
一方で、「自社サイトを使ってどのようにサブスクリプションサービスを始めれば良いかわからない」という方もいらっしゃるのではないでしょうか。
本記事では、サブスクリプション型ECサイトを立ち上げる際のプラットフォーム選びのヒントから、構築ステップ、サービス導入時の課題と解決策などについて解説しています。
「サブスクリプション型ビジネスの市場が成長しているから、自社でも導入を検討している」「サブスクリプション型ECを構築する際のプラットフォームの比較ポイントを知りたい」という方はもちろん、「顧客の継続利用を促すための仕組みや最適なプラットフォームを探している」という方も、ぜひご一読ください。
サブスクリプション型ECの市場動向と特徴
サブスクリプションサービス市場は、デジタルコンテンツ業界を中心に2010年代中頃から拡大してきましたが、ここ最近では衣・食・住などの日常生活に欠かせないものを提供する業界でもサービスを提供する形態が広がり、健全な成長軌道を継続。
株式会社矢野経済研究所のサブスクリプションサービス市場に関する調査結果(参照:https://www.yano.co.jp/press-release/show/press_id/3416)によると、2025年には国内サブスクリプションサービス市場は1兆円を超えると予測されています。

一方のサブスクリプション型ECは、定期的に購入できる点こそ同じですが、毎月同じ商品やサービスを届けるわけではありません。現在では、事業者が選定した商品やサービスを提供するタイプが主流となっています。
例えば、化粧品やコスメのサブスクリプション型ECを手掛ける「GLOSSYBOX」では、ユーザーが関心のあるカテゴリを入力しておくだけで、お店側がセレクトしたおすすめ商品を毎月4〜5点発送しています。もちろん利用者が支払う料金は定額制です。
プロが厳選した付加価値の高い商品を、定期購入という形で手軽に購入できるようにしているのがサブスクリプション型ECであり、ECサイトの数ある選択肢のなかから商品を選ぶことに疲れた、現代の消費者から支持を集めています。
このようにサブスクリプション型ECは、「単純にアイテムを定期購入する」という形態以外に、「ショップ側がアイテムを選択してくれる=なにが届くのかワクワクする」といった体験型サービスとして価値を高めはじめているのです。
こうした体験型サービスはSNSでの波及効果も高く、また「より多くのモノを持つという豊かさよりも、日常生活の充実やサービス体験の豊かさを重視する」という消費者の価値観の変化が背景にあることから、サブスクリプション型ECは今後ますます広がっていくことでしょう。
サブスクリプションに対応可能な主要プラットフォーム比較
それでは、「Shopify」「EC-CUBE」「Salesforce Commerce Cloud」といった、サブスクリプションサービスに対応可能な主要プラットフォームの機能比較についてご紹介いたします。
Shopify
かつてはサブスクリプションサービスに不向きとされていた「Shopify」ですが、APIの提供開始や日本のアプリベンダーによるサービスの拡充により、定期購入などのサブスクリプションにも対応しています。
Shopifyでサブスクリプションコマースを始めるには、以下の日本語対応しているアプリがおすすめです。
Go Sub
・月額無料から利用可能
・日本語と英語に完全対応
・他定期購入アプリからの移行もサポート
・要望に合わせたデザインや機能のカスタマイズも可能
【かんたんサブスク】
・月額無料から利用可能
・日本語のサポート体制が万全
・比較的安価で、機能が豊富
定期購買
・解約防止や売上アップに関する豊富な機能(マイページカスタマイズ/スキップ時ギフト/サンクスアップセルなど)
・連携できる外部アプリが豊富
Mikawaya Subscription
・ストアの売上向上に特化した機能と日本語のサポート体制も万全
・セレクト購入/マイページなどのデザインカスタマイズ/定期便継続率分析/翻訳機能なども充実
・開発環境での動作テストが可能
NoCode Subscription
・圧倒的な安価
・日本語サポートを用意
・サブスクに必要最低限の機能を用意
Shopify Subscriptions
・完全無料
・管理画面は日本語に対応
・シンプルな設定画面
・サブスク販売に必要十分の機能が揃っている
EC-CUBE
EC-CUBEは利用するにあたって高度なプログラムの知識は必要はなく、プラグインをインストールするだけで、機能を自由にカスタマイズして拡張ができます。以下で、EC-CUBEでの定期購入に使えるおすすめのプラグインを紹介します。自社で導入する際の参考にしてください。
EC-CUBEペイメント定期購入プラグイン
定期購入を管理するための機能が豊富に備わっているプラグイン。購入予定の商品や配送日を確認したり、定期購入の停止や再開を行うことができます。また、クレジットカード情報の変更や、定期購入の商品の変更も容易に行うことができ、利用者は自身の都合に合わせて商品を選び、購入することが可能となります。
レビュー投稿ポイント付与プラグイン
利用者が商品レビューを投稿した際に、ポイントを付与する機能を持っているプラグイン。事業者は顧客の声を直接聞くことができ、商品改善やマーケティング戦略の参考にすることが可能となります。
キャンセル在庫自動戻しプラグイン
