
一般的にはB2C(対消費者取引)企業向けが知られていますが、B2B(企業間取引)に特化したソリューションが「Salesforce B2B Commerce」になります。
本記事では、この「Salesforce B2B Commerce」が、B2Bビジネスのデジタルシフトにおいて、いかに強力なソリューションであるかを解説しています。
「Salesforce Commerce Cloudが提供するB2B向け機能を知りたい」「Salesforce B2B Commerceの導入事例や、同業他社がどのように活用しているかを知りたい」という事業者はもちろん、「デジタルシフトを進める中で、ECプラットフォームの導入を検討している」というB2B企業関係者の方も、ぜひご一読ください。
B2BにおけるECの最新トレンドと課題
本来、営業担当には新規開拓や既存取引の拡大に注力してほしいものの、現状は販促・受注業務や問合せ対応に追われてしまっている…。
このように、限られた営業リソースを有効に活用できないでいることに悩む事業者を中心に、代理店からの注文や企業間での受発注において急速にデジタルシフトが進んでいます。
こうしたことから、近年では独自にB2B ECサイトを構築・運用する動きが拡大。B2BのEC化率は、2021年の35.6%から、2022年には37.5%、2023年には40.0%と堅調に伸び続けています(※)。

※経済産業省「令和5年度 電子商取引に関する市場調査 報告書」(https://www.meti.go.jp/press/2024/09/20240925001/20240925001-1.pdf)より引用
ではB2B ECサイトを導入すればどのような効果が期待できるのか、具体的に見ていきましょう。
新規顧客へのアプローチ拡大
24時間365日、世界中のどこからでもアクセスできるB2B ECサイトを導入することで、これまでアプローチできなかった企業に対して手軽に情報を届けることができ、営業担当のスキルや稼働時間など属人的な条件の影響を受けることなく、新規顧客の獲得に繋げることが期待できます。
受注・売上の拡大
B2B ECサイトを導入すれば、顧客はいつでもどこでもサイト内に掲載されている様々な商品情報を得ることできるだけでなく、発注をすることも可能となります。こうしたことから受注機会が増え、売上向上も期待できます。
受注対応業務の効率化
B2B ECサイトを導入することによって、これまで発生していた情報入力や確認といった受注対応作業の自動化を実現。業務の効率化を図ることで、営業担当はリソースを注力すべき他の業務にシフトすることができます。
問い合わせ対応業務の削減
B2B ECサイト上に商品の在庫数や納期などの必要な受注情報を掲載し、さらに見積りを自動発行できる機能を導入したりすることで、これまで発生していた問い合わせ対応業務を減らすことが可能になります。
以上のように、B2B ECサイトを導入することで様々な効果を得ることができますが、一方で課題もあります。B2B ECサイト導入時には、以下のような点に注意しましょう。
業務フローの整理は必須
B2B ECサイトの導入によって、これまで電話やFAXで行っていた受注業務や、発注書作成、入力作業などの業務が大幅に削減されると同時に、従来のアナログな受注対応とは異なる新たな業務フローが発生します。B2B ECサイトの導入後、スムーズに運用を開始できるよう、既存の業務フロー見直しや新しい業務フローの整理をしっかり行いましょう。
外部ベンダーの力が必要に
B2B ECサイトの構築・運営には、ECサイトの構築経験や高度なエンジニア知識が必要となります。経験が豊富なシステムベンダーを選定し、「要件定義」をしっかり行う必要があるでしょう。
セキュリティ対策が重要
B2B ECサイトでは多数の顧客情報を取り扱うことになるため、情報漏洩を起こさないためのセキュリティ対策が必要になります。情報漏洩を起こしてしまうと、多額の損害賠償が発生するだけではなく、企業の信頼にも悪影響が出るので注意が必要です。セキュリティソフトの導入やSSL認証などによる暗号化などはもちろん、不正アクセス時の対策についても事前に講じておきましょう。
Salesforce Commerce CloudのB2B向け主要機能
「Salesforce B2B Commerce」は、企業間取引に特化したクラウドベースのECプラットフォームで、複雑な取引条件や大量注文に対応する機能を実装。従来から提供している消費者向けのEコマース購買体験を、ビジネス購入者向けにも実現することを支援するソリューションです。
「Salesforce B2B Commerce」の特徴は以下の通りになります。
B2Cサイトのように、利便性の高い購買体験を提供
仕様や図面などの詳細な製品情報に加え、返品、在庫の有無や予想配達日時等の情報も、B2C向けEコマースのようにWEB上で提供が可能になります。これにより、在庫状況、配達日時指定、注文後の進捗確認や返品依頼などの業務はセルフサービスに。また、パターン化した発注に関しては最短2クリックで再注文が可能と、ビジネス購買の簡易化を実現します。
製造業に求められる複雑な処理にも対応
製造業をはじめとするB2Bの発注/受注業務は、B2Cと比べて複雑なケースがあります。「B2B Commerce」では、アカウント階層、複雑な価格設定、カスタムカタログ、アカウント管理、柔軟性のある購買・出荷オプションといった高度なB2Bコマース機能を実装。
さらに、サブスクリプション、マルチストアフロント、マルチディストリビューター、マーケットプレイスといった複数のコマースモデルを管理します。
これらにより顧客に合わせた価格設定や複数の支払い方法、多くの配送先があるオーダーにも対応可能に。検索機能も充実しており、多くのパラメーターから絞り込みが可能です。
