SaaS型ECプラットフォームの今後の展望と業界動向

2024.10.29

2024.10.29

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ECサイトを開設またはリプレースする際に、SaaSプラットフォームのサービスを利用すべきか、あるいはパッケージやフルスクラッチなど自社内で構築・運用したほうがいいのか、お悩みでしょうか。

本記事では、SaaS型ECプラットフォームに関する基本的な知識や、SaaS型ECプラットフォーム主要3社の動向、AI・自動化技術の進化とSaaS型ECの新しい可能性に関する解説、SaaS型ECプラットフォーム業界の今後の課題と展望などを掲載しています。

「SaaS型ECプラットフォームとは?」という方はもちろん、SaaS型ECプラットフォームの今後の展望などについても知りたい方は、ぜひご一読ください。

SaaS型ECプラットフォームとは?

SaaS型ECプラットフォームとは?のイメージ画像
「SaaS(Software as a Service)」とは、サービスを提供しているベンダーがサーバー上で運営・管理しているソフトウェアを、EC事業者などがインターネットを通じて利用できる仕組みです。 SaaS型ECプラットフォームは、このようにクラウドベースのソフトウェアを活用しているため、EC事業者が自社でサーバーをもつ必要がなく、すでに用意された機能をアレンジするだけでECサイトを構築できるため、以下のようなメリットがあります。

初期費用を大幅に削減

従来のECシステムでは、ソフトウェア、ホスティング、ハードウェアなどに多額の初期投資を必要としましたが、「SaaS」を利用すればサーバーなどのハードウェアが必要ないため、初期費用を大幅に削減できます。

短期間でECサイトを立ち上げられる

「SaaS」の多くは、プログラミングなどの専門知識がなくても、直感的に商品登録やページ作成などが行えます。オンラインで必要な情報を入力して、「SaaS」のベンダーと契約を結ぶだけで利用できるので、短期間でEC事業をスタートさせることが可能です。

常に最新の機能を利用できる

「SaaS」の場合、ベンダー側の環境下にシステムが構築されており、ソフトウェアが定期的に更新されるため、常に最新の機能が自動的に適用されます。また、ベンダー側がセキュリティ対策も完備しているため、自前でECサイトを構築するのに比べ安全性が高い点も魅力です。

柔軟にWEBサイトを拡張できる

従来のECシステムでは、アクセス数が増えるたびに、サーバーやシステムを増強するなど、手動で対応する必要がありました。「SaaS」を利用すれば、自動的にサーバーの容量を調整してくれるので、柔軟にWEBサイトを拡張することができます。訪問者が急増してもECサイトが適切に運営できるのは、「SaaS」ならではのメリットです。

いつでもどこでもアクセスできる

「SaaS」を利用すれば、異なるデバイスでもソフトウェアにアクセスできるため、オフィスはもちろん、自宅や外出先など、どこからでもECサイトにアクセスできます。 また、同時に複数人でファイルの編集が行えるので、チームメンバーがどこにいても、データの共有や編集が同時行えるのは、「SaaS」の大きな強みです。

「オープンソース」との違い

「SaaS」とよく比較されるのは、ソフトウェアのソースコードが一般公開されている「オープンソース」サービスですが、「SaaS」との違いは以下の通りになります。

コスト

「SaaS」は、月額料金などの固定金額制(サブスクリプション形式)が採用されているケースがほとんどです。一方の「オープンソース」サービスの多くは、無料で導入できるものの、ホスティング費用やセキュリティ対策、プラグインやカスタマイズの費用など、運用コストに幅があります。

カスタマイズ性

「オープンソース」は、高度な専門的な技術と知識が求められますが、ソースコードを編集すれば自由にカスタマイズできます。一方の「SaaS」は、開発の経験がないユーザーでも簡単にECサイトに必要な機能を導入することができますが、利用できる機能が制限されています。

セキュリティ対策

「オープンソース」を利用する場合は、自社でセキュリティ対策を講じ、必要に応じてアップデートを行わなければなりません。「SaaS」の場合は、サービスベンダーがサイトのセキュリティを24時間365日監視しているため、自社でセキュリティ対策を講じる必要がありません。

急成長するSaaS型EC市場の分析

それではここで、SaaS型ECプラットフォーム主要3社の動向について見ていきましょう。

Shopify

Shopify(ショッピファイ)のイメージ画像
世界175ヶ国以上で利用され、世界でのショップ開設店舗数は2024年4月5日時点で230万を突破するなど、SaaS型ECプラットフォームとしては世界トップシェアを誇っている「Shopify」。

基本機能はとてもシンプルですが、2,000種類以上ある拡張機能アプリを使うことで、マーケティングにおける分析やSNSとの連携、配送の手配など、様々な機能を追加できます。ECサイト運営をしていく途中で、欲しい機能を素早く実装できるのは「Shopify」の大きな魅力です。