サブスクリプション販売の運営において重要な、在庫管理に関する便利なプラグイン。利用者が定期購入をキャンセルした際に、その商品の在庫を自動的に戻す機能を提供します。
これにより、在庫管理の手間を大幅に削減することが可能になり、在庫の確認や補充作業を忘れてしまうというリスクも軽減できます。
※なお、株式会社イーシーキューブは、サブスクリプション型ECに対応した大規模EC向け構築・運用サービス「EC-CUBE Enterprise Subscription」を2024年12月2日より提供開始しています。(「EC-CUBE Enterprise Subscription」に関する詳細はこちら。)
Salesforce Commerce Cloud
「Salesforce Commerce Cloud」は、在庫管理や製品カタログ管理、注文管理、カスタマーサービス、マーケティング、分析、セキュリティなどの機能を有し、さまざまな業界向けのカスタマイズが可能で、小規模企業から大規模企業までのニーズに対応できるのが特徴です。
Salesforce Commerce Cloudのサブスクリプション機能には、Subscription ManagementやSmart ORDER REFILLがあります。
Subscription Management
サブスクリプション商品や1回限りの販売の販売、請求書処理、支払収集などのプロセスを自動化することが可能。商品カタログの作成、価格設定の管理、サブスクリプションの管理、顧客への請求、支払遅延リスクの評価、支払の収集、顧客の購入の追跡を行います。
Smart ORDER REFILL
サブスクリプションの注文を設定・管理することができる定期購入カートリッジ。
SiteGenesisとStorefront Reference Architecture (SFRA) に対応しており、定期注文を申し込む機能を提供することで、新規顧客の獲得と既存顧客の満足度維持に注力できるよう、複数の機能を備えています。化粧品、食料品、日用品など、定期的な購入に最適なオプションで、EC事業者と顧客の双方にメリットがあります。
なお、Smart ORDER REFILLは、Salesforce Commerce CloudのStorefront Reference Architecture(SFRA)認定を取得しています。
成功するサブスクリプションECの構築ステップ
サブスクリプション型ECサイトで安定的に売上をあげるためには、お客様に継続して利用していただき、更に上のプランをご利用いただくような、顧客のLTVを上げる施策が必要です。そのためにも、下記に説明するポイントを意識して施策検討をすることをおすすめします。
綿密なリサーチに基づいて価格を設定する
サブスクリプションビジネスにおいて重要となるポイントはいくつもありますが、その中でも、特に注意しなければならないのが価格の設定です。「同じようなサービスがこれくらいの価格だから」と価格設定をするケースもあるようですが、そのような安易な設定ではその後のビジネスが成立しなくなる恐れがあります。
また、そのサービスに顧客がどの程度価値を感じてくれるのかということを価格に反映させなければ、その後なぜ顧客が離脱したのかと言った検証が難しくなってしまうのです。そのため、スタート時の価格設定は、十分に検討を重ねたうえで、慎重に行っていく必要があります。
価格は、ターゲット顧客層に基づいた設定が非常に重要です。まず、顧客層を明確にし、彼らが何を求めているのかを理解しましょう。年齢、性別、収入、ライフスタイルなどのデータをもとに市場セグメントを抽出し、そのセグメントに最も適した価格を設定します。ターゲットが明確であるほど、価格設定の精度が上がり、顧客の購買意欲を高めることができます。
また、競合他社がどのような価格でサービスを提供しているかを調査し、単に同レベルの価格にするのではなく、差別化要素や付加価値を考慮して価格を調整することが重要です。
さらにサービス提供にかかるコストを詳細に把握し、それにより利益率を確保するための価格設定を行いましょう。
サービス利用に関する自由度・利便性を高める
サービス利用者の状況にあったサービスを用意できれば、それだけでも解約のリスクを減らすことができます。たとえば、顧客の中には毎月少し高額を払ってでもより完璧なサービスを求める方から、極力安い方が良いとされる方まで多種多様です。そうした様々なニーズに応えるために、「ベーシックプラン」「リーズナブルプラン」「プレミアムプラン」など段階を分けることがポイントです。
また利用者の生活スタイルにあわせて配送のサイクル(週、月、季節など)を選べる機能は必ず実装しましょう。サービス利用者にとって便利であると同時に、事業者側にとっても在庫管理やロジスティクスの最適化に貢献します。このように商品やサービスの選択肢を増やし、好みに合わせて自由に選べるようにすれば満足度が高まるはずです。
新規顧客やリピートを獲得するための特典を提供する
サブスクリプションサービスは、集客できなければ利益を上げることができません。そのため、まず利用者にサービスを体験してもらうことが重要になってきます。
新規顧客がサービスに興味を持ちやすくするための「期間限定無料」「初回割引クーポンの配布」など、お試し期間やキャンペーンの設置が効果的です。また、継続頻度に合わせた特典を用意することも重要です。
