A/BテストでECサイトのコンバージョン率を改善する方法

2024.10.29

2024.10.29

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「A/Bテストは、具体的にどのように進めればいい?」「A/Bテストで効果的な検証をするには?」「テストの結果をどうやって分析すればいいの?」…。 ECサイトのマーケティング担当の方の中には、こうした疑問やお悩みを抱えている方もいるのではないでしょうか。

A/Bテストを利用すれば、大きな工数をかけることなく、WEBサイトやアプリのユーザーエクスペリエンスを高めることができ、多くのECサイトでも採用されています。

本記事では、A/Bテストの概要から、必要な手順、分析をする際の注意点など、事前の準備から実践・結果分析・改善にいたるまで詳細に解説しています。 「A/Bテストは聞いたことはあるが具体的にはわからない」という方はもちろん、「計画から実践までの流れについて知りたい」という方も、ぜひご一読ください。

A/Bテストとは?基本的な仕組みと重要性

A/Bテストとは?基本的な仕組みと重要性のイメージ画像
A/Bテストとは、Webサイトなどで使われる、改善を目的としたテスト手法です。WEBサイト上のコンテンツやランディングページの2パターン(バリエーション)をランダムに表示し、どちらが効果的かを検証します。

ECサイトにおけるA/Bテストでは、画像やテキスト、バナーやボタンの位置などが異なる2パターンのページを用意し、どちらのほうがクリック率やコンバージョン率などの成果が上がるのかを検証します。A/Bテストにより得られるメリットは以下の通りになります。

短期間かつ低コストでECサイトを改善できる

ECサイトのA/Bテストでは、「トップページのデザインのみ」「商品の説明文のみ」というように、ページ内の1つの要素のみを入れ替えます。そのため、テストの工程が少なく済むみ、短期間で実施できるというメリットがあります。

また、最終的にリニューアルを行うとしても、A/Bテストで最適なパターンを分析した上であれば、無駄なく効率的に改修することができます。

顧客体験の向上につながる

ECサイトのA/Bテストでは、ランダムに選んだ半数のユーザーにパターンAを、残りのユーザーにパターンBを表示し、それぞれのユーザーの反応を検証するため、バイアスを排除した検証結果を得られます。

その結果に基づき、ユーザーにとって使いやすいサイトへと改善することができれば、顧客体験の向上にもつながり、クリック数やCVRの増加、離脱率の減少などにつなげることが期待できます。

ユーザーの行動分析が可能に

A/Bテストを実施することで、どのような画像や文言であればユーザーが反応するか(しないか)といった、ECサイトの訪問者の行動を詳しく分析できることが可能です。

デザインや機能などが異なる2パターンのサイトでテストをし、「滞在時間」「クリック率」「CVR」など、購入までの各ステップでの行動を数値化して把握。この分析結果を基づき、効果的な改善策を立てられます。

このように、A/Bテストを実施すれば、デザインや文言などの違いが顧客行動に与える影響を客観的に検証することができ、制作者の感覚やセンスに依存することなくECサイトを顧客目線で改善することが可能になります。

なお「Optimize Next」(https://optimize-next.com/)を利用すれば、無料でA/Bテストを実施することが可能です。 「Optimize Next」は、2023年9月にサービス終了となった「Google オプティマイズ」を代替するABテストツールで、アクセスの多いサイトでも、制限なく無料で利用することが可能。

Googleアナリティクスと安全に連携、テスト結果の確認もすべてツール内で完結します。また、Googleアナリティクス上でレポートを作成し、さらに詳しく分析することも可能。2024年10月時点で、3,500以上のWebサイトで導入されています。

A/Bテストでは何をすべきかを見極める方法

テストの目的を具体的に設定する

ECサイトは扱う商品が多く、ページも複数あるところが一般的なサイトと異なる点です。関連商品へのリンクやサムネイル画像など、A/Bテストで改善できる要素は多数ありますが、大切なのは、テストをする要素の優先順位をきちんと決めることです。

そのために、まずはA/Bテストの目的を明確にしましょう。「会員登録者数を◯◯まで増やす」「トップページの直帰率を◯%まで下げる」など、なるべく具体的に設定しましょう。目的が設定できたら、達成実現のためにもっともインパクトの大きい箇所から優先順をつけてA/Bテストを実施していきましょう。

たとえば「会員登録者数を◯◯まで増やす」の場合は、会員登録ページに誘導するランディングページや、会員登録ページに遷移するボタンの位置や文言などをテスト対象にします。目的が「トップページの直帰率を◯%まで下げる」であれば、トップページに最初に表示されるコンテンツをテストで検証してみると良いでしょう。

仮説に基づいて改善要素を洗い出す

次に「どこを改善することで効果が出そうか?」という仮説を立て、改善要素を洗い出しましょう。
その際に重要なのは、自社ECサイト上のユーザー行動をきちんと分析し、どこがボトルネックになっているかを客観的に判断することです。

