが提供する独自の強み、導入のメリット、成功事例までを網羅。EC運営者が「ヘッドレスコマース」導入の検討を進めるために必要な情報を提供しています。

「ヘッドレスコマースの基本的な仕組みとは何か?」「Salesforce Commerce Cloudを使うことで何が実現できるのか?」「従来のECプラットフォームとの違いや優位性は?」「ヘッドレスコマース導入のメリットや具体的な事例について知りたい」「どのようなリソースやパートナーが必要か?」など、「ヘッドレスコマース」や「Salesforce Commerce Cloud」の詳細についてリサーチされている方は、ぜひご一読ください。

ヘッドレスコマースとは?その基本と進化

ヘッドレスコマースとは?その基本と進化のイメージ画像
「ヘッドレスコマース」とは、顧客に直接タッチするフロントエンドと、ECサイトを構築するバックエンドを切り分けて開発する仕組みです。

従来型のECサイトはフロントエンドとバックエンドが連動していたため、顧客に新しい購入体験を提供しようとすると、フロントエンドとバックエンド双方のシステムのアップデートが必要でした。

たとえば、バックエンドの在庫管理機能を一部変更したい場合、フロントエンドも合わせて変更する必要があり、またフロントエンドの文字・画像・ボタンなどのレイアウトを変更・修正する場合でも、バックエンドへの影響を考慮する必要があります。このように小さな機能やデザインの修正・追加でも、いちいち調整や確認などの時間を要し、大きなトラブルを引き起こす可能性がついてまわっていました。

その点、「ヘッドレスコマース」であれば、システムが切り分けられているため、フロントエンドを変更したい場合も、バックエンドの影響を受けずに独自のカスタマイズが可能になり、開発時間を削減できるだけでなく、ユーザーニーズにいち早く対応することが可能になります。

このように開発の自由度が高く、常にユーザーの購入体験の改善を追求できることから、グローバルでも「ヘッドレスコマース」を導入しはじめている企業が多くなっています。

世界的な規模で注目されている「ヘッドレスコマース」ですが、その背景や理由は以下の通りです。

ユーザーの購買行動の多様化

ユーザーが購買行動を行う際は、パソコンだけでなく、スマートフォン、タブレットなど、さまざまなデバイスを利用することが多く、商品を掲載するプラットフォームも、ECサイトやECモールに加えてSNSなどもあり、これからもさらに増加していくことが見込まれます。

このようにデジタル技術の進化や新しいWebサービスが続々とリリースされていることから、世界規模でユーザーの購買行動が急速に多様化。日々変化する顧客のニーズに柔軟に対応するためには、顧客の購買行動を予測して迅速にアジャストする必要があります。

そのため、UIなどユーザーのタッチポイントを迅速にアップデートできる手段として「ヘッドレスコマース」が注目されているわけです。

オムニチャネルへの対応

今では、メールマガジンやSNSにチャットなど、あらゆるチャネルを通じてユーザーにアプローチして集客する必要があり、さらにインターネット上に限らず、実店舗で商品を見たり触ったりする体験の提供も不可欠になっています。

「ヘッドレスコマース」を導入すれば、オンラインとオフラインの垣根をなくしたオムニチャネルへの対応が容易になり、各チャネルにあった顧客体験を提供することが可能になります。

世界的な競争の激化

大手企業から個人事業主にいたるまで、今や世界中に星の数ほどECサイトが存在し、競争が激化するばかりです。その中で生き残るためには、競合他社とECサイトのデザイン性や利便性で差別化を図り、市場のトレンドやユーザーニーズに合わせて、フロントエンドを柔軟に変更することが必要です。「ヘッドレスコマース」を導入すれば、ECサイトをスピーディーかつ柔軟に構築できます。

また、APIを活用した「ヘッドレスコマース」であれば、ページの読み込み速度を向上させることも可能になるため、ユーザーの離脱率を抑える効果も期待できます。

このように、「ヘッドレスコマース」は、顧客体験を格段に向上させながら、効率的に商品を管理・販売することができる、革新的なアプローチと言えるでしょう。

Salesforce Commerce Cloudが提供するヘッドレスコマースの特徴

「ヘッドレスコマース」において、アーキテクチャの根幹になるのがAPI(Application Programming Interface)です。APIとは、異なるソフトウェアやプログラム、Webサービスとの間でデータを仲介するソフトウェアのことで、このAPIが機能することで、ECサイトのフロントエンドとバックエンドの切り離しを実現しています。

具体的に表現すると、ECサイトでユーザーが商品を購入するたびに、APIコールによってデータ(決済、商品、在庫、配送など)がバックエンドに送られます。その際フロント側は、データをバックエンドのシステムに渡すだけで良いので、顧客体験を最大化させるためのフロントの開発に専念することができるのです。

また、このAPIを介して、実店舗・各種SNS・IoTデバイスなど、顧客接点となるチャネルをスピーディーに用意することが可能になります。さらに、フロントエンドでブランドや店舗別にECサイトを構築できるため、それぞれ個別にデザイン、UIを最適化することもできます。

