
すでに美容・健康ジャンルなどで大きな実績を残しており、さらにアパレル業界でも、越境ECを通じてその需要を取り込む動きが活発化していると言えます。
本記事では、越境ECの基本的な知識とメリット、日本企業の成功事例、中国市場での成功ポイント、越境EC成功のための課題などについて解説します。
「越境ECのメリットと課題を知りたい」「中国市場のECトレンドについて調べている」という方はもちろん、「海外市場への進出を検討している」「中国市場におけるECの可能性を知りたい」という方も、ぜひご一読ください。
越境ECとは?メリットと市場の魅力

越境ECとは、インターネットを活用し、国境を越えて行う電子商取引のことです。消費者が海外、あるいは自国以外に拠点を持つ事業者からオンラインで商品を購入したり、企業が海外の顧客に向けてネット販売を行うことを指します。
経済産業省の平成23年度調査で、こうした商行為が「越境EC」と定義されて以来、この呼び方が一般化しました。
越境ECでは、購入者は自国にいながら海外製の商品をECサイトで注文し、クレジットカードやオンライン決済サービスによって外貨で支払いを行います。販売者は国際配送により商品を発送し、通関手続きを経て商品を顧客のもとへ届けます。
越境ECの形態としては、Amazonや楽天など既存のプラットフォーム上に出店して海外顧客に販売する方法もありますが、最近のトレンドとしては、独自ドメインを取得し、自社で越境ECショップを立ち上げるショップオーナーが増加。独立行政法人中小企業基盤整備機構等の行政による助成金も、越境ECサイトの増加を後押ししています。
越境ECの市場規模は、世界的に拡大傾向にあります。経済産業省の「令和5年度 電子商取引に関する市場調査」によると、2030年には世界の越境EC市場規模は7兆9380億USドルまで拡大する見込みです。2021年の7,850億USドルと比較すると、およそ10年で10倍の規模へ急成長する予測となっているわけです。
同調査によると、とくに日本から米国、中国へ販売する額は年々増加の一途を辿っており、なかでも中国人消費者による日本事業者からの越境EC購入額は約2兆4,301億円に達し、前年から7.7%増加しています。
このように日本企業の商品は海外で高い需要があり、越境ECを利用した輸出ビジネスは大きな成長のチャンスとなっています。
次に、事業者が越境ECを行うメリットについて確認しておきましょう。
海外の新規顧客を獲得できる
越境ECの最大のメリットは、なんといっても海外の顧客を獲得できるということです。例えば、2025年1月の訪日外国人観光客数において最多となった中国の人口は、日本の約10倍と非常に大きく、ほかにも、欧米や東南アジア、中東諸国など、世界には魅力的なマーケットがたくさん存在します。
越境ECに取り組むことで、こうした海外マーケットに乗り出し、新規顧客を獲得できるチャンスを得られます。
成長市場へ参入できる
先述した通り、越境EC市場の規模は世界的に拡大傾向にあります。また、越境ECを利用して海外の顧客を対象にビジネスをする場合、日本市場よりも競合が少なくなるケースも多々あります。海外マーケットに打って出れば、ビジネスの拡大チャンスを獲得することが期待できます。
店舗運営が容易である
海外市場を対象にビジネスをしようとする場合、従来は現地でテナントを契約し、人を雇い、商品を日本から輸入して販売するといったように、非常に手間とコストがかかりました。
しかし越境ECであれば、インターネットを介したビジネスなので、実店舗を海外で展開するよりもはるかに簡単に、低リスクで出店することが可能になるわけです。
デメリットやリスクがゼロとは言えませんが、少子高齢化が進み、規模が縮小傾向にある日本国内のマーケットのことを考えると、越境ECは日本の産業界にとって大きな希望と言えるでしょう。
中国市場のECトレンドと成功するためのポイント
越境ECを検討するうえで必ず着目しなければならないのが、中国の越境ECの状況です。
「令和5年度電子商取引に関する市場調査報告書」によると、中国のEC市場規模は2023年時点で2兆9,875億USドルであり、前年比で11.4%の増加。今後も着実に増加する傾向にあると推計されています。
ここでは、拡大し続ける中国市場のECトレンドや、現地消費者の購買行動の特徴などについて解説します。
「第三者決済」が全体の約80%を占める
これから中国越境ECサイトに決済手段を導入するに当たって、ぜひ知っておきたいのが中国で人気の決済手段です。
中国のEC市場において特に人気なのは、「Alipay(アリペイ・支付宝)」や「WeChat Pay(ウィーチャットペイ・微信支付)」などの、「第三者決済」と呼ばれるキャッシュレス決済です。日本貿易振興機構(ジェトロ)」のリポート(※)によると、中国での越境EC利用の際の主な決済システムの利用割合は、この「第三者決済」が82.9%にものぼります。