効果測定ツールでバナーやランディングページのクリック率を分析する、アクセス解析ツールで離脱率の高いページを調査する、ヒートマップで離脱しやすいポイントを特定するなど、各種ツールを使用して問題点を洗い出しましょう。

こうしてデータに基づいて改善するための重要な要素を洗い出し、どう改善したら効果がでるかの仮説を立ててからA/Bテストを実施しましょう。ただし、最初は仮説を思いつくことができても、改善を繰り返していくうちに思いつく限りの仮説をテストしてしまい、これ以上アイデアが出てこないという壁にぶつかるのはよくあるケースです。その場合は、社外からの情報収集を行いましょう。

競合他社の情報やEC事業が好調な企業の特長を分析し参考にする、自社の顧客ターゲットに近い層の動向がわかる市場調査データを収集・分析する、ターゲットと属性が近い複数のユーザーにインタビューをするなど、外部からの情報や声で意外な気づきが得られることがあるので、参考にしてみてください。

効果的なA/Bテストの実施方法~計画から実行までのステップ~

ここでは、A/Bテテストの進め方と、それぞれのプロセスで押さえておくべきポイントを解説します。
前項で解説したように、事前に目的を明確にして仮説を立てた上でテストを実施をしましょう。

サンプルサイズとテスト期間の決定方法

A/Bテテストで有意な結果を得るためには、十分なサンプルサイズが必要です。小さいデータで比較すると結果が偶然の影響を受けやすくなり、信頼性が低下するからです。A/Bテストで適切な分析を行うためには、一定数の母数(トラフィック)が見込めるページで実施しましょう。

母数が少ないページで実施する場合は、長期間テストを実施することをおすすめします。サンプルサイズの計算には、現在の基準値、期待する改善率、統計的有意水準、検出力などを考慮します。

「有意水準」とは、A/Bテストの結果が偶然によるものかどうかを判断するための基準となる確率で、
一般的には0.05(5%)もしくは0.01(1%)が用いられます。

「検出力」はコンバージョン率の実際の違いを検出する確率で、通常0.8(80%)に設定します。オンラインの「ABテストサンプルサイズ計算機」(例:https://keisan.casio.jp/exec/user/1489063696)を利用すると、必要なサンプルサイズを簡単に算出することができるので、参考にしてみてください。

テストの実施期間ですが、大規模サイトなどトラフィック量の多いサイトの場合であれば、数日間で統計上の有意差が出ることがあります。しかし、平日と週末でユーザーの行動は変化しますし、他のキャンペーン施策の影響などを受けているy可能性があります。最低でも1週間はテストを継続すべきでしょう。

テスト期間は、長ければ良いというわけではありません。A/Bテストを長期間継続しているとその差は次第に縮まっていきます(「平均への回帰」という統計的な現象)。一定のサンプルサイズを確保できていながら1か月以上経っても傾向が見られなければ、中断して別のテストを実施した方が良いでしょう。

信頼性の高いデータを得るための注意点

A/Bテストは同じ期間内に実施することも重要です。異なる期間でテストを行うと、季節やキャンペーン、トレンド等な外的要因の影響を受け、結果が一貫しない可能性がありるからです。

テスト期間を統一し、なるべく外的な要因を取り除くようにしましょう。 また2つ以上の要素を同時に変えてしまうと、テスト結果に対してどの施策が要因となったのか分析が難しくなってしまいます。1つのテストにつき1つの施策を検証するようにしましょう。小さなテストを繰り返し行い、細かい変更を重ねていくことでノウハウが蓄積していきます。

またテストは継続的に行うことも大切です。前のテストで得られた結果を基に新たな仮説を立て、再度テストを繰り返すことで、WEBサイトのパフォーマンスは少しずつ最適化していきます。常に改善を行い、ユーザーの行動や市場の変化に対応し、最適の状態を維持していきましょう。

A/Bテストの一般的な対象要素

A/Bパターンでどの要素を変えて検証するのかは、重要なポイントです。ここでは、よく実施される対象要素について解説します。

ファーストビュー画像

トップページの最上部に表示されるファーストビュー画像は、サイトに対するユーザーの興味に大きく影響を与えます。直帰率や滞在時間の検証を目的とする場合に、ファーストビュー画像のA/Bテストはおすすめです。

ページのタイトルやキャッチコピー

ファーストビュー画像と同じく、ユーザーがサイトに滞在し続けてくれるかを左右するのが、メインのテキストコンテンツです。テキストはビジュアル要素よりも直接的にユーザーの行動を誘導できるため、離脱率や滞在時間の検証を目的とする場合はもちろん、ファーストビューのクリック率検証にも適していると言えます。

アクションボタン

購入や問い合わせなどのアクションボタンも、コンバージョンに直結する重要な要素です。クリック率やコンバージョン率の検証を目的としたテストの場合に、検証対象にしてみましょう。アクションボタンには大きさ・色・テキスト内容など複数の要素が含まれるので、それぞれの要素も併せて比較すると、より信頼できるデータが得られます。