複数ブランドを展開するアパレル事業などであれば、バックエンドのシステムを共通化する一方で、ブランドごとに複数のフロントサイトを展開し、スマホアプリや店頭などの各チャネルで最適な購入体験を顧客に提供できるようになります。

マルチテナント型クラウドベースのEÇプラットフォーム「Salesforce Commerce Cloud」が提供するAPIは、豊富なレパートリーと高い拡張性が特徴です。以下では主要なAPIを取り上げ、それぞれの特徴や活用シーンを具体的にご紹介します。

SOAP API

異なるプログラムやプラットフォーム間で情報を交換するためのプロトコルで、Salesforceが提供するなかで最も標準的なAPI。

自由な構造化能力と、データの送受信や管理作業の簡略化が可能な柔軟性を有するXMLデータ形式へ準拠しているため、拡張性が高く、データ構造を自由に定義できるのが特徴です。

またレコードの取得・更新やデータ検索、パスワード管理など、システム間のデータ統合に必要な機能が搭載されているため、SalesforceにERPや会計ソフトを連携するなどの活用も可能です。

REST API

Salesforceの機能やデータにアクセスするための基本的なAPIです。互換性に優れていることから、とくにモバイルやWebアプリケーションの統合、または大規模かつ複雑なタスクの実行に適しています。

簡略的なコーディングが可能なJSONと呼ばれるデータ形式に対応、XMLに比べてデータ処理の負荷が少ないことから、処理速度を格段に向上させることが可能です。

なお「REST API」は、別のSalesforce APIに応用可能。CMSやビジネスチャットツールと連携する場合は「Connect REST API」、レコードの作成や更新を行う際は「User Interface API」を利用することができます。

Bulk API

Salesforceのサーバー上で大量のデータレコードを処理することを目的としたAPIで、非同期のため大規模なレコードでも高速処理が可能です。数百万単位のレコードでも扱うことができるため、基幹システムのマスタデータを読み込むようなケースで実力を発揮します。

User Interface API

Salesforce上でカスタムUIを構築するためのAPI。レコードの操作、リストビューのカスタマイズ、アクションの統合、お気に入りの追加など、ユーザが直感的に扱えるインターフェイスの開発を可能にし、顧客の操作体験を向上させるカスタムアプリケーションの開発をサポートします。

Salesforce Commerce Cloudを活用したヘッドレスコマースのメリット

それでは、Salesforce Commerce Cloudを活用したヘッドレスコマースのメリットについて、改めて具体的に見ていきましょう。

ECサイトのデザインやUIの自由なカスタマイズが可能

従来のECシステムの場合だと、フロントエンドとバックエンドが密接に関係していたため、UIの細かな調整であってもシステムの改修が必要であったり、同時に作業できないため、一方の作業が終わるまでの待機時間が生まれてしまうなど、無駄な時間や工数が発生するケースが多々あります。

「ヘッドレスコマース」を導入すれば、フロントエンドのUIを自由かつスピーディーに変更することが可能になり、ユーザーニーズに応じたコンテンツやサービスの提供をスムーズに行うことが可能になります。

様々なチャネルを短期間かつ自由に追加可能

現在の顧客は、SNSや、動画コンテンツ、店舗など、様々なチャネルを上手に使い分けます。それぞれをつなぎ合わせ、スムーズで一貫性のある購買体験を提供することが、顧客満足度の向上や売上アップに直結するわけです。

バックエンドに依存せずフロントシステムを拡大できる「ヘッドレスコマース」なら、消費者とのタッチポイントとなる各種チャネルを、スピーディーかつ自由に用意することが可能になります。

ECサイトのパフォーマンスが向上

「ヘッドレスコマース」は、APIを活用するため、ページの読み込み速度を向上させることが可能です。また、フロントエンドとバックエンドが分離されているため、大量のトラフィックに対してもパフォーマンスが落ちにくいという特徴もあります。

「ヘッドレスコマース」を導入すれば、スピーディーで安定したパフォーマンスにより、サイト離脱率を抑える効果も期待できるわけです。

ECサイトのサイバーリスクを軽減

フロントエンドとバックエンドを切り離しているため、サイバー攻撃を受けた際の被害を軽減化することが可能です。

「ヘッドレスコマース」では、顧客情報といった重要なデータはバックエンドで管理されるため、フロントエンドには機密情報などのデータが蓄積されません。仮にフロントエンドがサイバー攻撃を受けたとしても、情報が漏えいするリスクを最小限に抑えることができるのです。

導入事例と成功の裏側

ここでは、Salesforce Commerce Cloudを利用してヘッドレスコマースを実現したブランドの紹介と、成功の要因について解説をいたします。

資生堂インタラクティブビューティー株式会社

資生堂インタラクティブビューティー株式会社
資生堂インタラクティブビューティー株式会社では、資生堂グループの「IPSA」の公式サイトに、Salesforce Commerce Cloudのオールインワンのヘッドレスストアフロントソリューションである、コンポーザブルストアフロントを採用しています。

