セールスフォース・ドットコムが提供するSalesforce Commerce Cloudは、クラウドベースのeコマースプラットフォームとして、グローバル展開を行っている大企業を中心に世界中のECサイトに導入されています。
ここでは、Salesforce Commerce Cloudに関する特徴のほか、導入事例についても詳しく解説しています。
「オンラインストアのパフォーマンスを最適化し、収益を最大化したい」「マルチチャネルの販売を展開し、各チャネルの注文や在庫を統合管理したい」「カスタマーエクスペリエンスを向上させ、顧客のロイヤルティを高めたい」「他のSalesforce製品と統合したい」などとお考えの事業者の皆さんは、ぜひご一読ください。
salesforce commerce cloudとは?
Salesforce Commerce Cloud(セールスフォースコマースクラウド:SFCC)は、顧客管理(CRM)ツールとして世界中で利用されているSalesforce製品の一つで、マルチテナント型クラウドベースのEコマースプラットフォームになります。
Salesforceには、営業支援(SFA)や顧客管理(CRM)などの製品がありまずが、Salesforce Commerce Cloudは、これらの各種製品と連携することで、効率的かつ効果的なECサイトの構築・運営が可能になり、売上や利益の拡大が見込めます。
また、Salesforce Commerce Cloudは、WEB、ソーシャル、モバイル、店舗などのあらゆるコマースの全取引を統合。顧客対応を一つのシステムで管理して、WEBサイト、スマートフォン、SNSなどを通じて顧客一人ひとりに最適なカスタマーエクスペリエンスを提供することが可能です。
Salesforce Commerce Cloudは、ECサイト開発における統合パッケージ型の製品なので、提供される機能も豊富です。製品管理から在庫管理、CRM、マーケティングツール、AIを駆使したパーソナライズ機能など、ECサイトを構築・運営する事業者にとって、必要な機能がほぼすべて整っているコマースプラットフォームと言えるでしょう。
中〜大規模のあらゆる業種・業態に対応しており、ブランドごとに複数のECサイトを立ち上げた場合でも管理しやすいことから、伊勢丹三越やPUMA、ミズノ、ワコールなどの大企業を中心に数多く導入されています(導入事例は別項で解説)。
Salesforce Commerce Cloudで利用できる機能の一部は以下の通りになります。
・製品、価格、カタログ管理
・顧客セグメント化
・サイト検索とガイド付きナビゲーション
・AIを利用したパーソナライズ
・ソーシャルの統合
・レスポンシブデザイン
・ワンタッチ支払いオプション
・リファレンスアプリケーション
・マルチサイト管理とローカリゼーション
・検索エンジンの最適化
・店舗向けの拡張機能 など
なお、Salesforce Commerce Cloudでは、「B2C Commerce」「B2B Commerce」「Salesforce Order Management」の3つの製品が提供されています。詳細については、別項にてご紹介します。
salesforce commerce cloudの特徴
ここではSalesforce Commerce Cloudの特徴について、解説していきます。
効率的で効果的なECサイト運用が可能に
Salesforce Commerce Cloudで構築したECサイトは、ECサイトを訪問したユーザー情報とCRMを紐づけることで、属性・行動履歴に合わせた適切なアプローチが可能です。
たとえば、何度もECサイトを訪問しているユーザーに対して、サイト離脱後にメールマガジンでキャンペーン情報を配信するといった、きめ細やかなマーケティング施策も実施可能です。
購入客の傾向、チャネルや販売地域についての情報をもとに、プロモーションやA/BテストをEC担当者自身で作成して実施し、よりタイムリーな施策実施と効果実証をすることで、EC事業の売上拡大につなげることができます。
ECサイトのレイアウト変更・修正が容易
Salesforce Commerce Cloudは、ヘッドレスコマース(ECサイトのフロントエンドとバックエンドを切り分けることで、フロントエンド開発の柔軟化・効率化を実現できる仕組み)を採用しています。