CRMとの融合が可能
Eコマースでの閲覧履歴や購買情報はすべてSalesforceで一元管理され、全社で共有できます。蓄積されたデータに基づいて、AIが顧客には最適なリコメンドを、営業担当やカスタマーサポートには適切なアドバイスの提供が実現します。
また、顧客がEコマースを活用して注文した商品やカートに追加したアイテムは、Salesforce上で一元管理されます。顧客がいま必要としているアイテムを把握することで、効果的な営業アプローチをすることが可能に。顧客の行動/購入履歴に基づいた適切な新規提案は、売上の増加につながることが期待できます。
「Salesforce B2B Commerce」を活用すれば、B2B向けのECサイトを短期間で立ち上げ可能なだけでなく、業界のニーズに合わせたカスタマイズにより、最適なECサイトを実現できます。
B2Bビジネスでの活用事例
では「Salesforce B2B Commerce」の導入により、どのようにビジネス課題を解決しているのかを、実際の企業の事例をもとに解説していきましょう。
B2B Commerceで部品販売サイトを構築、部品受注の作業時間が半減|株式会社島精機製作所
株式会社島精機製作所は、ニット編機のリーディングカンパニーとして60年余り輝かしい歴史を刻んできた一方で、部品販売・修理などのアフターセールスに関しては、電話やメール、FAXなどによる注文を担当者が手動で対応し、属人的で非効率的な状況が長く続いていました。
そうした状況から脱却すべく、アフターセールス強化を目的に「Salesforce B2B Commerce」を採用しECサイト「Shima Parts Site」を2020年7月にオープン。部品のオンライン販売を開始しました。
同サイトでは、画面上で機械の機種および号機情報を選択するだけで、関連する部品の一覧を表示。各部品の関連情報については、基幹システムに蓄積された部品のサイズ・重量・画像などのデータを連携させているため、ユーザーは部品の詳細を確認しながら迷うことなく必要なものを選べる仕組みになっています。
また、注文確定後に担当者に注文情報のアナウンスが届き、各部品の在庫、納期などを確認し、出荷日と荷物の追跡番号などをユーザーに通知するだけで、受注の作業が完了。さらに、部品の販売履歴については、“どの顧客が、どの部品をいつ、何個購入したか”をひと目で確認できます。
さらに、販売データおよび部品関連情報をSales Cloud/Service CloudのDXを通じて、営業/技術部門にも情報を共有化。こうしてユーザーの状況を社内の部門を超えて「見える化」を実現するなどして、受注作業時間の50%削減を実現しています。
「B2B Commerce」の導入で適切な提案を可能にし、売上が前年比1.5倍で推移|伊藤忠エネクス株式会社
全国で1,600を超える系列のガソリンスタンドなどに燃料を卸し、近年では車関連の事業を幅広く展開している伊藤忠エネクス株式会社のカーライフ部門では、デジタル活用の一環として販売店・グループ会社向けのECサイトを2019年に構築。
構築当初のECサイトは、最低限の機能を備えたパッケージ製品を使用した、輸入タイヤの販売を中心としたオーダーシステム的な要素が強いものでした。しかし、販売店やグループ会社とのパートナービジネスをさらに推進強化するためには、商品の拡充や適切な提案が迅速に行えることや、各パートナーとリアルタイムで情報共有を行える機能が必要だと実感。サイトを「Salesforce B2B Commerce」で刷新することに。
その結果、これまで手作業で抽出していたデータは、簡単にレポートとして出力でき、全国のパートナーと共有できるように。さらにデータを活用して分析まで行い、ビジネス推進の意思決定が迅速に行えるようになりました。
また、購入履歴をはじめとした情報をSalesforceの情報に紐づかせて、地域や販売店それぞれに合わせた商品提案を行えるまでに。サイトのリニューアル直後から、売上は前年比1.5倍で推移しているということです。
100周年を迎える老舗企業が、B2B Commerceの導入で製造業DXを実現|Mipox株式会社
創業から続く「箔」の製造技術を応用し、さまざまな産業・分野で使用される研磨材の製造から、OEM製品のエンジニアリングサポートや製造などを行っているMipox株式会社。
これまで受注業務はFAXや電話やメールを使ったものが大部分だったため、ERPやSalesforceに取り込むためには人の手を介して変換作業をしている状況でした。これに工数がかかり、結果としてボトルネックとなって納期の連絡が遅くなるなどの原因にも。こうした状況を打破するために「B2B Commerce」の導入を決定しています。
またSales Cloudを活用して顧客情報や商談を管理していますが、商材によっては長期的に継続する案件も多く、Sales Cloudだけでは管理が難しい場面も。さらに、在庫や生産量などの生産計画とも連携しなければいけないため、個別でExcel管理をする状況が発生。
こうした課題を解決するために、製造業界に特化したプラットフォームとして、長期継続案件に対応し、販売計画が精緻化できるManufacturing Cloudの導入も進めているということです。
Salesforceの各サービスが連携し、ワンストップでオープンな情報プラットフォームとして機能することで、注文情報から生産計画や在庫といったERPの領域まで連携してサプライチェーン全体のデジタル化を実現しています。
B2B向け導入時の成功ポイント
ここでは、B2B ECサイトの導入を成功させるために必要なポイントをご紹介します。ぜひ参考にしてみてください。
導入の目的と目標を明確に!