ヘッドレスコマースを導入したことで「初期表示速度の向上」「高度なページ移遷」が可能に。お客様がサイトのトップページを訪れ、商品を見つけ、最終的に決済を完了するまでの一連の顧客体験の向上を実現しています。

また、バックエンドに干渉することなくフロントエンドを迅速に変更できるため、PDCAサイクルを加速することができ、インターフェイスなどを迅速に最適化することで、顧客エンゲージメントとコンバージョン率の向上を見込んでいます。

イオン・シグナ・スポーツ・ユナイテッド株式会社

イオン・シグナ・スポーツ・ユナイテッド株式会社
「Outfitter」は、イオンとSIGNA Sports United GmbH(ドイツ)の共同出資にて展開する、カスタムユニフォームのECサービスです。

ユーザーが、ブラウザー上で楽しみながらストレスなく自分だけのユニフォームを作り上げていくという購買体験を実現するために、ECプラットフォームのUI制約を意識しないデザインが求められました。そのため、通常のECプラットフォームでは実現が困難な表現を採用しましたが、ヘッドレスコマースの導入によって、プラットフォームの制約を受けることなく自由なUIを実現することができています。

また、文言やレイアウトといったシステムに影響を及ぼさない修正の場合は、バックエンドに手を加える必要がなくなりました。さらにコマース機能を埋め込んだLPの量産などが制作チームのみで完結できるようになるなど、スピード面・コスト面で大きなメリットをもたらしています。

Duluth Trading

Duluth Trading
「Duluth Trading(ダルース・トレーディング)」は、アメリカ全土に65店舗を展開するワークウェア会社です。その製品ラインは、作業服、カジュアルウェア、アウトドアギア、ツールなど、幅広く展開しています。また、男性だけでなく女性向けのアイテムも提供しており、性別を問わずに多くの人々に支持されています。

ブランドの売上の6割以上がオンラインである同社では、柔軟性があり顧客のニーズに合わせられるサイトを構築するために、サイトのスピードを重要視していました。

そこで、SalesforceのCommerce Cloudを導入しサイトを再構築。「ヘッドレスコマース」を採用したことで、Webサイトでもアプリのようなスピード感のある操作性を実現しています。結果、ページ読み込み速度は1秒向上し、サイト全体の表示速度が上がったことで、コンバージョン率も向上しています。

上記のブランドが成功している要因は、主に以下の3つのポイントになります。
・ヘッドレスコマース柔軟性と俊敏性を活かした、スピーディーなUIの最適化
・サイトの操作性を格段に向上させ、ストレスのない購買体験の提供を可能に
・フロントとバックを切り離したことにより、サイト運用工数の削減を実現

同様の効果を自社ECサイトにもたらしたいとお考えのEC事業者の皆さんは、ぜひ「ヘッドレスコマース」の導入を検討してみてください。

【まとめ】Salesforce Commerce Cloudでヘッドレスコマースを導入するメリットと成功事例

本記事では「ヘッドレスコマース」の基礎から、Salesforce Commerce Cloudが提供する独自の強み、導入のメリットなどをご紹介してきましたが、いかがでしたでしょうか。

「ヘッドレスコマース」を活用することで、従来のECサイトでは得られなかったような購買体験を、スピーディにユーザーに提供できることがおわかりいただけたかと思います。

しかし、見落としてはならない点があります。「ヘッドレスコマース」を導入すれば確かにフロントエンドの自由度は上がります。しかし、バックエンドにおける管理業務や連携テストといった工程が増えるため、多くの人員が必要となります。

また、ECサイトの顧客体験の満足度を上げるには、柔軟に対応できるバックエンドの技術者の確保も重要です。たとえフロントエンドのUIが重質しても、受発注管理や在庫管理、決済などがスムーズに機能しなければ、顧客満足にはつながりません。バックエンドのシステム構築や修正作業を柔軟に対応できる技術者も確保することで、はじめてECサイトの構築・運用がスムーズになるのです。

ルビー・グループは、Salesforce Commerce Cloudよりコンサルティングパートナー認定を受けており、開発実績も豊富にございます。また英語対応も可能なため、海外(本国)で開発する際の、日本企業のサポートも行っております。

さらにECサイトにおける構築、デザイン、マーケティング、オペレーション、物流など一気通貫で行う事ができ、全てにおいてプロフェッショナルが対応いたします。Salesforce Commerce Cloudで「ヘッドレスコマース」を導入するご予定がございましたら、是非お気軽にご相談ください。

ECサイト開発サービス詳細リンクバナー ECサイト開発サービス詳細リンクバナー

この記事を書いた人

ルビー・グループ コーポレートサイトチーム

各分野の現場で活躍しているプロが集まって結成されたチームです。
開発、マーケティング、ささげ、物流など、ECサイトに関するお役立ち情報を随時更新していきます!

もっと見る