そのため、管理部分のバックエンドへの影響を気にすることなく、フロントのUI(文字・画像・ボタンなどのレイアウト)を、容易に変更・修正することができます。
システムを切り分けることで開発時間を削減できるだけでなく、ユーザーのニーズにいち早く対応して顧客のロイヤリティ化を促進することが可能です。
国境を超え複数の地域でサイトの管理が可能
ECサイトのカスタマイズ範囲は、国内に留まりません。慣習・文化・通貨・言語を考慮したサイト作りもできるため、国境を超え複数の地域でサイトの管理が可能です。
地域ごとにターゲットを絞り込んで、表示するコンテンツや商品を調整することもできます。
AIによるCVR向上が期待できる
Salesforce Commerce Cloudには、SalesforceのAIである「Einstein」が組み込まれています。
人力でユーザーの行動や売上データを詳細に分析する必要はありませんし、社内に専任のデータサイエンティストがいなくても、高度にパーソナライズされた商品レコメンデーションを自動化できます。
あらゆるページでおすすめ商品をパーソナライズ表示したり、検索キーワードの類似商品をリアルタイムにリコメンドするなど、すべてのチャネルでそれぞれのユーザーに合ったショッピング体験を提供することで、コンバージョン率(CVR)の向上が可能になります。
またAIにより生成された商品説明は、SEOに最適化されているため、検索結果の上位表示も期待できます。
商取引に応じた製品が提供されている
Salesforce Commerce Cloudでは、「B2C Commerce」「B2B Commerce」「Salesforce Order Management」の3つの製品が提供されています。
「B2C Commerce」は一般消費者向けになり、レスポンシブデザインや、ワンタッチでの支払いなどに対応でき、簡単にモバイルコマースを実現できます。
「B2C Commerce」は、法人顧客との取引をサポート。スムーズな再注文や関連取引先、契約価格の決定、カスタムカタログなど、BtoBに特化した機能を提供します。
また、セルフサービス形式をとることで手軽に商品が購入でき、CRMと連携すれば顧客データを使ってユーザーに合った購入提案も可能になります。
「Salesforce Order Management」は注文管理システムで、受注・履行・納入・支払処理など、注文にまつわる一連の流れをすべて処理できます。
ECサイト、CRMを連携・統合させ、すべてのチャネルの顧客情報を一元管理することで、ユーザー一人ひとりの行動・問い合わせ履歴・マーケティングなどを把握し、より効果的に販売できるようになります。
salesforce commerce cloudの導入事例まとめ
2年でレコメンデーションの売上3.2倍を達成|株式会社三越伊勢丹
伸長著しい「ソーシャルギフト」の顧客を開拓するために、ギフト特化型ECサイトの新設に乗り出すことにした株式会社三越伊勢丹。
短期間での開発と運用の内製化という課題をクリアするために、Salesforce Commerce Cloudnなどの導入を決め、1年で新サイト「MOO:D MARK」のローンチにこぎつけることに成功しました。
「MOO:D MARK」の最大の特徴は、優れたレコメンデーション機能を備えていること。
AIのEinsteinが、導線・閲覧・購買などのお客様の行動をリアルタイムに分析し、商品一覧や検索結果を一人ひとりに最適化した並び順で表示しています。
その結果、「MOO:D MARK」のサイトの売上全体に占めるEinsteinのレコメンデーション経由の売上は、平均で40%、最高で48%を記録。また、サイトオープン翌年の2020年とそれから2年後の2022年を比較すると、レコメンデーションによる売上は実に3.2倍に伸びています。
こうしてSalesforce Commerce Cloudを導入したギフト特化型ECサイト「MOO:D MARK」は、現在ではグループ内で成長事業として期待されています。
参照:Salesforce お客様事例 株式会社三越伊勢丹
店舗とデジタルの融合で、買い物をエモーショナルに|株式会社カインズ
