2006年に最初のバージョンがリリースされて以来、多くのECサイトに導入されているソフトウェア「EC-CUBE(イーシーキューブ)」。
しかしその一方で、旧いバージョンのまま利用し続けると、サイトが不正アクセスを受けたり、重要なデータが漏洩したり、ECサイトの動作が不安定になったり、さらに新機能が利用できず顧客満足度が低下する可能性があるなど、多くのリスクに晒されます。ECサイトの安全性と利便性、セキュリティを確保するために、EC-CUBEの最新バージョンへのアップデートは非常に重要です。
ここでは「EC-CUBEをバージョンアップする手順」や、それぞれの特徴にバージョンアップするメリット、EC-CUBEバージョンアップにかかる費用の目安などについて詳しく解説しています。
「EC-CUBEのバージョンアップを検討している」という事業者の方はもちろん、プラットフォーム移管の検討や、サイトの仕様に課題をかかえているという方も、是非ご一読ください。
EC-CUBEバージョンアップとは
EC-CUBEは2006年に最初のバージョンがリリースされて以来、自動アップデート機能やプラグイン機能の追加など、ユーザーにとって安心で使いやすいバージョンアップを繰り返してきました。
さらに最新バージョンのEC-CUBE4系では、ベースとなるフレームワークがSilexからSymfonyへと変更し、CMS機能やパフォーマンスも大幅に改善、旧バージョンの問題の多くが解消され、よりカスタマイズが容易になっています。こうした使い勝手の面からも、バージョンアップはとても重要です。
もちろん旧バージョンのまま利用を続けることは可能ですが、その場合は以下のようなリスクがあることをお忘れなく。
EC-CUBE2.12系以前は公式サポート終了
EC-CUBE2.12系より前のバージョンは、公式サポートがすでに終了しています。今後新たな脆弱性が発見された場合もセキュリティパッチが公開されることがないため、そのまま利用を続けることは大変危険です。
プラグインやモジュールのサポートが対象外
EC-CUBE公式サポートが終了すると、プラグインやモジュールにおけるサポートも終了するため、問題が放置される可能性も考えられます。特にEC-CUBE2系の「EC-CUBE2.11〜2.13」では、クレジットカード番号などの流出といった被害も報告されているので、バージョンアップが喫緊の課題となっています。
EC-CUBE「2系」「3系」「4系」の特徴
EC-CUBEのバージョンには、それぞれどんな特徴があるのか、まずはそこから解説いたします。
「EC-CUBE 2系」の特徴 EC-CUBEは2006年に最初のバージョンがリリースされて以来、その後も進化を続け、ECサイトの構築が容易な上、簡単にカスタマイズでき、無料で利用できることから急速に人気を博しました。
特色としてはガラケー(フューチャーフォン)にも対応している事です。また、Ver. 2.13からはプラグイン機能が追加され、カスタマイズなしでも様々な機能を追加できる様になりました。そのため外観や機能を自由にカスタマイズできるようになり、ユーザーが独自のECサイトを構築することが可能になっています。
しかしその一方で、独自にカスタマイズされたEC-CUBE2系のサイトには、公式のセキュリティパッチが適用されないことがあるため、脆弱性のリスクが高まっているのも事実です。
「EC-CUBE 3系」の特徴 2015年にリリースされたEC-CUBE 3系は、2系までのPEARベースの独自フレームワークから、PHPフレームワークであるSilex + Symfonyへと変更され、ソースも全面的に書き換えられたことで、よりモジュール化されたアーキテクチャになりました。
また3系からは、EC-CUBEに詳しくなくてもカスタマイズしやすくするために世界標準のフレームワークが採用され、テストコードを充実、Gitを採用するなど、開発体制から一新されたバージョンとなっています。またコアの機能は最低限に抑えられ、プラグインで自由に機能を組み合わせて利用することを前提とした作りになっているのも、3系の特徴と言えるでしょう。
「EC-CUBE 4系」の特徴 最新バージョンであるEC-CUBE 4系は、フレームワークがSilexからSymfony+EC-CUBE独自の拡張機構へと変更され、より簡単で自由にカスタマイズを行うことが可能になっています。なかでもデザインのカスタマイズについては、既存のデザインテンプレートのHTMLが全面的に整備され、よりカスタマイズしやすいソースコードにアップデートされています。