B2B ECサイトの構築方法や求める機能は、目的によって異なります。そのため目的が不明確なままで導入をしようとしても、要件定義が行えず、いつまでたってもサイトの構築は実現できません。
・売上アップや新規開拓
・業務の効率化
・特定の商材のECサイト化
上記のようにB2B ECサイトの導入目的を明確にした上で、それに伴う業務フローや課題を可視化しましょう。
また、数値による定量的な目標を設定して、効果測定をしやすくすることも必要です。
自社業務の棚卸しを!
B2B ECサイトの構築やリニューアルを行なう際、まず手がけるべきは「自社業務の棚卸し」です。これまで営業担当が対応してきた、受注入力、納期回答、在庫・価格の照会といった業務プロセスにおいて、企業ごとに「独自の売り方」や「独自のルール」が存在する可能性があります。
B2B ECサイトを構築する際は、こうした点を考慮した上で、全ての顧客がサイト上で滞りなく商品購入を完結できるよう、きめ細やかな条件設定や対応を行えるシステムを構築する必要があります。
B2B ECサイトのオープン後にスムーズに運用ができないという事態を避けるためにも、注文を受け付けてから商品が顧客の手元に届くまでの流れなどを、きちんと棚卸しすることをおすすめします。
基幹システムとの連携を前提に!
「Salesforce B2BCommerce」を導入することで新しいチャネルの構築をすれば、たしかに営業業務は飛躍的に効率化します。
しかし、サイトを通じて注文が入力された後の受注、出荷、請求等のバックオフィス業務は、企業内の別システム(統合ERPシステムや販売管理システム等の基幹システム)で実施する必要があるため、商品情報・在庫情報・顧客情報・受発注情報などのデータをシステム間連携させる必要があります。
こうしたB2B ECサイトと基幹システムで連携するデータは、マーケティングや商品開発やサービス品質の向上など別の分野でも活用することもできます。この活用を実現させるためにも、基幹システムでデータを一元管理することが必要になるのです。
【まとめ】Salesforce Commerce CloudのB2B向け活用方法
近年、多くの企業が導入を進めているB2B ECサイトですが、その導入効果は、以下の通りになります。
・小口顧客の取りこぼしを軽減できる
・営業工数を取引へシフトできることで受注確度がアップ
・見積や在庫確認が簡単に行えるようになり、見込み顧客が増える
・データに基づいたOneToOneの商談が可能になる
「Salesforce B2B Commerce」はB2Bに特化したソリューションで、短期間でECサイトの立ち上げが可能です。さらに業界のニーズに合わせたカスタマイズにより、企業が取引先に対して効率的かつスムーズな購買体験を提供します。また、SalesforceのCRMと連携し、顧客データの一元管理や、マーケティング、営業活動との統合を実現します。
しかしその一方で、効果的かつ安定した運用を可能にするためには基幹システムとの連携や、情報漏洩対策を施す必要があるなど、社内のリソースだけで構築・運用するには障壁が高いのも事実です。
ルビー・グループはECサイトにおける構築、デザイン、マーケティング、オペレーション、物流など一気通貫で行う事ができ、全てにおいてプロフェッショナルが対応いたします。
「Salesforce B2B Commerce」の導入を検討されているのであれば、ぜひご相談ください。
この記事を書いた人

ルビー・グループ コーポレートサイトチーム
各分野の現場で活躍しているプロが集まって結成されたチームです。
開発、マーケティング、ささげ、物流など、ECサイトに関するお役立ち情報を随時更新していきます!