導入することにより、ストアの日常運営やバックエンドのプロセスも効率的に自動化することが可能になります。
従来、Shopify Plusなどの上位プランのみで使用可能でしたが、2022年のサマーアップデートによりスタンダード以上のプランであれば使用可能になりました。これを機に 「Shopify Flow」の活用を検討している方も多いのではないでしょうか。
本記事では、Shopify Flowに関する基本的な知識から具体的な活用方法、導入後の効果測定や、施策の改善方法などについて解説しています。
「Shopify Flowについて知りたい」「具体的な活用例は?」という方はもちろん、「導入後の効果測定と改善のポイントについて調べている」という方も、是非ご一読ください。
Shopify Flowとは?自動化でEC運用を効率化する新たな手法
コーディングを必要としないブロック連結方式なので、言語などの専門知識を必要とせず、誰でも直感的にワークフローを作成可能です。
また、ワークフローは、150種類以上のテンプレートが用意されている点も大きな特徴です。一般的なEコマースビジネスの様々なニーズに対応するように設計されており、ユーザーは自社の要件に合わせて簡単にカスタマイズすることができるため、初心者でも簡単に各種業務の自動化設定を実現できます。
「Shopify Flow」で自動化できる主な業務は以下の通りです。
注文・在庫管理
・注文が入った際に通知を受信
・注文商品発送時に購入者へ発送メール送信
・在庫切れ商品の非表示
・商品在庫数が設定数より少なくなった場合に通知を受信
・新商品のタグを一定期間後に削除
・限定商品を期間後に非表示 など
ロイヤリティ・顧客維持
・会員登録を行ったユーザーをスプレッドシートに追加
・設定額以上の購入ユーザーに「VIP」タグを付与
・特定商品の購入者にクーポンをメール送信
・継続購入のユーザーへのロイヤリティポイント付与
・一定金額を超える返品があった顧客を自動でタグ付け など
不正注文の防止
・リスクの高い注文を通知
・不正返品の履歴を持つ顧客からの注文を通知
・特定ユーザーからの注文を自動キャンセル
・チャージバックがあった際に通知 など
フルフィルメント管理
・予定通りの発送ができなかった注文の通知
・顧客が希望する配送方法に基づいて注文をタグ付け
・設定条件に基づいてフルフィルメントをリクエストまたは保留 など
なお「Shopify Flow」導入のメリットとしては、次のようなものがあります。
・事務的な作業工数が削減可能に
・顧客対応やプロモーションに多くの時間を割くことが可能に
・既存顧客との関係性の維持やリピート率の向上が図ることが可能に
これまで人力で作業する必要のあったあらゆるタスクを自動化することで、多くの工数削減を期待でき、それによって確保したリソースをコア業務に当てることが可能になります。
自動化で売上を伸ばす!Shopify Flowの具体的な活用例
前項では、Shopify Flowの基本概念と機能、導入によるメリットについて触れましたが、具体的にどんな自動化をすると売上を伸ばすことができるのか、まだイメージできていない方も多いのではないでしょうか?
