
しかし、現在のシステムから新しいシステムに漏れなくデータやコンテンツを移行するのは、簡単なことではありません。ECサイトの移行を成功させるには、いくつかのポイントを押さえることが重要です。
本記事では、ECサイトの移行における成功のポイントを具体的に解説しています。
「現在のECサイトから移行する際の具体的な手順や注意点を知りたい」「最適なプラットフォームを選ぶための比較ポイントを理解したい」という方はもちろん、「移行後の運用体制やコストの最適化について学びたい」「新しいプラットフォームを活用したマーケティング施策や売上向上の方法を探りたい」という方も、ご一読ください。
ECサイトを移行する理由とよくある課題

パフォーマンスや安全性が低下
常日頃バージョンアップが定期的に行われているシステムであれば問題ないですが、そうでないECサイトのシステムの場合、長期間そのまま使用していると必ず老朽化します。それによりパフォーマンスが著しく低下し、さらにセキュリティ上の脆弱性が発見されたり、最新のツールやアプリケーションなどに対応できなくなるなどの事態が発生します。
特にオープンソースの場合、老朽化が早い傾向にあり、またシステムやプラグインでセキュリティ上の問題が発見されるケースが多々あります。
顧客に快適にショッピングを楽しんでもらうのはもちろんのこと、個人情報の漏洩などのセキュリティ事故を防ぐためにも、5年以上同じシステムを使用している場合は、システム移行を検討することが懸命でしょう。
キャパシティや拡張性が不足
EC事業を拡大するにあたり、現在のシステム環境や機能では明らかに不足であると判断した時も、ECサイトの移行を検討すべきタイミングです。
EC事業拡大を実現するにあたり「増加するアクセス数に耐えられるか」「商品登録数の上限に不足はないか」「検索フィルターを使って検索結果を絞り込むことはできるか」「決済方法を追加できるか」などを確認し、検討してみましょう。
たとえ事業拡大のチャンスがあっても、システムのキャパシティや拡張性に問題があれば断念せざるを得ません。事業拡大のために必要な要件を洗い出したうえで、現在のシステムで可能かどうかを確認し、必要とあればシステム移行を検討しましょう。
ベンダーのサポート体制に不満
どんなに豊富な機能を実装しているECシステムでも、使いこなせなければ事業の売上アップにつながりません。その場合、必要となるのがシステムベンダーのサポートですが、ベンダー側の体制が十分でないケースもあります。
「提案がほとんどない」「聞いても丁寧に説明してくれない」「対応が著しく遅い」といった場合、停滞状態は続きます。その状況を続けるとECサイト運営に確実に支障をきたすため、サポート体制が充実しているサービスへ移行する必要があります。
「システム移行をきちんとサポートしてくれる」「問い合わせに対するレスポンスが抜群」「ECサイト運営に関する相談まで乗ってもらえる」など、サポートが十分のベンダーであれば、EC事業を成功に導くことができるでしょう。
現在のサポート体制に不満があれば移行を検討し、ECサイトの機能を十分に活用できるサービスを利用しましょう。
ECサイト移行に成功するための重要ポイント
それでは、ECサイト移行を検討するにあたり、重要なポイントについて解説いたします。
目的達成や課題解決が可能なプラットフォームを選ぶ
数ある中から、自社にとって最適なプラットフォームを選ぶために最も重要なのが、「移行の目的を達成できるか」「現在のECサイトが抱える課題を解決できるか」という基準です。
まずは、「必要な機能を備えたECサイトに移行することで、販売機会の拡大や顧客単価の向上を目指す」「使いやすいシステムに移行して、業務効率化を図る」など、目的や課題を決めましょう。「売上高前年比○%アップ」など、細かい数字に落とし込んで目的を設定すると効果測定しやすくなります。
このように達成したい目的や解決したい課題を設定した上で、以下の要素を洗い出し、要件定義をしましょう。
・スケーラビリティ
・カスタマイズ性
・セキュリティ機能
・統合可能なツールやアプリケーション
・サポート体制
・コスト(初期費用と運用コスト)
余裕を持った移行スケジュールを策定する
ECサイトをスムーズに移行するためには、余裕を持ったスケジュールを設定することが重要です。
とくに初めてリニューアルする場合は、必要以上に時間や手間がかかり、ミスをする可能性があります。また、データ移行の際に思わぬトラブルが発生することもあるため、十分にリカバリーできるスケジュールを確保することは絶対です。
念入りにデータの移行方法や必要な時間を検証したうえで、余裕を持ったスケジュールを設定しましょう。
