オムニチャネルの成功事例と最新トレンド|導入のポイントとは?

2025.04.22

2025.04.22

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インターネットとスマートフォンの普及により、今やマーケティング分野において重要な概念となった「オムニチャネル」。現代のマーケティングにおいて重要な手法とだとはわかっているものの、その具体的な内容や事例、あるいはマルチチャネル・OMOとの違いについてしっかり理解できている人はそれほど多くないのではないでしょうか。

本記事では、オムニチャネル戦略の基礎と最新トレンド、成功事例などについてご紹介します。

「オムニチャネルの定義とメリットを知りたい」「成功企業の事例や活用方法に関する情報が欲しい」という方はもちろん、「オムニチャネル戦略とOMOマーケティングの違いがよくわからない」「どのツールやプラットフォームを使うべきかを探っている」という方も、ぜひご一読ください。

オムニチャネルとは?基本概念と市場動向

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オムニチャネルとは、アパレルなどの小売業を中心に広まっている販売戦略の一つで、企業が保有するあらゆる(Omni)チャネル(Channel)を連携させるマーケティング手法です。

実店舗、ECサイト、SNS、カタログ、アプリケーションなど、さまざまな顧客とのタッチポイントや販売経路を統合し、顧客がチャネルの違いを意識せずに商品を購入できるにシームレスな購買体験を提供。顧客が商品を欲しいと思ったタイミングで購入できるようにするために押さえることで、顧客満足度の向上、リピート率の向上、在庫管理の効率化、機会損失の削減などを目指します。

オムニチャネルが注目されるようになった背景にあるのが、スマートフォンやSNSの普及です。顧客が、いつでもどこでもインターネットにつながることで、「SNS経由で商品を知り、最安値検索しネットショップで購入」というようにチャネルを横断して商品やサービスを購入することが日常になりました。

このように、商品やサービスの購入・申込みをするまでの流れが多様化・複雑化した現代の消費行動形態に対応するために生まれたのが、オムニチャネルです。

顧客目線で考えると、チャネルの違いを意識せずにどこでも好きな時に均一なサービスが提供されるので、よりストレスが少ない快適な顧客体験を得ることができます。

また企業目線では、チャネルを横断して1人の顧客の行動データが分析することで、各チャネルのニーズを正しく判断し、顧客やシーンに応じた最適なサービスを提供できるようになるというメリットがあります。

オムニチャネルに似た用語として、マルチチャネルやOMOなどがあります。マルチチャネルとは、商品の販売機会を増やすために複数のチャネルを用意する手法。各チャネルが独立しており、別々に売上アップを目指しているのに対し、オムニチャネルではチャネルを統合し、全体の売上向上を実現します。

OMO(Online Merges with Offline)は、オムニチャネルと同様にオンラインとオフラインのチャネルを連携させるマーケティング手法ですが、OMOは顧客満足度の最大化を目的としているのに対して、オムニチャネルは企業の販売経路拡大を通して、消費者の購買意欲を促進することが主な目的。つまりマーケティングの「主体」が異なるわけです。

オムニチャネル戦略の成功ポイント|データ活用と顧客体験の向上

オムニチャネルは、顧客がチャネルの違いを意識せずに商品購入できる環境を構築し、すべての接点で一貫した“おもてなし”を顧客に提供するという手法です。

これを成功させるためには、顧客が各チャネルにおいてどのような消費行動を起こしているのかを正確に理解することが重要となります。そこで必要になるのが、チャネルにまたがった顧客情報を統合し、チャネル間で相互連携させるツールであるCRM(顧客関係管理)です。

CRMを利用することで、実店舗・ECサイト・スマホアプリなどから得た情報を一元管理化。オンライン上だけでなく、実店舗においても顧客をセグメント化し、一人ひとりの顧客の嗜好にあった商品を、顧客の好む方法で提示することが可能になります。

例えば、ECサイトでの購入履歴に基づいた「おすすめ商品」を、実店舗でおすすめできたり、よく見るSNSなどで表示すれば、顧客がどこにいても心地良いショッピングができるようになり、購買意欲を刺激して購入に至る可能性があります。

データ統合の最もポピュラーな方法は「1顧客1ID(ワンアイディ)」化です。1人の顧客に付与したIDで、あらゆるシステムを連携することは、オムニチャネル対応インフラとして必要要件と言えるでしょう。

「システムを導入し、各チャネルのデータの統合ができればオムニチャネル化が成功する」というわけではありません。シームレスな顧客体験を実現するための以下の施策や環境構築も必要です。