そこでここでは、具体的な自動化のワークフロー例をご紹介します。顧客が注文やキャンセルをすると担当者に通知がいったり、2回目の発注時には顧客にメッセージが飛んだりと、顧客ごとのシナリオを作成できるので、さまざまなケースで役立つはずです。ぜひ参考にしてみてください。
Shopify Flowで作成可能なワークフロー例
在庫数が一定以下になったら社内に通知メールを送信する
指定した在庫数以下になると、自動で担当者に通知メールの送信ができます。在庫の補充のリマインドとして活用することで、在庫切れを防ぎ、販売機会の損失を防ぎます。
在庫数が0の商品を非表示にする
商品の在庫数が0になった際に、自動で商品を非表示にします。販売できないのに商品が表示されたままの場合、お客様の購買体験を損なうリスクがあるだけでなく、ストアに対する信頼低下にも繋がりかねません。ブランディングのためにも是非活用しましょう。
在庫切れ商品の需要が増加したときに通知を受け取る
顧客からの需要が増加しているのにも関わらず、在庫が0であることに気づかなければ、売上拡大のチャンスを逃すことになります。通知を受けたらすぐにでも商品を補充しましょう。
特定のクーポンコードが使用された場合、注文に無料の商品を編集して追加する
特定のクーポンが使用された場合、自動で無料の商品を追加できる機能です。販促キャンペーン等に活用できるでしょう。
不正の可能性がある注文を自動キャンセルまたは保留する
「一定以上の数の大量注文」「過去に返品を何度もしたことがあるユーザーからの注文」といった条件で、注文を自動キャンセルすることが可能です。また不正の可能性がある注文を保留にし、注文が完了する前に事前に通知させることもできます。気づかないうちに不正注文が処理されてしまうことを未然に防ぎ、損失を大幅に減らすことが可能です。
高額注文の通知
特定の金額以上の注文が入った際に、自動で通知を送信します。詐欺の被害などを未然に防ぐ効果が期待できます。
ワークフローの作成には「トリガー」「条件」「アクション」というコンポーネントを使用し、それぞれを連結させることでワークフローが完成します。
「トリガー」は、自動処理を実行するための要因を指します。「新規の注文が入った」「在庫が変動した」「注文がキャンセルになった」などをきっかけに、ワークフローを発動させます。
「条件」とは、ワークフローを分岐させる条件で、「〇〇の場合はAを実行し、XXの場合はBを実行する、△△の場合は処理を終了する」などが該当します。
「アクション」とは、実際に実施するタスク・処理になります。
例えば、「商品や顧客にタグをつける」「メール通知を送る」「条件を満たした顧客にクーポンを付与する」など、条件が満たされた時に発動するアクションを指します。
なお「Shopify Flow」には150種類以上のテンプレートが用意されていますが、既存テンプレートに存在せず、自身で設定するには難易度が高そうなワークフローの場合は、Shopifyコミュニティに質問を投稿するのも1つの方法です。Shopifyコミュニティへの質問にはShopifyに詳しい方々が回答してくれますので、ぜひ利用してみてください。ただし、質問に対して必ず回答がつくわけではないので、ご注意ください。
リピート購入促進と顧客対応効率化
一般的に新規顧客の獲得は、既存顧客の維持よりも5倍のコストがかかると言われています。そのため顧客を失わないための対応や、既存顧客のリピートや休眠顧客の呼び戻す施策は重要です。
リピート施策は、顧客一人一人に訴えかけるようなパーソナルなメッセージが有効ですが、実際に手作業で一人一人にアプローチすることは不可能でしょう。
「Shopify Flow」では、一定期間購入を行っていない休眠顧客や、特定ジャンルの購買を行った既存顧客に絞ってサービス提供をするようなワークフローを作成できます。
具体的にどんな施策が自動化可能かを以下でご紹介します。
注文数に応じて顧客の階層(タグ)を設定
2回以上購入した顧客をリピーターとして分類。顧客に「リピーター」タグを自動で追加することで、リピーター向けに特別なオファーをするなど、キャンペーンを効率的に実施することができます。
リピートユーザーへのギフトカードや割引コードを送信
2回目、3回目の注文をしたユーザーに対して、自動でギフトカードをメールで自動送信したり、割引コードをテキストメッセージで自動送信します。
再入荷時にお客様にメール送信
特定の商品が再入荷した時にメール受信を希望されているお客様に、再入荷案内のメールを自動送信できます。
ウィッシュリストに追加した商品が販売中であることを顧客に通知