データ移行の作業には最大限の注意を
新しい環境に移行する顧客情報には、氏名や住所などの個人情報以外にも、購買履歴やポイント残高などデータも含まれるため、データ移行は慎重に行いましょう。
また顧客情報のデータ移行する前に、休眠状態の顧客のデータの取り扱いを検討しましょう。移行するデータ量を減らせば、そのぶんリスクも軽減されます。「○年以内に注文が無い顧客は移行しない」など、顧客データの見直しをしましょう。また、以下の情報については、セキュリティの観点から基本的に移行はできないとお考えください。
・会員ランクデータ
・会員パスワード(※1)
・クレジットカード情報(※2)
※1.パスワードは暗号化され抽出が難しいため、移行後に新しいパスワードの登録を会員顧客にお願いしましょう。
※2.決済会社を変更する場合、クレジットカード情報の移行は不可。
ドメインの継続が可能かを必ず確認
ECサイト移行において、意外と見落としがちなのが「ドメイン」です。これまで使用していたドメインを引き続き使用できるかを、ECサイトを移行する際に必ず確認しておきましょう。
独自ドメインの場合は引き続き利用できることがほとんどですが、プラットフォームサービス事業者から提供されたドメインの場合は、サービスの解約と共にドメイン使用の権利を失います。
ドメインを引き継げない場合は、ショップのURLを新しくしなければならないため、顧客からのアクセス数が減少してしまう可能性があります。また、ドメインの変更は検索順位に影響を与える可能性があるため、SEOの観点からも問題があります。ドメイン移行の可否は、乗り換えを決める前に必ず確認しておきましょう。
ECサイト移行 成功事例の紹介
成功した企業がどのようなポイントに注力し、ECサイトの移行を行ったかを、事例をベースに具体的に見ていきましょう。
CRMの構築などでアクセス数が150%アップ|株式会社中川政七商店
リニューアルに至った理由の1つは、「分析しやすい環境」がなかったこと。移行前の環境はデータをリアルタイムに取得することが難しく、ECサイトで起きている出来事を見極めるにはハードルが高い状況でした。
2つめは「CRM」が構築できていなかったため、お客様のステータスを見極めて適切なコミュニケーションを図るという、店舗では接客の中で当たり前にできていることがECでは全くできていなかったことにありました。
そこで、柔軟なカスタマイズが可能なパッケージシステムを導入し、ECサイトを刷新。上記2点の課題をクリアするとともに、スマホのUIを開発するなどして、サイトを利用する上でお客様が感じるストレスを減らすことで、サイトの利便性を飛躍的に上げることに成功しています。
カート移行で215%の売上アップを達成|リンガーフーズ株式会社
しかし当時利用していたのは、商品を販売するのみのカートシステムであったこともあり、カート機能を強化することで効果的な販促施策を展開することを決断。さらに、「はがき・ファックス注文の顧客をECサイトへ誘導し、運用を効率化したい」といった課題を解決するために、新しいカートシステムへの移行を実施しました。
リニューアル当初からCRMシステムを利用し、顧客分析を実施。お客様がどのアクションで離脱しているかなど、様々なデータに基づいた最適な施策を実施できるようになり、単月の売上昨年対比が、最大215%に増加するなど大きな成果を得ています。
ECサイトのリニューアルで、月商が前年同月比130%に拡大|株式会社ファルベ
リニューアル前は「表示速度の遅さ」や「ユーザー導線の複雑さ」「スマホに最適化できていないこと」が主な課題でした。また、それまで7年使用していたサイトであったため、商品数やカテゴリが整理されておらず、商品が探しにくい点も課題となっていました。
リニューアル後は、1つのドメインで複数のECサイトを運営する構造に変え「結婚アイテム」と「インテリアポスター」「ギフト商品」の3つのショップを運営。ECサイト直下にブログサイトも集約させたことで、SEOにも効果的に作用し、アクセス数増加につなげています。
その結果、リニューアルオープン翌月の月商は、前年同月と比べて約130%に伸びています。
移行を支援するおすすめプラットフォームとサービス
ここでは、ECサイト移行をサポートする主要プラットフォームと、それぞれの特徴やメリット、サイトの移行支援サービスなどについてご紹介いたします。
Shopify
「Shopify」は、専門知識がなくても簡単にECサイト構築や運営ができる、カナダ発のEコマースプラットフォーム。手軽にECサイトが開設・運営できることはもちろん、必要な機能が追加できる柔軟性の高さと、 優れたコストパフォーマンス、海外展開のしやすさも、「Shopify」ならではの魅力です。