また「Shopify」は海外に向けたECサイト構築ができるようになっており、多言語や多通貨への対応も容易に実現可能です。FedEx、UPS、DHLといった配送会社と提携しているため、海外発送の手配なども簡単に行うことができるため、「Shopify」でECサイトを開設した事業者は、国内での販売だけでなく、グローバルへの進出も簡単に果たすことができます。

さらにShopifyはTikTokやYouTube、InstagramなどのSNSと簡単に連携可能で、EC事業者は商品を簡単に大規模なSNSで宣伝・販売することができます。なかでも2023年9月に開設したTikTok Shopでは、顧客に対してTikTok上で直接商品を販売できるようにするなど、SNSとの連携によって販売機会の創出に力を入れています。
Shopify(ショッピファイ)のメインビジュアル

Shopify(ショッピファイ)の詳細についてはこちらから

BigCommerce

BigCommerceのイメージ画像

「BigCommerce」は大手SaaS型ECプラットフォームの一つで、世界150ヵ国で55,000のEC店舗に利用されています。

Amazon、eBay、Google Shopping、Facebookなど、複数の販売チャネルとシームレスに統合できるため、広範な顧客層にリーチが可能。 シンプル簡単で誰でもすぐにECサイト構築ができる「Shopify」に対し、「Big Commerce」は少し上級者向けといったポジションで、そのぶん「Shopify」以上にいろいろなカスタマイズが可能です。

また、SEO対策、マーケティングツール、支払いゲートウェイ、税計算、在庫管理など、オンラインストア運営に必要な機能が標準で搭載されているため、追加のプラグインに頼ることなく多機能なストアが構築できます。とくに成長過程の企業にとって、売上拡大に応じた機能追加が容易に行える点が最大の魅力と言えるでしょう。

Wix

Wixのイメージ画像
「Wix」は、2024年8月時点で全世界で2.5億人以上の登録ユーザーがいます。2010年に日本語版がリリースされ、現在は日本語対応でのサポートも提供されています。

ダッシュボード(管理画面)とエディタ画面(編集画面)に分れており、直感的にHPを作成、さらにドラッグ&ドロップにて変更、クリックで幅広いアニメーションの設定が簡単にできるため、幅広いユーザーから支持を受けています。

しかしページやコンテンツ数が多いホームページ作成や、多機能なネットショップのような複雑さを感じるホームページの作成は不得意です。

また、有料プランであっても、他サービスへの移行サービスはありません。他サービスにサイトを移行する場合、コピー&ペーストの手作業で移行させる必要があるので要注意です。

いずれ他サービスに移行する可能性がある場合は、最初にWixを利用すべきかを慎重に検討することをおすすめします。

SaaS型EC拡大の背景に、増え続けるサイバー犯罪 世界的に利用が拡大しているSaaS型ECプラットフォームですが、その背景となっているのが、近年、さまざまな業種で増えている個人情報の漏洩やサイバー攻撃の問題です。

IPA(独立行政法人 情報処理推進機構)の調査によると、サイバー被害を受けたECサイト事業者の97%が自社構築サイトであり、また、75%はECサイトパッケージやCMSの脆弱性を悪用されたための被害だったという結果もあります。

とくに中小企業の自社構築サイトにおいては、セキュリティ対策の必要性が十分に理解されていないため、適切なセキュリティ対策が行われず被害を招いている状況です。

前述のとおり、「SaaS」ではサービスベンダーがクラウド上に構築したシステムを利用します。また、サービスベンダーがサイトのセキュリティを24時間365日監視しているため、自社でセキュリティ対策を講じる必要がありません。そのため、EC事業者が自前の対策を施さなくても、十分なセキュリティのもとにサービスを利用可能な点が、SaaS型EC拡大の背景になっています。

AI・自動化技術の進化とSaaS型ECの新しい可能性

近年、進化が著しいAIは、ECサイトの運営やマーケティングの効率化に大きな影響を与え、SaaS型ECの可能性の牽引役となっていると言えます。

なかでもSaaS型ECプラットフォーム事業者のトップランナーである「Shopify」は、「Shopify Magic」というAIを活用したツールを展開。商品のPR文章から紹介文、ブログ記事、メール文面など、文章を自動で生成できるようにしています。

ポイントは独自のAIである、という点。ECに特化した学習AIによる文章が生成できるため、他のAIよりもお客さまの購入行動につながる文章に仕上がるという特徴があります。

さらに「Shopify」のアプリストアでも、AIを活用した多くのアプリやツールを提供。なかでも「AIチャットボット」は、商品に関する質問や注文の追跡、問題解決など、ユーザーサポートが24時間365日対応が可能になります。