お客様がお気に入りリストに入れていた商品が入荷するなどして、販売中になったことを自動でメール送信。購入を促します。
定期購入のお客様にクーポン配布
定期購入を可能にするアプリと組み合わせることによって、クーポンや新商品のオファーを自動送信。中長期のお付き合いを望まれるお客様に、適切な対応が可能になります。
高額購入者へ割引クーポン送信
一定額以上の購入をした顧客に特別な優待サービスを自動で提供することによって、顧客満足度が向上し、リピーターを増やすことが期待できます。
初回購入より30日後にクーポンコードを自動送信
初回注文後に、2回目以降の購入を促進するためのクーポンを送信することでリピーターを獲得します。
お客様の誕生日にクーポンを送信
お客様の誕生日に合わせて割引クーポンを送信。手動で行うのは大変ですが、自動化することでスムーズにOne to Oneマーケティングが実行できます。
レビュー依頼の自動化
商品購入後にメールで顧客へレビューの依頼を自動で送信。商品の信頼性を高め、新規顧客を引き付けるトリガーになることが期待できます。
初回購入から60日以上購入していない顧客にLINE配信
初回購入から60日以上経過しており、LINEのID連携(会員IDとLINEのユーザーIDの連携)もしている顧客に対してメッセージを自動配信。休眠顧客へのアプローチに有効です。
「定期購入解約」「定期購入停止」をした顧客にメール配信
特定の商品やサービスを解約した顧客のみにタグを付与し、30日後にセグメント配信が可能。休眠復活を促します。
カートに商品を入れたままの顧客にリマインドメッセージ送信
カートに商品を入れたまま購入ボタンを押さずにストアを離れたユーザーへ、リマインドメッセージを自動送信。ストアへの呼び戻しを行い、カゴ落ちを防止することが期待できます。
ネガティブなレビューに対するサポート提供
ネガティブなレビューを受け取ったときのメールでの通知や、書き込んだユーザーにメールを自動送信。ネガティブなレビューは商品の売上もストアの評判も下げる可能性がありますが、その後のサポートによって、重要な顧客へと転換することも期待できます。
配達が遅れた場合、顧客にポイントを付与し通知
配達遅延の際にポイントを付与することで、顧客離れを防ぎ、リピート購入を促進することが可能です。
Shopify Flow導入後の効果測定と改善のポイント
ここまでご覧いただいた通り、「Shopify Flow」の導入により、ストアの運営に関わるタスクや処理を自動化、注文や在庫の管理、顧客管理、不正注文の防止、フルフィルメント管理などの効率化が可能になります。
しかし、それによりどのような効果があったか(なかった)をきちんと測定し、さらに各種施策を改善していくことが重要です。ここでは、Shopify Flow導入後の効果測定の方法や、運用改善に向けた具体的なアプローチを解説します。
以下の手順で「Shopify Flow」導入後の効果測定と改善を行ってみましょう。
KPIを設定する
KPI(Key Performance Indicator)とは、各種施策が軌道に乗っているのか、それとも停滞しているのかの途中経過を把握するための手段です。マーケティング分野であれば、広告のコンバージョン数や、SNSのフォロワー数など、定量的に測定ができるものをKPIとして設定します。
「Shopify Flow」導入後の効果測定を正確に把握するために、以下を参考にワークフローごとに「訪問数◯人アップ」や「在庫欠品率◯%ダウン」など、具体的な目標を事前に決めましょう。
売上関連のKPI
・訪問者数:ストアに訪れたユーザー数
・顧客単価:ユーザー1人あたりの購入金額
・購入回数:ストアで商品が購入された回数
・CVR:ストア訪問者数のうち購入に至った割合
・F2転換率:初回購入したユーザーがリピート購入した割合
・リピート率:ストアに訪れたユーザーのうち、リピート購入したユーザーの割合
コスト関連のKPI
・CAC:新規ユーザーの獲得費用
・原価率:商品の販売価格に対して商品を販売するまでにかかる費用の割合
・売上総利益:総売上額から直接的な販売コストを差し引いた利益
在庫管理のKPI
・過剰在庫:過剰な在庫数
・回転率:一定期間内に在庫が入れ替わった割合
・在庫欠品率:在庫不足のために商品を提供できなかった割合
・在庫保管コスト:在庫を保管するのに必要なコスト
マーケティング施策のKPI
・滞在時間:ストアを訪問したユーザーの滞在時間
・直帰率:他のページを閲覧せずに離脱した割合
・メルマガ購読者数:メルマガの購読登録しているユーザー数
・メルマガ開封率:配信したメルマガの開封割合
・メルマガクリック数:メルマガ内のリンクがクリックされた割合
・広告CPA:1件受注あたりの広告費用
