LTV ECで売上最大化!計算方法と効果的な施策

2025.12.12

2025.12.12

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LTV ECで売上最大化!計算方法と効果的な施策
昨今、EC事業を担当されている方の中には、「広告費高騰や新規顧客獲得の難しさから、従来の集客施策だけでは売上拡大が困難になっている」「顧客の購買データや行動データはあるものの、それをLTV向上にどう活かせばいいかわからない」という方は、日に日に増えているのではないでしょうか。

本記事では、LTV ECの重要性や計算方法やLTVを高めるための指標、ECで実践すべき3つの施策、成功事例などをご紹介します。

「LTVを向上させるための具体的な施策(マーケティング、商品開発、CRMなど)の事例や手法を知りたい」という方はもちろん、「LTVの向上施策を実行したものの、効果が出ない理由を知りたい」という方も、ぜひご一読ください。

LTV ECとは?重要性・計算方法・LTVを高めるための指標

LTV ECとは?重要性・計算方法・LTVを高めるための指標

LTVは「Life Time Value(ライフ・タイム・バリュー)」の略で、日本語では「顧客生涯価値」と訳される、マーケティングにおける重要な指標の一つです。LTVの基本的な定義・目的・重要性は以下の通りです。

LTVの定義
一人の顧客が、その企業と取引を開始してから終了するまでの期間(生涯)に、その企業にどれだけの利益をもたらすかを表す指標です。

LTVの目的
顧客一人ひとりの長期的な価値を数値化することで、マーケティング戦略や経営判断の精度を高め、持続的な収益の最大化を目指すために活用されます。

LTVの重要性
新規顧客の獲得が難しくなっている現代において、既存顧客との関係を深め、継続利用を促すことの重要性を示す指標として注目されています。顧客ロイヤリティ(愛着や信頼)が高いほど、LTVは高くなる傾向があります。

EC事業においてLTVが重要視されるようになった背景には、主に以下の3つの大きな変化があります。

①新規顧客獲得コスト(CAC)の高騰

これがLTVを重視する最大の理由です。

競争の激化
EC市場への参入が増え、競合他社が非常に多くなった結果、顧客の奪い合いが激化

広告費の高騰
広告媒体(Google、SNSなど)の競争入札が進んだ結果、新規顧客を獲得するための広告単価(CPA/CAC)が年々上昇し続けている

「1:5の法則」の再認識
一般的に「新規顧客の獲得コストは、既存顧客の維持コストの5倍かかる」と言われています。獲得コストが利益を圧迫し始めているため、一度獲得した顧客を離さない「リテンション」戦略が不可欠に

②デジタル技術の進化とデータ分析の容易化

LTVを実際に「測れる」ようになったことも重要な要因です。

データ基盤の整備
CRM(顧客関係管理)やMA(マーケティングオートメーション)などのツールが普及し、顧客一人ひとりの購買履歴、閲覧履歴、行動データを詳細に収集・分析することが容易に。

LTVの「見える化」
昔は概念的だったLTVが、具体的な数値として正確に算出・予測できるようになり、経営指標として活用されることに

パーソナライゼーションの発展
データに基づき、顧客の好みや購買ステージに合わせた最適な情報(おすすめ商品、クーポンなど)を提供できるようになったため、リピート購入を促しやすくなった

③サブスクリプションモデルの普及と市場の成熟

ビジネスモデル自体の変化もLTVの重要性を高めたと言えるでしょう。

サブスクリプション(継続課金)の浸透
ECにおいても、日用品やコスメ、食品などで定期購入(サブスク)モデルが増加。このモデルでは、解約率の低さがそのままLTVの高さに直結するため、LTVが最重要指標に

長期的な収益の安定化
新規獲得に頼る「売り切り型」ビジネスは売上が不安定になりがち。LTVが高い顧客が増えるほど、リピートによる安定した収益基盤が確立され、事業の健全性がアップ

LTVの基本的な計算方法(一例)

LTVの計算方法はビジネスモデルによって様々ですが、最もシンプルで一般的な計算式の一つは以下の通りです。

LTV = 平均購入単価×平均購入頻度×継続期間

より厳密には、収益率や顧客獲得・維持にかかるコストを考慮に入れる場合もあります。

LTV =(平均購買単価×収益率×購買頻度×継続期間)− (新規顧客獲得コスト+既存顧客維持コスト)