コンバージョンに近いページ

カートや入力フォームなどのコンバージョンに近いページは、売上に非常に大きな影響をもたらすページです。デザインや入力項目などを改善を繰り返し検証することで、フォーム離脱率やカゴ落ち率の低下を図ることが期待できます。

A/Bテスト結果の分析と改善点の導き方

A/Bテストでは一定の期間中に得られたデータをベースに、ランディングページやECサイトなどの効果を比較しますが、どのパターンが有効かを正しく判断するためには、正しい分析方法や、改善策の導き方を理解する必要があります。 ここでは、A/Bテスト結果の分析と改善点の導き方について解説いたします。

CVRや直帰率の指標を正しく理解する

サイト訪問数に対する成約率を示す「CVR」を出す際には
・CV数をPVで割る
・CV数をUUで割る
という2通りの方法がありますが、A/Bテスト結果を正しく分析するためには、CV数を「PV」ではなく、「UU」で割って導きだしましょう。

「PV」は総閲覧数を表しているので、サイトへの訪問者が一人であっても閲覧するごとにカウントされるので、必要以上に分母が大きくなりデータの信憑性が低くなります。よってCVRの計算には、「UU」を使ったほうがより正確な判断につながります。

「直帰率」とは、そのページから始まったセッションにおいて、そのページが最後のページだった割合のこと。文字通り、ページを訪れたユーザーが他ページへ移ること無く直帰してしまった割合を指します。 直帰率が高い場合、A/Bテストを通じてユーザーが離脱してしまった原因を分析しましょう。

有意差が出ない前提でテストを実施する

一般的には、A/Bテストを実施しても結果に明らかな違いが出るのは3割程度と言われています。
7割はテスト結果に有意差が見られず、優劣がつけられないまま終わってしまうわけです。

しかし明らかな違いが結果として得られないといって、テスト期間を単純に期間を延長しても、明らかな違いを得られるとは限りません。有意差が出ないという結果を踏まえて、新たな仮説を立て、次のテストプランへと進むなど、PDCAを回すことを優先しましょう。

小さな改善の積み重ねが大きな成果を生む

テストの結果が出た後は、結果に対する検証を行い方策を考え実施することが必要ですが、打った手が上手くいったかなどの結果を見るだけでなく、テスト実施前の仮説を改めて振り返り、仮説が正しかったのか、間違っていたとしたらどの点なのかを検証しましょう。

その考察から、次のテストに繋がる仮説が生まれてきます。A/Bテストの結果が良かったのなら、さらに他のパターンとの比較をすることで、ますますの改善が期待できますし、悪かったとしても、結果を踏まえて練り直したテストをすれば、より確実に改善効果が期待できます。

たとえ一度のテストで効果がなかったとしても、そのテストは無駄ではなく、諦める必要はありません。A/Bテストを繰り返して、小さな改善を積み重ねていくことによって、全体の成果に大きなインパクトを与えるようになっていきます。

【まとめ】A/BテストでECサイトのコンバージョン率を改善する方法

A/BテストはWEBサイトなどの改善を目的としたテストの手法で、ECサイトにおけるA/Bテストでは、
画像やテキスト、バナーやボタンの位置などが異なる2パターンのページを用意し、どちらのほうがクリック率やコンバージョン率などの成果が上がるのかを検証します。

テストを実施することで、サイトの制作者の感覚やセンスに依存することなくECサイトを顧客目線で改善することが可能になります。有意義な結果を得るためには、実施前にテストの目的を具体的に設定、
さらに自社ECサイト上のユーザー行動をきちんと分析し、どこがボトルネックになっているかの仮説を立てることが重要です。

こうした前提のもとA/Bテストを繰り返し、小さな改善を積み重ねていくことによって、全体の成果に大きなインパクトを与えるようになっていきます。なおA/Bテストツールには簡単に設定できるサービスが多いので、マーケティングの専門家でなくとも取り組むことができます。

そのため、自社内で運用している企業も少なくありません。しかし前述の通り、A/Bテストは長期的に継続することで少しずつ効果を上げていくものなので、忍耐強く地道に続けていく必要があります。
社内運用では負担が大きすぎる場合は、社外の専門家に委ねるのも一つの方法です。

ルビー・グループでは、ヒートマップやA/Bテストなどを駆使し、ユーザーが求めている「使いやすいEC」の検証・分析を行っています。定量的・定性的な分析により、ユーザーの満足度やコンバージョン率を高めることが可能ですので、ECサイトの構築や改善でお悩みの方は、ぜひご相談ください。

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この記事を書いた人

ルビー・グループ コーポレートサイトチーム

各分野の現場で活躍しているプロが集まって結成されたチームです。
開発、マーケティング、ささげ、物流など、ECサイトに関するお役立ち情報を随時更新していきます!

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