管理画面に関するアップデートも、EC-CUBE4の特徴のひとつです。運用や管理を行うショップオーナーが使いやすいように、ユーザーインターフェースをゼロから設計するなど、管理画面の全面的なリニューアルが行われています。
とくにECサイト運営において重要な受注管理画面の機能を強化し、情報確認や入力作業などを一画面で行えるように刷新されています。モバイル端末対応に関する特徴にも注目です。 EC-CUBE4では、モバイル専用のレイアウトを設定できる機能などが実装され、モバイルユーザーの体験向上につながるアップデートが行われています。
さらに、デバイスをまたいだ利用に対応可能なカート永続化機能の実装や、モバイルでのサイト表示速度の大幅な改善などにより、コンバージョン率アップや離脱率の減少につながる 強化も施されています。クラウド版EC-CUBE4(https://www.ec-cube.net/product/co/)なども提供され、今後の拡張性が十分に考慮されている点も、これまでにない大きな特徴と言えるでしょう。
EC-CUBEをバージョンアップする手順
それでは、EC-CUBEのバージョンアップとカスタマイズに関する一般的な手順を見てみましょう。
①バージョンアップの事前準備
・EC-CUBEのデータベースとファイルをバックアップ
・新旧バージョン間のソースコードの差分を確認
・カスタムテーマやプラグインを使用している場合、新しいバージョンとの互換性を確認
・独自にカスタマイズしたコードの有無を確認
・サーバーの要件やPHPのバージョンなどの確認、必要なアップデートの実施
※事前準備が適切に行われれば、バージョンアップ作業自体は比較的スムーズに進められます。
十分に時間をとり、慎重に作業を進めましょう。
②EC-CUBEのバージョンアップ手順
・EC-CUBEの公式サイトやドキュメントを参照し、バージョンアップ手順を確認
・バージョンアップ用のファイルやパッチをダウンロード、適切なディレクトリに配置
・バージョンアップのスクリプトを実行、データベースやファイルを更新
・バージョンアップ後、動作確認を行い、必要な修正や調整の実施
※バージョンアップ作業は、EC-CUBEの公式サイトに掲載されている手順に従って作業を行うことが重要です。これを怠るとサイトが正常に動作しなくなる可能性があります。手順に不明な点がある場合は、公式のサポートフォーラムや開発者コミュニティで質問して、適切な方法を確認しましょう。
【バージョンアップの際の注意点】
バージョンアップの手順は上記の通りですが、データの損失やサイトの不具合が発生しないよう、以下の点に十分に注意を払い、適切なバージョンアップをしましょう。
①テスト環境での事前確認
本番サイトで直接バージョンアップを行うと、トラブルが発生しサイトがダウンするリスクがあります。テスト環境などで問題がないことを確認した後に、本番環境でアップグレードしましょう。
②必ずバックアップをとる
バージョンアップ前に、必ずEC-CUBEのデータベースとファイルのバックアップをとってください。万が一トラブルが発生した場合でも、データを復元することができます。また、データベース更新用のスクリプトが正常に実行されない可能性があります。データベース更新に失敗した場合、データベースが破損する可能性があるため、必ずバックアップからデータを復元してください。
③プラグインとモジュールの対応確認
インストールしているプラグインやモジュールが、EC-CUBEの新しいバージョンに対応しているかを事前に確認しましょう。 またEC-CUBEのコアファイルやプラグインなどにカスタマイズを加えている場合は、カスタマイズしたファイルをバックアップし、バージョンアップ後に再度適用します。
④動作確認の徹底
バージョンアップ作業後は、商品の追加や購入など、重要な機能のテストを必ず行いましょう。
EC-CUBEバージョンアップをするメリット
EC-CUBE4系では、新しい機能が追加され、使いやすさが格段に向上しています。バージョンアップをすることにより様々なリスクを避けられることはもちろん、今までにはなかった新しい機能も使えることになります。万全のセキュリティ対策 EC-CUBE2系のセキュリティリスクについては既述とおりで、最新バージョンにすることで公式サポートを受ける必要があります。