顧客に提供したい価値や体験の統一化

シームレスな顧客体験を提供するためには、「顧客に何を提供したいか」を明確にし、オンライン・オフライン、チャネルを問わず共有する必要があります。

そのためには、カスタマージャーニーマップを作成して顧客が製品やサービスを利用するまでのプロセスを可視化、顧客の行動や感情、思考を時系列で把握することで、顧客体験の改善やマーケティング戦略の最適化をしましょう。

シームレスな業務フローの構築

オムニチャネルを成功させるためには、チャネル間での業務の受け渡しをスムーズにすることも重要です。たとえばECサイトで購入した商品を店舗で受け取る場合などは、倉庫などのバックヤードを巻き込み整備した業務フローが欠かせません。

各チャネル間をつなぐ業務フローが不十分だと、顧客に対して良質な購入体験を提供することが難しくなります。シームレスな運用体制を構築することで、顧客体験の向上を目指しましょう。

オムニチャネル向けの評価制度の確立

オムニチャネル戦略では、店舗に在庫がない場合に顧客にECサイトでの購入を促進する、ECサイトで「現物を見たい」という顧客に近くの店舗を案内するなど、チャネルをまたがって売上に貢献するケースが多々あります。

顧客にチャネルの違いを意識させない購入環境を提供するためには、チャネルを横断した売上創出の機会を作ったスタッフを適切に評価する制度を整備しなければなりません。

スタッフの貢献を正確に評価できるようになれば、モチベーション向上につながるので、オムニチャネル戦略に適合した評価制度を確立することをおすすめします。

国内外のオムニチャネル成功事例

それではここで、国内外のオムニチャネル成功事例をご紹介いたします。

ユニクロ

ユニクロ
オムニチャネル戦略の国内の先駆者として、顧客体験の向上を図っているのがユニクロです。店舗でWEB限定カラーやWEB限定商品のPRを積極的に行ったり、アプリダウンロードと新規会員登録で500円のクーポンをつけるなどの施策を行うことで、ECサイト(アプリ)への誘導やアプリ利用を促進。会員登録させることでユーザーの個人情報や購入データを取得することで、マーケティング施策のデータ蓄積を積極的に行っています。

さらに、 ECサイトで購入した商品の店舗受取を促したり、ECサイトで買った商品を全国どの店舗でも返品することができるようにするなど、店舗で商品を購入するクロスセルにつなげています。まさにオムニチャネルの実践により売上を高めている成功事例と言えます。

渋谷PARCO

渋谷PARCO
百貨店の商習慣を上手くECサイトにも適用したオムニチャネル化の好例として挙げられるのが、渋谷PARCOの「PARCO CUBE」です。

「PARCO CUBE」は、オンラインとオフラインの融合させた小型のオムニチャネル型ショップの集合体。店内のスペースが従来型のショップより小さいため、店内に置くのは戦略アイテムや限定商品だけに絞り、そこを補完する意味で、各テナントショップの自社eコマースサイトと連携して、来店客が店頭からサイト内の情報を閲覧したり、そこで見た情報をもとにお客様の好きなタイミングで、パルコのオンラインストアで商品を購入できるようになっています。

さらに画期的なのは、その場にある商品をオンラインストアで購入し、持ち帰りの手間を省くこともできるようにした点です。在庫をすべて連携するようにシステムを設計したことで、百貨店ならではの商習慣を活かしながらもユーザーにとって全く新しい、使いやすいオムニチャネル化を推進できた事例と言えます。

ABC-MART

ABC-MARTは、靴やカジュアルブランドの衣料品を扱う小売業大手企業で、国内外で1,000店舗以上を展開している業界最大手。IT投資を積極的に行い、オムニチャネル戦略を強化しています。

公式アプリには、ECと実店舗で利用できるポイントシステムや店舗検索機能を実装し、店舗ではインターネット通販で購入した商品の受け取りや試着が可能です。

また、在庫管理の改善のために「iChock」(アイチョク)サービスを導入。店舗で欠品した商品でも、ECサイトに在庫があれば自宅へ配送手配し、店舗レジで会計できるサービスとして話題になりました。

ヨドバシカメラ

ヨドバシカメラ
店舗で商品を確認してWEBで最も安い商品を購入するという、小売りにとって脅威とも言える「ショールーミング」を、あえて導入して成功させたのがヨドバシカメラです。