日本全国に225店舗のホームセンターを展開するカインズは、創業から40年のタイミングを「第3の創業期」と位置づけ、2019年に発表した中期経営計画「PROJECT KINDNESS」のもと、持続的な成長を目指した改革を続けています。
その改革の柱のひとつが「デジタル戦略」であり、ECサイトの開設や、スマホ向けアプリの開発、オウンドメディアやSNSなどの展開にとどまらず、デジタル技術でリアル店舗とオンラインをシームレスに融合させた「IT小売企業」へと進化していくことを目標に掲げています。
同社のデジタル戦略が目指す先は、オンラインだけで完結している世界ではなく、いかにリアルな世界でお客様のストレスを無くし、買い物体験を楽しくして、よりお客様とつながることができるか。
店舗とデジタルを融合することによって、店舗だけでは分断されがちなコミュニケーションを、デジタルを通すことで永続性を持たせようと取り組んでいます。 その具体的な施策例が「カインズアプリ」。
「店が広くてどこにものがあるか分からない」、「せっかく来たのに在庫がない」といった問題を解決するためのコンシェルジュ的なアプリで、どこからでも店舗の在庫情報を見られるだけでなく、ほしい商品が並べられている棚の位置まで店内マップで表示。
このようにお客様のストレスを少しでも解消し、買い物自体をエモーショナルにすることを目指しています。
参照:Salesforce お客様事例 株式会社カインズ
CVRが27.5%増加、EC売上は145.8%増を記録|テーラーメイド ゴルフ株式会社
米国に本社を置くゴルフ専業メーカー、テーラーメイド ゴルフ株式会社(以下、TMG)は、以前からECに注力していました。
2005年にオープンソースのシステムを使いECサイトを立ち上げ、十数年運用を続けた後に、Salesforce Commerce Cloudへと移行しています。
そして2021年夏、まだコロナが収まらず、EC売上が急進する中で、Salesforce Commerce Cloudのバージョンアップを実施。
その際に新たにサイト内検索の改善に取り組むことを決断しました。サイト内検索のチューニングや、商品の並び替えルールも見直し、さらにA/Bテストを繰り返し実施することで、最適な動的ルールに基づいたパーソナライズを可能にしています。
その結果、検索経由の売上は76.5%増加し、カート投入率は56.3%改善。CVRは27.5%向上し、ECによる売上全体で145.8%増を記録しました。
同社では将来的に、ECサイトで店舗在庫を見られるようにし、店舗からの直接出荷実現を目指しています。
アウトレット商品にも需要は高く、欲しい商品が近くにないお客様も多いため、そうしたお客様と店舗をマッチングすることにより、さらにお客様の満足度を高められるはずと考えています。
参照:Salesforce お客様事例 テーラーメイド ゴルフ株式会社
全世界でモバイルサイトをリニューアル。CVRが1.5%に向上|PUMA
スポーツ用品の製造販売を行うPUMAは、全世界の24の市場でモバイルサイトのリニューアルを行いました。
モバイル経由が全体の70%近くを占める地域もある一方で、コンバージョン率が1%未満だったからです。
そこでPUMAは、買い物客が簡単にアカウントを作成してカートに商品を保存しておき、後からタブレットやデスクトップマシンでチェックアウトできるよう、モバイルサイトをリニューアルする決断を下しました。
リニューアルにあたって活用したのが、2,000以上のサイトでデバイスごとのアクセスパターンや購買行動についてデータ・ドリブンのデザイン分析を行った結果生まれた、Salesforce Commerce CloudのStorefront Reference Architectureです。
200種類以上のワイヤーフレーム(レイアウト)を作成して、より最適なサイトへと作り変えることに成功。また、画面上部のナビゲーションと内部検索機能を改良したことで、商品の入れ替えや価格変更なしでもコンバージョンを改善しています。
さらに、レンダリングが35%、ロードが69%スピードアップした結果、製品詳細ページの画像ロード時間は2秒未満に短縮し、こうした施策の結果、1%未満だったコンバージョン率が1.5%近くにまで改善されています。