とくにEC-CUBE4系はセキュリティを強化したシステムであり、脆弱性が発見された場合は速やかにセキュリティパッチがリリースされます。さらにEC-CUBE4系へバージョンアップ後は、脆弱性診断サービスを定期的に受け、常にシステムを安全な状態に保つことが可能になります。
充実したプラグインが利用可能 EC-CUBE4系にバージョンアップすることで、便利なプラグインや新しい機能の追加を簡単に行えます。プラグインには有料と無料がありますが、無料のプラグインでも中小規模のECサイトなら構築可能ですし、有料のプラグインを利用すれば、高機能なECサイトの構築が十分に可能です。機能カスタマイズが容易に EC-CUBE4系はカスタマイズ性に優れ、高度なカスタマイズを容易に行うことができます。プラグインで実現できない機能は、カスタマイズ(システム改修)により実装可能です。
またAPIを利用すれば、外部のシステムやサービスとも容易に連携ができます。Googleに評価されやすいサイトにEC-CUBE4系なら、2系ではできなかったレスポンシブWEBブデザイン(RWD)が実現可能になります。一つのテンプレートで管理でき、PCでもスマホでも、タブレットでも見やすく使いやすいページをスピーディーに作成することができます。
Googleはモバイルフレンドリーなサイトを評価する傾向にあるため、スマホで見やすいページを作成できれば、検索結果の上位に表示される可能性が高くなります。購入フロー最適化によるCVRのアップ EC-CUBE2系では購入フローのページ数が多かったですが、EC-CUBE4系では購入完了までの手順が短くなっています。これにより、ユーザーの離脱率を下げ、コンバージョン率(CVR)をアップすることが期待できます。
EC-CUBEバージョンアップにかかる目安費用
では、現在のサイトをEC-CUBE最新バージョンへリプレイスする場合、どのくらいのコストがかかるのか費用感をご案内します。
EC-CUBE2系からアップデート
約30万円 サイトの再構築と、データ移行が主な作業になります。 デザインを大幅にカスタマイズしていない、プラグインもほぼ導入していないということであれば、30万程度が目安とお考えください。
EC-CUBE3系からアップデート
約25万円 サイトの再構築と、データ移行が主な作業になります。3系から4系へのバージョンアップでは、ある程度コードを変換できるため、サイトを0から作るのに比較して工数が少なく済みます。デザインを大幅にカスタマイズしていない、プラグインもほぼ導入していないということであれば、25万円程度が目安とお考えください。
EC-CUBE4.0および4.1からアップデート
約20万円 4.0および4.1からのアップデートであれば、サイト再構築の必要はなく修正適用での対応になります。 デザインを大幅にカスタマイズしていない、プラグインもほぼ導入していないということであれば、20万円程度が目安とお考えください。なお、「プラグインの導入状況」や「カスタマイズ状況」、「user_dataなど自社で追加しているページの有無」、「データの移行範囲」「サーバーの移転や構築の必要性」などにより、かかる費用が変動しますので、ご注意ください。
【まとめ】ec-cubeバージョンアップ手順と各バージョンの特徴
EC-CUBEはECサイト事業者にとって大変便利なソフトウェアですが、旧いバージョンのままだと、情報漏洩や、顧客満足度の低下を招く可能性があります。
そのため最新バージョンへの移行は必須で、とくにEC-CUBE4系には「万全のセキュリティ対策」「充実したプラグインが利用可能」「機能のカスタマイズが容易になる」といったメリットがあります。
しかしEC-CUBEの各バージョンには互換性がないため、移行の際は新規でサイトを構築することになり、非常に手間がかかります。また移行作業の際は、適切なバージョンアップをするノウハウが必要となります。
ルビー・グループでは、これまでEC-CUBEにて多くのオンラインストアを制作・運営しており、制作と運用実績に関しては豊富な情報量を持っております。 柔軟なカスタマイズ対応だけでなく、サイト開設後の運用やバージョンアップにおいても安定的にサポートをさせていただきます。
EC-CUBEに関するご質問などあれば、ぜひお問い合わせください。
この記事を書いた人
ルビー・グループ コーポレートサイトチーム
各分野の現場で活躍しているプロが集まって結成されたチームです。
開発、マーケティング、ささげ、物流など、ECサイトに関するお役立ち情報を随時更新していきます!