チャットボットは、ユーザーの好みや行動に基づいた商品の推薦や、特定のキャンペーンの提案を行うことも可能で、こうしたパーソナライズされた顧客体験の提供をすることで、顧客との関係を深め、リピート購入を促進することも可能になります。

AIの活用によりさらに今後期待されるのが、オムニチャネルの強化です。オムニチャネルとは、これまでのマルチチャネルやO2O(Online to Offline)と違い、あらゆるメディアで顧客との接点を作り、購入の経路を意識させない販売戦略のことです。

たとえば、顧客がオンラインストアで商品を検索した後、実店舗に足を運んだ際には、AIがその履歴を元に個別の提案を提供することができます。さらに、店舗内での行動データを収集し、そのデータをオンラインストアに反映させることで、よりパーソナライズされたオンライン体験が提供されます。

また、店舗内のデジタルサイネージが、顧客の来店目的や過去の購入履歴に基づいてカスタマイズされたコンテンツを表示することで、購買意欲を刺激することも可能に。顧客は自分にとって価値のある情報をリアルタイムで受け取り、よりスムーズな購買体験を得ることができます。

このようにAIの活用によるパーソナライズされた顧客体験の提供や、オムニチャネル対応により、顧客体験はこれまでにないレベルへと進化。企業は顧客との新たな接点を確保することが可能になります。

SaaS型ECプラットフォーム業界の今後の課題と展望

注意が必要なデータセキュリティとプライバシー保護

クレジットカード情報を保持しないSaaS型ECサイトでも、カスタマイズしたページから侵入され、決済画面の改ざんなどが行われてしまえば、カード情報の漏洩が発生する可能性があります。

SaaS型ECプラットフォームが安全性が高いことは先述の通りですが、サイトのカスタマイズを行う段階で脆弱性が生まれてしまう危険があることは、十分に認識する必要があります。SaaSを検討する際の調査項目として、以前の情報漏えいの有無や、情報漏えいがあった場合の対策や対応などについてもベンダーに確認するようにしましょう。

越境ECの拡大を促進するローカライズ対応

越境ECとは、インターネットを活用しながら国や地域をまたいで行う、国際的なEC(電子商取引)を指します。日本国内では少子高齢化・人口減少により、生産年齢人口が減少し続けていることは周知の事実ですが、海外では日本国内よりもEC利用率が高い傾向にあるため、今後も越境ECの市場規模が拡大し続けることが期待されています。

日本国内のEC事業者にとっても、越境ECは魅力的な選択肢です。新たな市場を開拓し、売上の拡大につなげられるため、多くの企業が国境を越えたビジネス展開に乗り出しつつあります。

越境ECがさらに拡大するために必要となるのが、言語・法律・商習慣・物流・決済・為替など、展開する国や地域の事情に合わせたECサイトの展開が容易にできること。そのためにも、SaaS型ECベンダーのローカライズ対応が鍵になります。

【まとめ】SaaS型ECプラットフォームの今後の展望と業界動向

本記事では、SaaS型ECプラットフォームの今後の展望と業界動向について解説をしてきました。
SaaS型ECサイトは、一般的なECサイトと比較して、初期費用や運用コストを削減でき、サーバーやソフトウェアの保守もベンダーが行ってくれるため、手間がかかりません。

また、専門知識がなくても簡単な操作ですぐにECサイトを開設でき、常に最新の機能やセキュリティ対策が自動的に適用される点も大きなメリットです。さらに、AIによるパーソナライズされた顧客体験の提供や、マーケティング自動化とオムニチャネル対応の強化などにより、「Shopify」に代表されるSaaS型ECプラットフォームを利用するEC事業者が世界的に急増しています。

日本国内においても、越境ECに乗り出し、販路の拡大による売上増加を狙うEC事業者が、次々とSaaS型ECプラットフォームを利用。通常であれば、国内市場とは異なる規制や言語に加え、決済システム、消費傾向などの違いを現地のニーズに合わせてECサイトを作り込んでいく必要がありますが、「多言語」「外貨決済」「豊富な決済手段」などローカライズ対応をしているシステムを選べば、手間をかけることなく越境ECに乗り出すことができるでしょう。

このようにメリットの多いSaaS型ECですが、ECサイトのプラットフォームとして選定する際には、注意も必要です。サイトのカスタマイズを行う段階で脆弱性が生まれてしまう可能性があるので、ベンダーに対し、過去の情報漏えいの有無や、情報漏えいがあった場合の対策や対応などについて必ず確認するようにしましょう。

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この記事を書いた人

ルビー・グループ コーポレートサイトチーム

各分野の現場で活躍しているプロが集まって結成されたチームです。
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