・指名検索数:ECサイト名やブランド名が検索された数
なお、KPIとして設定する数は実現可能な範囲に留めることがポイントです。設定数が多すぎると管理が複雑になり実現性が低下します。また、KPIの計画だけで終わりにしないためには、各KPIごとに進捗を測定して報告を行う責任者を明確にしておきましょう。責任者には、各従業員に割り振られたKPIの進捗を測定・分析し、問題があれば軌道修正を行うための各種権限を与えることも重要です。
データを分析する
Shopifyの分析ツールを活用して、ワークフローがどの程度効果を発揮しているか確認します。たとえば管理画面の「マーケティング」セクションでは、
以下のようなマーケティング活動の成果を確認できます。
・オンラインストアのセッション数:オンラインストアに顧客が訪れた合計回数
・マーケティングからの注文:これまで実施したマーケティング活動(メルマガやWeb広告)からの注文数の合計
・マーケティングからの売り上げ:これまで実施したマーケティング活動(メルマガやWeb広告)からの注文金額の合計
・マーケティング費用:これまで実施したマーケティング活動の費用の合計(Web広告、SNS広告の出稿費用など)
また、キャンペーンごとに以下のような施策結果を管理することが可能です。
・セッション:キャンペーンからサイトへ訪れやユーザーの総数
・注文:キャンペーンの結果から、購入に至った注文数
・販売:キャンペーンの結果から、販売にいたった注文の合計金額
・費用:キャンペーンにかかった費用の合計
その他にも、メールやWeb広告などのマーケティング施策ごとにも結果を確認できます。
マーケティングメールの場合であれば、以下のようなデータを分析できます。
・送信したメールの宛先の総数
・メールを開封した人数
・メール内のリンクのクリック数
・購読解除をしたユーザーの数
・送信したメールが迷惑メールとして報告された数 など
結果の要因に関する仮説を立てる
KPIの測定を行なった結果、進捗状況が思わしくない場合、主に3つの原因が考えられます。
1つめは、従業員個人に問題がある場合です。この場合は個別にミーティングを行ない、必要であれば数値目標を調整します。
2つめは、設定したKPIそのものが目標からズレている場合です。KPIはあくまで、問題点を見つけるための指標でもあります。一向に進捗しないようなKPIを設定していることに気が付いた場合は、速やかに起動修正を行いましょう。
3つめは、顧客ニーズの変化、競合他社の動向、内部環境の変化などによって、設定したKPIに変更の必要性が生じる場合です。状況の変化に合わせて、KPIに変更を加える柔軟さも必要です。
仮説に基づいて設定を最適化する
効果が思わしくなかった場合は、仮説に基づいてワークフローごとにトリガーや条件を見直し、適切な修正を加えましょう。
【まとめ】Shopify Flowを使ったEC業務の自動化戦略
ここまで、Shopifyストア運用時に発生する業務や処理を自動化してくれるShopifyアプリ「Shopify Flow」について解説してきましたが、いかがでしたでしょうか?
「Shopify Flow」を導入すれば、これまで人力で作業する必要のあったあらゆるタスクを自動化することが可能になり、より多くの工数削減を期待することができます。また無料で利用できるため、コストを抑えてストア運用を効率化することが可能になります。
ただし、使えるトリガーやアクション、Shopifyのデータ構造など理解している必要があることから、慣れるまでに時間がかかるなど、Shopifyで利用できる機能の中でも導入ハードルは高いと言えます。
またワークフローを間違って設定することで、トラブルに繋がるリスクがあります。さらに、テンプレートがあることは非常に便利なのですが、テンプレートの説明は英語のみである点にも注意が必要です。
「Shopify Flow」の導入にもし不安があるようでしたら、パートナーや専門スキルを持ったエキスパートに作業を委託することもおすすめです。ルビー・グループは、「Shopify Flow」を活用した ECサイトの構築やフルカスタマイズ開発などのサービスを提供しています。
ラグジュアリーブランドの実績も豊富で、高いクオリティでのサービス提供が可能になりますので、ShopifyやShopify Flowに関するご相談がございましたら、お気軽にお問い合わせください。
この記事を書いた人
ルビー・グループ コーポレートサイトチーム
各分野の現場で活躍しているプロが集まって結成されたチームです。
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