LTVを高めるためには、上記の計算式の要素である「平均購買単価」「購買頻度」「継続期間」を向上させ、「コスト」を削減することが重要になります。

LTVを高める!ECで実践すべき3つの施策

LTVを向上させるための施策は、LTVの基本的な計算式を構成する「平均購買単価」「購買頻度」「継続期間」をいかに高めるか、そしてコストをいかに下げるかに焦点を当てて実行することが必須です。

ここでは、この3つの要素と顧客維持の視点から、EC事業において特に効果的かつ具体的な施策をご紹介します。

(1)「平均購買単価(客単価)」を向上させる施策

一度の購入で顧客が支払う金額を増やし、売上を向上させます。

アップセル(Up-sell)
現在検討している商品より、高価格・高機能のグレードアップした上位モデルや関連製品の購入を提案
例:エントリーモデルの購入者に対し「より大容量で長く使えるプロモデル」をレコメンド

クロスセル(Cross-sell)
検討中の商品と関連性の高い商品やオプションを、同時に購入するよう提案
例:カメラ本体の購入者に対し、「専用ケース」や「予備バッテリー」をセットで提案

送料無料ラインの設定
「あと〇〇円の購入で送料無料」といった特典を設定し、顧客が意識的にカゴに入れる商品点数を増やすよう動機付け

セット販売/バンドル販売
複数の商品を組み合わせた「お試しセット」や「コンプリートパック」を設定し、単品購入よりもお得感を出す

(2)「購買頻度(リピート率)」を高める施策

顧客がより短いサイクルで、より多くの回数購入するように促します。

購入後のリマインドメール
消耗品や期限付き商品の場合、顧客の使用サイクルを予測し、適切なタイミングで「そろそろ〇〇が切れる頃です」という再購入を促すパーソナライズされたメールを配信

限定クーポン/ポイント付与
初回購入後や特定期間の経過後に、次回購入で使える割引クーポンやポイントアップの特典を付与

定期購入(サブスクリプション)の導入
定期的に消費する商品(例: サプリメント、コーヒー豆、日用品)に定期購入プランを設け、継続的な利用を仕組み化

パーソナライズド/レコメンド
購買履歴や閲覧履歴に基づき、その顧客の興味に合った商品をサイトやメールで提案し、購入のきっかけを作る

(3)「継続期間(顧客ロイヤリティ)」を延ばす施策

顧客との関係性を強固にし、他社への離脱を防ぎ、長期的なファンになってもらいます。

会員ランク制度の導入
累積購入金額や購入回数に応じて顧客をランク分けし、上位ランク顧客に「送料無料」「限定商品への先行アクセス」「専任サポート」などの特別な特典を提供

充実したアフターフォロー
商品の使い方マニュアルの同梱、購入後のサンクスメールや使用感のヒアリングメール、FAQの充実化など、顧客体験(CX)を向上

ユーザーコミュニティの構築
ブランドファンが集まるSNSグループやオンラインコミュニティを作り、顧客同士、または顧客と企業が交流できる場を提供することで、ブランドへの愛着(ロイヤリティ)を高める

ブランドストーリーの発信
単に商品を売るだけでなく、企業や商品の開発ストーリー、込められた想いなどを発信し、顧客の共感を喚起

LTV向上に不可欠な顧客データの分析と活用法

LTVを向上させるためには、顧客データを適切に分析し、施策に活用することが不可欠です。以下では、主要な分析手法と、それに基づいた活用法について解説します。

LTV向上に不可欠な顧客データ分析法

LTV向上のための分析では、顧客の「質」と「行動」を把握することに重点が置かれます。

RFM分析(Recency, Frequency, Monetary)

