
これにより、問い合わせ対応や後処理、FAQの作成など、これまで人間が行っていた業務が次々にシステムへと置き換わっています。
本記事では、カスタマーサポート自動化が求められる背景から、有効な方法、導入事例、失敗しないためのポイントなどをご紹介しています。
「カスタマーサポートの自動化によって工数が削減ができるのかを知りたい」「カスタマーサポート自動化の方法・種類(チャットボット、AIなど)を調べている」という方はもちろん、「チャットボットだけで対応できない範囲への連携はどうすればよいか悩んでいる」「多言語対応、24時間対応など今後の拡張性を知りたい」という方も、ぜひご一読ください。
なぜ今「カスタマーサポートの自動化」が求められているのか

それではまず、多くの企業がカスタマーサポートの自動化を進めている背景について解説いたします。
多様化・複雑化する顧客との接点やニーズ
昨今、デジタル化が進み、消費者の行動パターンが多様化・複雑化したことが、カスタマーサポート自動化推進の背景の一つになっています。
以前であれば顧客からの問い合わせ経路は電話かメール、あるいは問い合わせフォームなどに限られていましたが、現在はSNSの普及により各種メッセージなどがそこに加わっています。
また、インターネットの普及により、時間や場所に限定されない対応が顧客から求められ、企業は24時間365日対応できる体制の構築が急務となっています。
人手不足・属人化・コスト高の三重苦
少子高齢化により労働人口は年々減少し、カスタマーサポートにおいても人手不足の課題が浮き彫りになっています。さらに、多くの企業のカスタマーサポートセンターでは、オペレーター不足により応対ノウハウなどのナレッジが属人化しやすいという課題も。
こうした課題を解消するためにはオペレーターの増員が必要ですが、人件費の高騰などにより新規採用が進まず、またたとえ新規採用ができたとしても、人手不足のために教育に手が回らないなど、悪循環に陥っている企業が数多く存在します(オペレーター業務のアウトソーシングという手段もありますが、あくまで一時しのぎであり、根本的な解決にはなりません)。
こうした問題を解決するために、カスタマーサポートの自動化は、多くの企業にとっての喫緊の課題になっています。
AI技術の急激な発展
カスタマーサポートの自動化が推進されている背景には、AI技術の発達もあります。
かつては導入のハードルが高かったAI技術ですが、最近では多くの企業で導入が進み、活用方法の成功ノウハウが蓄積されてきています。
これによりAIの精度が向上し、業務効率化や応答の平準化のためにAIを取り入れるコールセンターが増えてきています。
また、昨今ではChatGPTに代表される「生成AI」の活用が積極的に模索されています。
後述するような生成AIを活用した手法を採用することで、過去の顧客データや履歴をもとにしたパーソナライズドサポートや、顧客の問題に合わせた最適な解決策を提案できるようになり、より優れた顧客体験の提供を可能にすることが期待されています。
自動化の代表的な手段と導入パターン
ここでは、カスタマーサポートの自動化を実現するためには、どんな方法があるのか、具体的にご紹介していきます。
自動音声応答システム
顧客からの入電があると、あらかじめ録音した音声を自動再生し、顧客にプッシュ操作してもらうことで、顧客を適切な二次対応窓口へと誘導するシステム(IVR=Interactive Voice Response)。
オペレーターが専門外の質問対応に手間や時間を取られることがなくなることで、負担軽減、応対業務の効率化などのメリットが生まれます。
音声認識
通常カスタマーサポートセンターでは、顧客との終話後、システム上にやりとりの内容を入力しますが、これを音声認識に任せてしまう方法です。
顧客とのやりとりはリアルタイムでテキスト化され、業務システム内にデータとして蓄積。「オペレーターが顧客対応後に応対内容を記録するのに時間がかかる」といった課題を解決することができます。
また「AI音声認識」であれば、顧客の会話内容の感情分析をし、その都度で最適な対応が可能になることも。また、事前に登録した「要注意ワード」が対応中で出てきた際にはオペレーターなどにアラートを出し、深刻なトラブルに発展することを未然に防ぐことも可能になります。
チャットボット