また、中国ではデビットカードがポピュラーで、主に「銀聯カード」が利用されており、「第三者決済」と「銀聯カード」は、中国向けの越境ECサイトを運用する際に、ぜひ押さえておくべき決済手段といえます。
※参照:https://www.jetro.go.jp/ext_images/biz/special/2017/12/02.pdf
アパレル・美容・健康カテゴリーが人気
中国人消費者の日本商品に対する需要は旺盛で、日本製化粧品や健康食品の需要が非常に高いと言えます。多くの消費者が品質を重視しており、日本ブランドの信頼性が購買意欲を高めています。
また、日本を訪れ購入した商品を気に入り、帰国後にリピート購入するユーザーも多いため、アパレル関連のECサイト事業者にとっても大きなチャンスがあると言えます。
SNSマーケティングを活用する
中国ではSNSの利用率が非常に高く、特に「WeChat(微信・ウィーチャット)」は現在中国で最も利用されているSNSです。提供元のテンセントが発表している2020年9月までのデータによると、月間アクティブユーザーは12億人超と、その規模が非常に大きいことが分かります。
こうしたSNS上に自社アカウントを作成・運用することで、自社商品やサービスの新情報やクーポンなどの割引情報の発信、商品の使用方法の解説動画などを配信することが可能になります。
また中国では、「KOL(Key Opinion Leader)」と呼ばれる、SNS上で影響力の高い、多くのフォロワーを持つインフルエンサーが存在します。中国ではライブ配信で商品を紹介・販売するライブコマースが活発化しており、KOLマーケティングでも活発に利用されています。アパレルや化粧品などのジャンルが特に注目されているので、積極的に活用を検討してみましょう。
中国市場で成功した越境EC事例
ここでは、中国向け越境ECで成功している日本企業の事例をご紹介します。
Tabio
靴下専門ブランド「Tabio」は、Made in Japanのはき心地とデザイン性が海外でも高い評価を得て、公式サイトに海外ユーザーのお問合せや海外からのアクセスが増加。
なかでも台湾は、かつて店舗を展開していたものの2020年に撤退しており、需要がありながらも販売網が備わっていないことから、2021年に越境ECに乗り出すことを決意。
自社ECサイトにタグを設置するだけで、海外購入サポート機能を追加できるサービスを導入し、海外顧客向け販売を2021年11月より開始しています。
ECサイトでは、実際の着用イメージを大きな画像で紹介しているほか、カラーバリエーションが一目で分かるようにするなど見せ方にも工夫をこらすなどして、売上を拡大。
現在、自社ECで商品購入をする海外顧客のうち9割を、台湾の顧客が占めるまでになっています。
ヤーマン
美容家電を中心に展開している「ヤーマン株式会社」では、越境EC「https://www.ya-manchina.com/」を運営。中国の大手ECモールである天猫国際(Tmall Global)が開催する「独身の日」セールで、電子美容機器の販売・売上シェア5年連続1位を獲得しているほど絶大な人気を誇ります。
とくに2021年の独身の日セールでは、同社の美顔器「YAMAN Professional MAX」は12億円以上を売り上げたと言われています。
ヤーマンが好調な理由は、美容に関心を持つ中国女性をターゲットにし、同社製品のファン化を推し進めるために購買活動を徹底的に分析。彼女達の興味を引くライブコマースを配信していることにあります。製品の機能や技術などの詳細な情報をリアルタイムで伝えることで、売上を伸ばすことに成功しました。
資生堂
資生堂は、中国において天猫などのECプラットフォームを利用した他社ECサイトへの出店と、自社ECサイトの運営をしています。両チャネルで、日本製ブランドと中国工場産のブランドを販売していますが、前者は中国富裕層向け、後者は中間所得層向けとしています。
中国では資生堂のような日本製ブランドの模倣品が多く、中国国内の有名なECプラットフォームで普通に流通しており、問題となっています。その対策として、自社ECサイトでの販売を行っています。
一方、ECプラットフォームではライブコマースを積極的に活用しています。ライブコマースはインフルエンサーや芸能人などのライブ動画により製品を紹介するため、ブランドの正規性を保証できる手段の一つと言えるでしょう。
北海道お土産探検隊
山ト小笠原商店が運営するECサイト「北海道お土産探検隊」では、「六花亭」や「白い恋人」といった定番のお土産品を販売していますが、自社で運営するオンラインショップのみならず、多様なECプラットフォームへの出店することで越境ECを成功に導いています。
中国向けとして当初は楽天市場の越境ECで販売していましたが、中国大手ECサイトの「天猫」とも提携することで、楽天市場でカバーできなかったユーザーにアプローチすることに成功。中国ユーザーからも「手軽に北海道のお土産を大量に買える」と大人気になっています。
