
本記事では、EC自動化が注目される背景から、自動化できる主なEC業務とツール、EC自動化の導入ステップと失敗しないためのポイント、EC自動化の成功事例などをご紹介しています。
「EC運営における自動化できる業務について知りたい」「具体的な自動化ツールやサービス、導入事例は?」という方はもちろん、「自動化ツールの運用コストや、システム連携の難易度について調べている」「自動化後の人員配置や業務内容の再設計を検討している」という方も、ぜひご一読ください。
EC自動化が注目される背景とは?

ECの自動化とは、受注処理、在庫管理、出荷業務、マーケティング、顧客対応など、EC運営上の様々な業務を、システムやAIを活用して効率化・自動化することを指します。
EC運営の自動化によって期待できるメリットは以下の通りです。
>>業務効率化
人力による作業を減らすことで作業時間を短縮し、事業の効率が向上。
>>作業品質向上
ヒューマンエラーを減らすことで、作業のクオリティが向上。
>>コスト削減
人的リソースの削減や作業時間の短縮によって、コストを削減。
>>顧客満足度向上
誤出荷や配送遅延のリスクを減らすことで、顧客満足度を向上。
それでは、EC自動化が注目される背景には、どういった事情があるのでしょうか。
以下で、詳しく見ていきます。
EC市場拡大に伴う物流量増加への対応
経済産業省の調査(※)によると、令和5年の日本国内のBtoC-EC(消費者向け電子商取引)市場規模は、24.8兆円(前年比9.23%増)に拡大。
日本国内のBtoB-EC(企業間電子商取引)市場規模も、465.2兆円(前年比10.7%増)に増加しています。このようなEC市場の成長に伴い、注文数と出荷量が大幅に増加。多様な商品や個別のニーズに応えるためには、迅速かつ正確な出荷処理が可能な自動化が求められています。
※参照元:「令和5年度 電子商取引に関する市場調査報告書」
人手不足と労働環境改善への対応
労働人口の減少や物流業界における人手不足も、ECの自動化が急がれる背景の一つです。
ECサイト運営には「商品の登録」「注文処理」「在庫管理」「カスタマーサポート」など、手間のかかる作業が数多くあります。なかでも在庫管理や注文処理などは、手動による入力ミスや注文の重複処理が発生することが多々あります。
しかし、自動化ツールを導入することで、これらのプロセスが正確かつ迅速に処理され、ミスが大幅に減少。結果的に顧客満足度が向上し、信頼を獲得することができます。
また倉庫内作業は重労働で、若い労働力の確保が難しい現状が自動化推進の要因となっています。作業員の負担を軽減し、作業の安全性を向上させるためにも、ロボットや自動化システムの導入が注目されています。
コスト削減と競争力強化
コスト削減の必要性も、自動化を後押しする大きな理由です。
手動で行っていた作業にかかる時間や人的リソースを削減することで、企業は他の重要な業務にリソースを集中させることができます。
さらに、自動化を進めることで、例えば24時間対応のカスタマーサポートや、注文処理の迅速化など、顧客体験を向上させることができ、他の企業よりも優れたサービスを提供することで競争力強化につながります。
自動化できる主なEC業務とツール例
ここでは、実際にどんな業務が自動化することができ、事業の効率化や顧客満足度の向上などを図ることができるのかをご紹介します。
口コミ収集
さまざまなSNSに投稿されている自社商品に対する口コミなどを、自動で収集してExcelに蓄積。また、自動でポジティブな評価とネガティブな評価に分けることや、特定のキーワードを検知した際にメールで担当者に通知をすることも可能です。
レポート作成
サイトの閲覧者数や滞在時間、広告の費用対効果など、あらかじめ設定しておいた情報を定期的に取得し、定型レポートを自動で作成することが可能です。
在庫管理
自社の在庫管理システムと各ECモールを連携、事前に設定しておいた時刻に、それぞれの在庫数や出荷予定数などの情報を担当者に自動でメール送信することが可能に。
これにより、自宅でも、外出先でも、自社商品の在庫状況を正確に把握することができるようになります。
顧客情報の登録
専用フォームに顧客情報を一度入力するだけで、社内で使用している会計ソフト、顧客リストのExcel、業務管理アプリケーションなど、複数のシステムに自動で登録が可能。顧客情報の登録漏れを防ぐことができます。