「チャットボット」とは、「リアルタイムで会話できる自動応答プログラム」で、カスタマーサポート自動化の代表格的な手段です。
これまでオペレーターが対応していた顧客からの問い合わせなどに、チャットボットが24時間365日いつでも対応することが可能になります。また、顧客の声をデータとして収集し、分析しやすいというメリットも生まれます。
さらに、よくある問い合わせや簡単な対応は基本的にチャットボットに任せ、チャットボットでは答えられない複雑な問い合わせに限りオペレーターに引き継ぐようにすれば、オペレーターの稼働を最小化することができます。
顧客側も、オペレーターに電話がつながるまで待たされることが少なくなり、問題を自己解決できる率が高まるため、顧客満足度も向上するはずです。なお、チャットボットには以下の2種類があります。
<シナリオ型チャットボット>
想定される質問に対してあらかじめ回答を用意しておき、顧客からの問い合わせに応じて選択肢を提示し答えまで導きます。
<AI型チャットボット>
AIの学習能力を活用し、過去の記録やデータを参考にして回答を導き出すシステム。シナリオ型チャットボットよりも幅広い質問に対応することができ、より人との会話に近いコミュニケーションを取ることが可能となります。
FAQシステム
FAQシステムとは、よくある質問(FAQ)とその回答を作成・蓄積して、検索できるようにすることで、ユーザーの自己解決を促すシステムです。
導入することで、サービスや製品に対してユーザーが抱えがちな疑問や問題に対して素早く情報を提供し、円滑な自己解決を図れるようにサポートすることが可能になります。
テーマごとにテンプレートを利用することで回答作成を省力化できる機能や、AIが回答を予測してサジェストしたり、多く検索されるものをランキング表示したりと、ユーザーが回答へスムーズにアクセスできるようにサポートする機能なども実装。
また、「どんな質問が多いのか」「どんな回答が支持されるのか」を分析し、より活用されやすいFAQへと改善する機能などを搭載しているものもあります。
導入により顧客が問題を自己解決できる件数が増え、そのぶんコールセンターやカスタマーサポートへの問い合わせ件数削減につながります。
電話対応、メール対応の件数削減はオペレーターの業務負担軽減に直結するほか、本当にサポートが必要な顧客に対する支援を手厚くできるため、組織全体のサービス品質向上にもつながるでしょう。
問い合わせ対応自動化システム
「Aの事象が起きたらBを実行する」など、あらかじめ設定しておいたアクションを行う機能を実装したシステムです。
「〇〇に関する問い合わせが届いたらAさんにエスカレーションする」「△△関連の問い合わせはBチームにエスカレーションする」といった登録をしておけば、顧客から問い合わせが届いた際に自動的に振り分けが行われます。
自動化の導入で得られる具体的な成果と事例
次に、カスタマーサポートを自動化することによって得られるメリットを整理してみましょう。
24時間365日対応の実現
AIチャットボットなどを活用しカスタマーサポートを自動化することにより、企業は深夜や休日、24時間365日、顧客対応が可能になります。
対応品質の向上と均一化
定型的な質問への自動回答や、迅速なデータ更新、フォローアップメールの適切なタイミングでの送信などが可能になります。これにより顧客からの信頼が向上し、長期的な関係構築につながるでしょう。
また、カスタマーサポートの自動化により、均一的な対応が実現する点もメリットです。人為的なミスやオペレーターによる応対品質のムラが軽減できるため、対応時間の短縮や業務効率化につながります。
このように、個々の顧客に適した対応を即時に提供することで、顧客満足度の向上や企業のブランドイメージの強化にも寄与します。
業務効率化によるコスト削減
例えば、問い合わせメールを自動で分類して担当者に割り振る仕組みや、フォームから得たデータをCRMに自動登録するシステムを導入することで、大幅な時間削減が可能に。結果として、業務負担が軽減され、担当者は顧客対応や戦略的業務に集中できるようになります。
このようなカスタマーサポートの自動化によって、人手を必要としない対応が多くなり、人手不足問題への対応とともにコスト削減を実現します。
では、カスタマーサポートの自動化に成功した企業の事例を見ていきましょう。