特に利用期間が短いお客様ほど、更新月を迎えるたびに「このまま続けるべきか」「この商品は本当に自分にとって必要なのか」と考えます。
こうしたお客様に向けて、サービスの継続価値があると思ってもらうための施策を用意しましょう。例えば、「XXヶ月継続でポイント付与率5%アップ」「〇〇ヶ月利用で△△をプレゼント」のような特典の提供です。こうした継続期間に応じた特典を用意できれば、お客様は契約を続ける可能性が高くなり、同時に商品の魅力に触れていただければ継続率アップが期待できます。
このようなプロモーションは、CRM(Customer Relationship Management)システムと連携して、顧客がどれだけサービスを利用しているかに応じて割引率を変更することも可能です。
サブスクリプション導入時の課題と解決策
それでは、自社ECサイトにサブスクリプションサービスを導入する際の課題にはどういったものがあるでしょうか。それぞれの解決策とあわせてご紹介していきます。
事業が黒字化するまで時間がかかる←長期的な計画を立てる
サブスクリプション型ECは、継続的に安定した売上を出すまでに時間を要します。またサービス開始直後は多くの顧客を獲得することが難しいため、プロモーションに力を入れ、お試し価格で商品やサービスを提供することも多いため、ある程度サービスを継続利用してもらわないと利益を出せないことも。こういったことも踏まえて、事業を軌道に乗せるまでの長期的な計画を立てることが重要です。
利用継続のハードルが高い←継続的に利用してもらうための工夫を
サブスクリプション型ECは、顧客がサービスを利用し続ける限り安定的な収入を得ることができるビジネスモデルですが、継続的なサービス利用を促すためのハードルは相当に高いと覚悟してください。事業を安定化させるためにも、まずはいかに利用者にリピートしてもらうかを考える必要があります。
具体的には、「商品のバリエーションを増やす」「他では購入できないオリジナル商品を提供する」「ノベルティなどの付加価値を付けて満足度を高める」などの取り組みを行い、既存顧客との関係を維持し継続率を高めることが大切です。同時に顧客の声を積極的に取り入れ、サービスの改善を続ける努力も必要になります。
価格競争に陥りやすい←企業やブランドに対するロイヤリティを高める
サブスクリプション型ECは、コストパフォーマンスの良さや、お得感を訴求することで消費者を惹きつけるケースが多いため、価格競争になりやすい傾向にあります。提供されるサービスや商品が似ている場合、消費者は料金で比較する可能性が高いので、事前の想定よりも収益性が下がることも織り込んでおきましょう。
低価格に頼らずに競合と差別化するためには、サービスや商品に独自の付加価値を加えるのが重要です。また、企業やブランドに対するロイヤリティを高めることも差別化につながります。ブランディングを行い、SNSマーケティングなどを活用してブランドイメージを定着させることに注力しましょう。
バックオフィス業務の構築・整備が必要←業務のアウトソーシングを検討
自社ECサイトにサブスクリプションサービスを導入すると、請求や契約更新作業、商品の発送、カスタマーサポートなどの作業が発生するだけでなく、顧客満足度や収益性に直結する顧客データの収集・分析や、安定的なシステム運用などの業務も重要になります。
サブスクリプションサービスの円滑な運営には、こうしたバックオフィス業務体制の構築・整備が不可欠です。対策としては、管理システムの導入による契約管理・請求業務の効率化のほか、業務のアウトソーシングなども有効です。ECサイトの円滑な運用や安定したサービスの提供、迅速かつ正確なバックオフィス業務を滞りなく行うために、前向きにアウトソーシングを検討するとよいでしょう。
【まとめ】サブスクリプション型ECの構築に適したプラットフォーム
サブスクリプション型ECは、安定的な収益の確保と顧客との長期的な関係構築を可能にするビジネスモデルです。しかし、事業として安定させるためには、顧客満足度を維持するために、継続的な商品やサービスの質の向上、競合との差別化戦略の構築が欠かせません。
またプラットフォームやアプリを選ぶ際は、日本語対応の有無やカスタマイズ性などに加え、膨大な数の顧客情報を管理することになるためのCRM(顧客情報管理)ツールやMA(マーケティングオートメーション)ツールなども利用できるかを確認することは重要です。
またサブスクリプション型ECは、決済のしやすさも重要なポイントになります。顧客がより利用しやすくなるように、複数の決済手段を用意しておきましょう。もし自前で用意できない場合は、決済代行会社のサービス導入が有効です。
こうしたことを考慮しながらサブスクリプション型ECサイトを構築し、円滑に運営するためには、業務のアウトソーシングの検討も必要です。
ルビー・グループには、各種プラットフォームを活用した多くのオンラインストアを制作・運営してきた実績があります。柔軟なカスタマイズだけでなく、ストアオープン後の運用においても安定的にサポートをさせていただくことが可能ですので、サブスクリプション型ECサイトの構築・運用をご検討されている場合は、ぜひご相談ください。
この記事を書いた人

ルビー・グループ コーポレートサイトチーム
各分野の現場で活躍しているプロが集まって結成されたチームです。
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