キャンセル・返品処理
顧客が返品やキャンセルをするとRPAが検知し、取引のステータスを更新。顧客に対して返金処理方法や次のステップの案内を自動で通知し、同時に自社の在庫管理システムにも変更が反映されます。
入金消込
取引銀行のシステムから入金情報を取得すると同時に、社内の会計システムから消込情報を取得。データを突き合わせ、確認ができたものを消込し、未入金のものをリスト化する作業を自動化することができます。
請求処理
システムから自動でデータを抽出して会計システムにインポートしたり、請求書の内容を自動で会計システムに入力、支払いの状況をリアルタイムで追跡したりと、さまざまな請求処理を自動化することができます。
問い合わせ対応
顧客からの問い合わせに対して自動で回答を行うことができる会話プログラムを導入することで、問い合わせ対応の代替が可能に。会話形式で利用でき、利便性・操作性に優れているため、回答率や利用率を高めることが期待できます。
上記のような各種業務の自動化を実現するために、多くの企業が導入しているのが「RPA」(ロボティック・プロセス・オートメーション)です。
「RPA」は「Robotics Process Automation」の略で、作業の内容や手順が決まっている定型業務や、繰り返し行われるルーティンワークなど、人が手作業で行っていたタスクを自動化する技術・ソフトウェアのことを指します。活用することで、在庫管理から顧客対応まで、ECサイト運営のあらゆる面で自動化を実現し、業務の効率化を図ることが可能です。
また「RPA」以外にも、注文状況の確認や商品の詳細、返品・交換の手続き方法など、顧客からのよくある質問への対応を24時間自動化できる「AIチャットボット」や、顧客の購買履歴や行動に基づいて、ターゲットを絞ったマーケティングキャンペーンを自動化できる「Eメールマーケティングツール」などがあります。
EC自動化の導入ステップと失敗しないためのポイント
次にEC自動化を進める際のステップと、注意ポイントについてご紹介します。
EC自動化のステップ
1. 現状の課題分析
注文管理、在庫管理、出荷業務、顧客対応など、ECサイトの運営において時間がかかるプロセスやミスが発生しやすい業務を洗い出し。それぞれの作業内容を改めて可視化することで原因分析をし、その中から自動化が可能な業務を洗い出しましょう。
2. 自動化すべき業務の特定
データ入力、メール送信、在庫の確認、出荷指示の作成など、自動化できる業務を特定し、RPAやEC自動出荷ツールなどの導入を検討。
効果的な自動化を行うためには、時間がかかりエラーが発生しやすい反復作業や、高い正確性が求められるデータ入力など、自動化によって最大の効果が得られる業務を特定することが重要です。
なお、すべての業務を一度に自動化しようとするのではなく、単純で効果が出やすい小規模な作業の自動化から始めることをおすすめします。
3. ツールの選定
自動化すべき業務が明確になったら、業務内容に合ったツールなどを選定します。
選定の際には、自社が利用しているシステムとの互換性や使いやすさ、スケーラビリティ、セキュリティなどを考慮し、費用対効果が高いツールを選ぶことが重要です。
また、ベンダーが提供している無料トライアルをお試し利用すれば、実際の業務で利用する際の適用性や使いやすさ・操作性を確認することができます。
4. テスト運用
特定した業務を段階的に自動化し、テスト運用を行います。運用状況をモニタリングし、必要に応じてツール設定や業務フローを見直します。
5. 本運用
テスト運用で問題がないことを確認したら、本運用を開始します。運用状況を継続的にモニタリングし、必要に応じて改善を行いましょう。運用開始後も、ツールや業務フローを継続的に見直し、改善を重ねることが重要です。
なお、自動化ツールを導入する際には、パッケージと独自開発の2つの方法があります。
パッケージは、ある程度機能が決まっているシステムで、サービス提供者と契約して月額課金で利用するシステムです。
コストを抑えたい中小企業でも導入しやすく、すでにでき上がっているシステムを導入する形になるため、短期間で導入することが可能です。