ユニクロ〜AIチャットボットサービスの導入で2倍の問合せ量に対応〜
ユニクロでは、ECサイトでの購入をサポートするAIチャットボットサービス「IQ」を公式アプリに導入しています。過去の問い合わせ内容や情報をもとに、AIがお客様からのお問い合わせに対応。
AIで回答できない質問や困りごとには、オペレーターがリアルタイムチャットで回答し、AIと人の利点をうまく組み合わせた接客を行っています。
「UNIQLO IQ」の導入により、電話やメールで来ていた問い合わせの半数以上がチャット経由に切り替わったことでサポート対応可能量が増え、前年比で2倍の問い合わせ量に対応できる体制になったということです。
LOHACO〜AIチャットボットが電話オペレーター10人分稼働〜
最短翌日の配送と、幅広い生活用品のラインナップで人気の通販サイト『LOHACO』。その問い合わせ窓口の一つとして利用しているのが、AI技術を活用したチャットボットです。
同社では顧客に積極的に活用してもらえるよう、チャットボットをキャラクター化。趣味は雑貨屋さんやカフェ巡り、特技はお料理やお絵描き、家族は夫と長男(3歳)、長女(1歳)、犬と猫を飼っているなど、想定顧客に近い設定をして親近感を持たせることで、問い合わせ数は急増。月ごとの電話オペレーターの仕事に換算すると、10人分以上の対応を実現しています。
自動化導入のステップと失敗しないポイント
それでは、カスタマーサポート自動化のためのステップと、注意すべきポイントついて解説します。
顧客導線・タッチポイントの可視化と設計
カスタマーサポート自動化の導入ステップとして、まず大事なのが、現在の業務の棚卸しをし、自動化の対象を明確にすることです。
顧客導線やタッチポイントの洗い出しをし、それぞれで発生するカスタマーサポート業務について、作業内容、頻度、所要時間、人の判断の有無など具体的に書き出します。
さらに「工数が多い」「ヒューマンエラーが発生しやすい」など、作業における負担や課題点などを重ねることで、自動化すべき業務を特定することができます。
自動化ツールの比較と評価
次に自動化するためのツールの選定作業に入るわけですが、世の中に存在する様々な自動化ツールの特徴を比較し、自社のニーズに最適なツールを選ぶ必要があります。
カスタマーサポート部門の担当者が運用する場合は、誰でも直感的に操作でき、専門知識が必要ないツールを選びましょう。
また、ツールベンダーからの導入支援の有無や、サポート体制などが充実していることも重要なポイントです。
自動化システムの導入
さて、いよいよ選定したツールを現場に導入するわけですが、自動化を成功させるには、性急に事を進めていないけません。
まずは限定的な範囲から始める「スモールスタート」をし、トライ&エラーを繰り返しながら段階的に自動化範囲を拡大していくことで、確実に業務効率化を進めていきましょう。
さらにシステムの導入後のテストでは、自動化システムが正確に機能し、期待通りの効果をもたらすかを、定量的・定性的に測定して継続的に改善を行うことが重要です。
定量的な成果としては、「作業を削減できた時間」や「人的ミスの減少率」、「業務処理の増加量」、「対応スピードの向上」などが挙げられます。
定性的な成果としては、社員の従業員のモチベーション・満足度の向上や、業務の標準化、顧客満足度の向上などが挙げられます。
まとめ
カスタマーサポート業務では、問い合わせ対応や顧客データの管理、定期業務の処理など、繰り返し発生する作業が多く、業務負担が課題となりがちですが、これらの業務を自動化することで、作業時間の短縮やミスの削減、業務効率化を実現することが可能です。
また、AIや他のツールと連携することで、自動化の範囲を広げ、顧客満足度向上を図ることも期待できます。
しかし、カスタマーサポートの自動化を成功させるためには、現状の課題を客観的に把握し、適切なツール選定と段階的な導入を進めることが必要です。
ルビー・グループではこれまで、数多くのラグジュアリーブランドにおけるECの構築、マーケティング、 オペレーションなどを手がけ、様々なマーケティングソリューションをご提供しています。
カスタマーサポート自動化を含め、問い合わせ対応の品質向上や売上の拡大などに関するご相談などがございましたら、お気軽にお問い合わせください。