自社オンラインショップのみで認知度を高めようとすると多大な時間や労力が必要となりますが、同社は既存のプラットフォームを積極的に活用することで、効率的な中国向けビジネス展開を可能にしています。
越境EC成功のための課題と今後の展望
最後に、越境ECを成功させるめの課題や、それらをクリアする方法などについてご紹介いたします。
対象の国の商習慣や環境なを事前に把握する
越境ECを始める前に、「本当に自社商品が使われるか」を必ず市場調査することをおすすめします。消費者の生活習慣や考え方は国によって大きく変わります。日本国内では考えもしなかった意外な理由で、自社製品を受け入れられなかったというケースは多々あります。
どんなに商品の質が良く、またマーケティングに力を入れても、現地のニーズや習慣に合わなければ絶対に売れません。越境ECの立ち上げに本格的に取り組む前に必ず調査をして、現地の習慣やニーズをきちんと把握することが、越境ECの成功を左右すると言えます。
現地の人気決済手段を必ず導入する
越境ECサイトを運用する際には、決済方法についても事前に調査が必要です。ターゲット国・地域において利用率が高い決済方法を確認し、自社ECサイトに導入することで購入促進につなげましょう。
クレジットカード、PayPal、電子マネー、銀行振込、代金引換などが一般的な手段ですが、国や地域によって普及している決済手段が異なりますので、事前に調査し最適な手段を用意することが必要になります。
ターゲット国・地域の言語を使用する
越境ECサイトでビジネスを行う場合、言語の壁が必ず課題になります。参入する国・地域に合わせて翻訳を行い、現地の言葉を反映したECサイトを構築することが必須です。翻訳するページが多い場合には、専用の翻訳ツールや多言語化ソリューションを利用すると効果的です。
なお、日本語から外国語に翻訳すると、文章の長さが変わる場合があり、言語によってはデザインが崩れるなどのトラブルに見舞われるケースが多いので注意が必要です。多言語化をする場合は、事前にデザイン崩れを想定した上で元サイトのデザインを組み上げるなどの配慮が必要です。
高額な輸送コストに対応する
越境ECにおけるデメリットのひとつが、輸送コストの高さです。一般的に越境ECは、国内での配送よりもコストが高額になります。また輸送に手間や時間がかかるぶん、紛失などのリスクも国内より上がることが予想されます。
現地の倉庫や物流網を活用して、輸送のコストや時間を抑えることが可能です。例えば中国向け越境ECでは、あらかじめ商品を中国の保税区内の倉庫にストックしておき、注文が入ったら倉庫から直接配送するモデルがよく利用されています。規模の大きな越境ECの場合や、回転率の高い人気商品などについては、このような「保税区モデル」を活用した方が良いでしょう。
国・地域によって異なる法規制へ対応する
例えば米国(CCPA・カリフォルニア州消費者プライバシー法)、EU(GDPR・EU一般データ保護規則)、中国(PIPL・個人情報保護法)など、越境ECを行う場合、必ず販売する国や地域の法律・規制を事前に確認しましょう。
特に個人情報の取り扱いについては国・地域によって解釈が異なるケースが多いので、注意が必要です。
また越境ECで盲点になりがちなのが「商標登録」に関する問題です。日本でのみ商標登録している企業が多く、現地で商標が既に登録されている場合、たとえ元祖や本家であっても商標を使用できないという事態に陥る可能性があります。
この場合、日本での販売実績があれば、手続き・裁判を経て認められるケースもありますが、時間と手間がかかるので、可能な限り事前に確認しておきましょう。
まとめ
越境EC市場は巨大で、その規模は拡大を続けています。外国人の消費者は、日本人よりもネットショッピングを行う頻度や金額が高い傾向にあるため、新規顧客の獲得にも適しており、幅広い消費者にアイテムを販売することが可能です。
また越境ECはインターネットを活用しているため、現地で店舗を構えるよりもリスクを抑えつつ、低コストでビジネスを展開することができるのも大きなメリットです。
しかし越境ECで成功するには、国内向けとは異なるノウハウが必要になります。自社内で行うよりも、豊富な実績と経験のある制作会社に依頼したほうが、スピーディに大きな利益を得ることが期待できるでしょう。
ルビー・グループでは、多くのECサイトで実績がございます。 ラグジュアリーブランドの実績も豊富で、高いクオリティでのサービス提供が可能になりますので、越境ECでお困りの際は、ぜひご相談ください。
この記事を書いた人

ルビー・グループ コーポレートサイトチーム
各分野の現場で活躍しているプロが集まって結成されたチームです。
開発、マーケティング、ささげ、物流など、ECサイトに関するお役立ち情報を随時更新していきます!