「Shopify」に移行することで得られる主なメリットは以下の通り。
・サイトマップが自動で生成可能
・高いSEO効果が見込める
・連携可能なSNSが多い
・振込手数料・販売手数料が無料
・カゴ落ち対策を行える機能がある
・ログイン方法が充実
・決済手段が多い
また、他のサイトから「Shopify」に移行する際、引き継げるデータには、次のようなものがあります。
・氏名や電話番号、住所などの顧客情報
・サイトで取り扱いのある商品情報
・注文や購入履歴などの受注情報
・ブログや記事などのコンテンツ情報
なお、ストアのコンテンツデータを「Shopify」に移行する際は、インポートアプリを活用するとスムーズにできます。また、CSVファイルを利用して、手動でインポートすることも可能です。
Salesforce Commerce Cloud
セールスフォース・ドットコムが提供する「Salesforce Commerce Cloud」は、クラウドベースのEコマースプラットフォームとして、グローバル展開を行っている大企業を中心に世界中のECサイトに導入されています。
「Salesforce Commerce Cloud」に移行すると、ECサイトの拡張性やパフォーマンスの改善、顧客体験の向上などが期待できます。「Salesforce Commerce Cloud」への移行で得られる主なメリットは以下の通り。
・ECサイトのレイアウト変更・修正が容易になる
・他のSalesforce製品と連携して運用できる
・国境を超え複数の地域でサイトの管理が可能
・AIによるパーソナライズでコンバージョン率(CVR)の向上を期待できる
・マルチチャネルの販売を展開し、各チャネルの注文や在庫を統合管理できる
・拡張性が強化され、より質の高いレコメンドや「個客」対応が可能になる
なお、「Salesforce Commerce Cloud」への移行に際し、最も頼りになるのが「Salesforceパートナー」です。セールスフォース社が認定したSalesforceに関するサービスを扱う企業で、パートナーの種類はいくつかありますが、なかでもSalesforceの導入・定着化支援、包括的なコンサルティングを行っているのが、「コンサルティングパートナー」になります。
EC-CUBE
「EC-CUBE」は、株式会社イーシーキューブが提供するオープンソースのECサイト構築パッケージ。ECサイトの運営や、管理に適したコンテンツマネジメントシステム(CMS)として、推定3万5千店舗以上ものショップに利用されています。「EC-CUBE」に移行することによって得られる主なメリットは以下の通り。
・ソースコードを公開しているため、無料でダウンロード・利用可能
・ソースコードの改変が自由で、自社のビジネスモデルなどに沿ってカスタマイズ可能
・ECサイトの構築や運営に必要な標準機能がすべて備わっている
・EC-CUBEペイメント(公式)やGMOペイメントゲートウェイ、ゼウスなど、さまざまな決済サービスを利用できる
なお株式会社イーシーキューブは、マーケティングテクノロジーカンパニー「株式会社イルグルム」のグループ企業です。ECサイト移行支援はもちろん、「ECサイト運営支援」「広告効果測定ツール」「Webマーケティング特化型マッチングサービス」「SNS・動画マーケティングなど集客に強いマーケティング支援」など、EC事業者の課題を一気通貫でサポートするサービスやソリューションを提供しています。
【まとめ】ECサイト移行の成功ポイント ~事例で学ぶ最適なプラットフォーム選び~
売上拡大や業務効率化を図るために、ECサイトの移行およびリニューアルを検討されている事業者の方は多いと思います。
ECサイトを移行するには、「目的と課題の明確化」が非常に大切あり、またデータ移行の進め方など注意すべき点はいくつかあります、さらに、作業には多くのコストや手間がかかるなど、社内のリソースだけで実現するのはかなりハードルが高いと言えるでしょう。
ECサイトの移行で失敗しないためには、最適なパートナー選びが重要です。ルビー・グループでは、より新しく動作環境が優れたプラットフォームへのリニューアルをご支援します。また、様々なブランドのECサイトを運用してきた強みを生かし、売上向上のための改善案をご提案し、ECサイトのリニューアルを手がけることも可能です。
ECサイトの移行・リニューアルをご検討されているなら、是非ご相談ください。
この記事を書いた人

ルビー・グループ コーポレートサイトチーム
各分野の現場で活躍しているプロが集まって結成されたチームです。
開発、マーケティング、ささげ、物流など、ECサイトに関するお役立ち情報を随時更新していきます!