参照:Salesforce お客様事例 PUMA
顧客タッチポイントを充実し、データドリブンなカスタマージャーニーの実現を|ミズノ株式会社
総合スポーツメーカーとして、1906年に創業したミズノ株式会社。
現在、多種多様な競技や種目のスポーツ用品や運動プログラムを提供していますが、スマートフォンやSNSの普及によって急激に増えた顧客とのタッチポイントでも、ミズノらしいきめ細やかな対応を実現したいと考え取り組んだのが、グローバルで一貫したブランディングとeコマースサイトの拡充、強化でした。
もともと同社では、日本をはじめいくつかの国々ですでにECサイトを展開していましたが、各国独自で運用されていたため、グローバル共通で一貫したブランディングと、EC領域の取り組みを推進しにくい状況になっていました。
そこで、一貫したブランディングへ取り組み、単一の標準化されたeコマースプラットフォームへと一新するために、Salesforce Commerce Cloudの導入を決断。これまでECサイトを構築していなかった東南アジア諸国からスタートし、順次各国へ展開しています。
あわせて同社では、多品目に及ぶ商品ラインアップを効果的にクロスセルやアップセルの強化を行うべく、以前から導入していたMarketing CloudやService Cloudとの連携による、マーケティング領域の強化を展開しています。
ECサイト上でパーソナライズされた各種サービスの提供に加え、メールやSNS、メッセージングアプリなど多様な顧客タッチポイントを充実させることで、顧客一人ひとりのライフスタイルやライフステージに合わせた、データドリブンなカスタマージャーニーの実現を目指しています。
参照:Salesforce お客様事例 ミズノ株式会社
CRMとの連携により約4,000点もの商品の中から最適な商品をリコメンド|株式会社ワコール
女性用インナーウェアを中心に、スポーツウェアなどの繊維製品の製造販売を行う株式会社ワコール。
2000年に開設したワコールウェブストアでは、メール会員(会員数約65万人)へのキャンペーン情報送付、記事コンテンツの掲載、SEO・SEMなどの実施など、サイトへの集客、売上増加を目指してさまざまな施策を行ってきました。
その結果、2桁以上の成長を続け、2017年度以降はカタログ通販よりもインターネット通販の販売実績が上回ることに。
しかしその一方で、顕在化した「サイトの表示速度問題」「アクセス増と集中対策」といった課題を解決し、今後も2桁以上の成長を続けていくために、ECプラットフォームの見直しを行い、Salesforce Commerce Cloudを導入しました。
常に最新のプラットフォームを維持できるため、表示速度やサーバーの問題が改善。またCRMとの連携により、約4,000点もの商品の中から、ユーザーごとにパーソナライズして最適なおすすめ商品を表示することを可能にしています。
参照:Salesforce お客様事例 ワコール株式会社
【最後に】salesforce commerce cloudの導入事例まとめ
Salesforce Commerce Cloudは、導入済みのSalesforce製品とのシナジー効果を発揮できることから、数多くの企業に選ばれています。
さらに、グローバル基準で高機能のサービスを提供しているため、外資系企業は本国との連携がスムーズに進められるというメリットもあります。
ただし、開発には十分な知識やコストが必要である点にご注意ください。Salesforce認定のB2C Commerceのデベロッパー資格保持者数は、2024年7月4日現在で国内で500名程度。
誰でも手軽に構築できるというわけではないので、外部のECサイト構築会社に相談されることをおすすめします。
ルビー・グループには、社内にB2C Commerceのデベロッパー資格保持者がおりますし、Salesforce Commerce Cloudの導入実績も豊富ですので、ぜひご相談いただけますと幸いです。
この記事を書いた人
ルビー・グループ コーポレートサイトチーム
各分野の現場で活躍しているプロが集まって結成されたチームです。
開発、マーケティング、ささげ、物流など、ECサイトに関するお役立ち情報を随時更新していきます!