ヨドバシカメラ店舗では商品の撮影を自由に行わせて、ユーザーをヨドバシドットコムに誘導しました。これにより、ヨドバシカメラは業界をリードする成功事例となり、ほかの企業もこの方式を採用しています。

また、商品価格、返品方法などもECと店舗で完全に統一したのも、オムニチャネルらしい取り組みと言えるでしょう。

Macy’s

Macy’s
オムニチャネルマーケティングの先駆けと言われているのが、アメリカで古くから続く百貨店Macy’s(メイシーズ)の取組みです。

店舗とECサイトの在庫や顧客情報を一元化し、店頭に商品がないときはネットや他店の在庫を手配し、自宅に届けるようにしています。

また店舗スタッフにモバイルを支給し、競合店との価格の違いや商品情報の提供、在庫の状況や支払いの手続きなどに関する顧客が持つ疑問や面倒な手続きをその場で解消するなど、きめ細やかなコミュニケーションで顧客の心を掴み、購入意欲を後押し。オムニチャネルを採用したその年に、700万点もの商品を販売することに成功しています。

オムニチャネル導入時の課題と今後の展望

オムニチャネル化は、企業に機会損失の回避や販売力強化などのメリットをもたらし、同時に顧客へ利便性も提供できるため、企業と顧客双方にとってメリットのある施策です。しかし、企業がオムニチャネル化を実現するにあたり、いくつかの課題をクリアする必要があります。

ここでは、オムニチャネル導入時の課題と、対応策についてご紹介いたします。

オムニチャネル戦略に向けて1番の課題は、顧客データと在庫データの統合です。
オムニチャネルの実現には展開している複数チャネルの連携が欠かせず、各チャネルのデータを統合するためのシステム構築が求められます。

具体的には、異なるプラットフォーム間でのデータ連携、レガシーシステムと最新デジタルソリューションの統合、リアルタイムでの情報共有が求められます。API連携の難しさ、データ形式の不一致、セキュリティ要件の調整など、技術的な障壁が存在します。

対策として、オムニチャネルに力を入れているシステム会社の活用や、すでに構築されたシステムの導入の検討が必要でしょう。

オムニチャネル化には顧客情報の集約やシステム、運用体制の構築とコストがかかることも課題です。

投資した費用を回収できるか、どの程度の期間で回収できるのか、どれほどの成果が期待できるのかも考えつつ取り組みを進める必要があります。

最初から大規模の投資を行いシステム開発をするのではなく、スモールスタートで始めて、様子を見ながら追加投資を行うことが必要でしょう。

また、たとえ費用をかけてオムニチャネル化に必要なシステムを用意しても、活用できなければ意味がありません。活用にはシステムを熟知し、経営戦略を立てられる責任者が求められますが、適任者が用意できないこともあるでしょう。

とはいえ採用・育成にコストがかかるケースもあり、優秀な人材はどこの企業でも必要としています。システム構築段階から担当者となる人材を確保できるよう、適正を見極めて教育してしておくことが望まれるでしょう。

たとえオムニチャネル化を図ることができたとしても、対応すべき課題はあります。お客様の問合せ内容や興味関心は日々変化します。

そのため、常にお客様のニーズをキャッチでき、それらを各チャネルのメンテナンスや導線設計に常に反映できるような仕組みが必要となります。このような仕組みづくりを行い、運用を継続することで、チャネル構築後の効果を最大化させることが可能です。

まとめ

本記事では、オムニチャネル戦略の基礎と最新トレンド、成功事例などについてご紹介してきました。

これからは、実店舗、ECサイト、SNS、アプリ、カタログなど、事業者とお客様を結ぶあらゆるチャネルで一貫した購買体験を提供し、顧客満足度を高めて購買へとつなげるマーケティングが必須になります。

そのためには、さまざまなチャネルをシームレスにつないで商品やサービスの魅力を伝え、顧客のエンゲージメントやコンバージョンを獲得できる環境の構築が必要です。
ルビー・グループでは、動作環境が優れたプラットフォームへのリニューアル支援や、ECサイトの改修、また、様々なブランドを運用してきた強みを生かしたECサイトの運用保守などを手がけています。

さらに、在庫の一元化を図り、在庫切れによる売り逃がし減らすオムニチャネルの実装についてもお手伝いさせていただきます。各チャネル連携により売上を伸ばす方法を模索しているということであれば、ぜひお気軽にご相談ください。

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この記事を書いた人

ルビー・グループ コーポレートサイトチーム

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