一方の独自開発は、システム開発会社に個別に依頼して独自のツールを開発してもらう方法です。ゼロからの開発になるので自社の業務にフィットしたツールが導入でき、自動化ツール開発後に機能をカスタマイズしてもらうことも可能。アフターサポートの手厚さも魅力です。自社のEC運営事情と合わせて、最適な方法を選択しましょう。
EC自動化の導入事例と得られた成果
それではここで、EC自動化に成功した各種企業の事例を見ていきましょう。
〜出荷・受注処理の自動化により出荷ミスを削減〜
>ファシリティマネジメント企業のA社では、毎日約200枚が届くFAX注文の処理時間と人的ミスが課題となっていました。そこで注文処理をメール受注システムに切り替え。メールの件名やアドレスから店舗・部門を自動判別し、受注データを作成して基幹システムへ連携するプロセスが自動化され、作業効率が飛躍的に向上ています。
>大手CSVチェーン向けに冷凍パン生地を供給しているパン生地製造企業B社では、当初はFAXによる受注処理を計画していましたが、メールで注文を受けることに。メール業務を自動化するツールとExcel加工ツールを導入することで、メール受注データの自動抽出やエラーチェック、出荷システム用データの加工と登録の自動化を実現しています。
〜社内工数削減と売上アップの両立に成功〜
>スポーツアパレルの企画をはじめ、輸入・EC販売をおこなうC社は、RPAツールを導入することで、請求処理、在庫連携、売上データのダウンロード、物流倉庫への納品リスト作成、在庫の棚卸業務、欠品防止業務などさまざまな業務を自動化。年間800時間の作業工数削減に成功しました。また、在庫連携が可能になったことで複数のECモールへの出店が可能になり、売上向上にもつなげています。
>化粧品・健康食品・美容家電の企画・販売を手がけるD社では、RPAツールの導入により、ECサイトの定期購入者向けの価格変更作業の自動化を実現。従来なら5名体制で合計160時間、1週間ほどかかる作業でしたが、24時間で処理を完了させることが可能になっています。これにより、担当者は顧客対応など他の業務に時間を割くことができるようになり、生産性が向上しました。
>食器メーカーE社は、RPAツールの導入により、ECサイトでの在庫状況の更新や商品品番の変更作業を自動化。さらに、生産手配書の印刷業務や売上管理ファイルの作成、Googleアナリティクスのデータ抽出、電子帳簿保存法対応業務など、さまざまな業務の自動化を実現。多くの手作業を削減したことで顧客対応の質が向上し、業務にかかるコストも大幅に削減されています。
〜チャットボット導入により応答時間を短縮〜
>建築材料や住宅設備機器などを提供するF社は、「ノンボイスによる24時間365日のお問合せ対応の実現」を目的に、チャットボットツールを導入。入力された質問の意味を独自のAIエンジンが解析し、最適な回答文を返答する自動応答システムにより、電話での問合せを削減し、顧客満足度の向上につなげています。
>全国にカメラ専門店を展開するG社は年賀状の印刷サービスも展開しており、繁忙期の業務負荷は懸案事項になっていました。そこで年賀状サイトにチャットボットツールを導入。利用者はコールセンターの受付時間外でも、チャット形式で気軽に質問できるようになり、サイトの利便性向上につながりました。
>オークションサイトを手がけるH社では、自然言語処理に特化したAIを活用した会話エンジン実装のチャットボットツールを導入。導入直後から正答率99%という高品質な応答により、「パスワードを忘れてしまった」「支払い方法は何が選べる?」など会員の疑問を即時に解決することで、ユーザビリティの向上に貢献しています。
まとめ
本記事では、EC自動化の進め方や成功するためのポイントなどについて解説してきました。
EC業務の効率化やミス削減だけでなく、年々拡大を続けるEC市場においてシェアを確保するためにも、ECサイト運営の自動化は欠かせません。
しかし、自動化ツールの導入に不安を感じ、踏み切れていない方も多いと思います。その場合は、パートナーや専門スキルを持ったエキスパートに作業を委託することもおすすめです。
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この記事を書いた人

ルビー・グループ コーポレートサイトチーム
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