RFM分析は、既存顧客を優良度に応じてランク付けするための、最も基本的かつ強力な手法。

以下の3つの要素を組み合わせてスコアリングし、顧客を「優良顧客」「一般顧客」「休眠顧客」などにセグメント(分類)します。

「R」(Recency:最終購買日)
最後にいつ購入したか→最近購入した顧客ほど、再購入の可能性が高いと判断

「F」(Frequency:購買頻度)
一定期間内に何回購入したか→購入頻度が高い顧客ほど、ブランドへの定着度が高いと判断

「M」(Monetary:累積購買金額)
一定期間内にいくら購入したか→累積金額が高い顧客ほど、LTVへの貢献度が高いと判断

コホート分析(Cohort Analysis)

コホート分析は、特定の共通点を持つ顧客グループ(コホート)の行動を経時的に追跡する手法です。

<コホートの例>
「2024年1月に初回購入した顧客グループ」「特定プロモーション経由で入ってきた顧客グループ」など

分析の目的
初回購入からnヶ月後のリピート率や解約率の変化を把握する

活用例
施策Aを適用したコホートと、施策Bを適用したコホートを比較することで、どの施策が顧客の長期的な定着に効果があったかを検証する

CPM分析(Customer Portfolio Management)

コホート分析をさらに発展させ、顧客を「購入回数」と「累積購入金額」の2軸で分類し、顧客ポートフォリオ(資産)として捉える分析です。

活用例
「離脱予備軍(購入回数が少なく、金額も低い)」「優良顧客(購入回数も金額も多い)」「一見客(購入回数は少ないが、金額は高い)」など、顧客をグループに細分化し、現状と課題を明確に

分析結果の具体的な活用法

上記の分析で顧客をセグメント分けしたら、それぞれのグループの課題に合わせてLTV向上施策を実行します。

優良顧客(R, F, Mすべて「高」)の場合
特別セールへの先行招待、限定ギフト、高単価商品のアップセル→継続期間の最大化と平均単価の向上へ

新規顧客(R「高」、 F, M「低」)の場合
丁寧な使い方ガイド、2回目限定割引クーポン、購入後1週間以内のレビュー依頼→購買頻度(リピート率)の向上へ

休眠顧客(R「低」、F, M「中〜高」)の場合
パーソナライズされた休眠掘り起こしメール(過去購入品に合わせた提案)、期間限定の強力な割引→継続期間の再開へ

一見客(R, F「低」、M「高」)の場合
定期購入など継続利用のメリットを訴求、ブランドロイヤリティを高める情報を提供→
購買頻度の向上へ

LTV ECの成功事例と次のステップ

LTV向上には「購入の手軽さ」「購入の喜び」「購入の継続的な動機」を提供することが重要です。以下では、LTV ECに成功した企業の具体的な事例をご紹介します。

定期購入モデルの柔軟性とCRM強化によるLTV向上

ECにおけるLTV向上の王道は、定期購入(サブスクリプション)の継続率を高めることです。

【企業名】
ソロフレッシュコーヒーシステム株式会社(UCCドリップポッドストア)

【施策のポイント】
定期購入の柔軟性向上とCRM施策の強化

【LTV向上の仕組み】
・利便性向上
ユーザーが自分のライフスタイルに合わせて、購入回数やサイクルを自由に設定できる機能(頒布会のUI/UX改善)を導入し、無理のない継続を可能に

・パーソナライズ
顧客の購入データや属性情報に基づくセグメント配信によるメールマーケティングを実施し、最適な商品提案や情報提供を実現

⇒「定期購入の手軽さ」だけでなく「解約されにくい柔軟性」と、「顧客に合わせた情報提供」がLTV向上に繋がります。

体験価値の提供による継続率の維持

単なる商品の販売ではなく、付加価値を提供することで顧客の「ワクワク感」を持続させ、継続期間を延ばした事例です。

【業界例】
食品ECサイト(サブスク型/詰め合わせボックス)

【施策のポイント】
定期便に「楽しみ」を創出

【LTV向上の仕組み】
・サプライズ要素
毎月テーマやラインナップが異なる詰め合わせボックスを提供し、「次は何が届くのだろう?」という期待感を持たせる

・コンテンツ提供
加入者には「今月の特別レシピ」や「商品開発ストーリー」を配布し、商品への興味や愛着を増大させてチャーン率(解約率)を抑制

⇒「商品+情報・体験」を提供することで、顧客がサービスを続ける理由を作り、単品販売よりも年間売上を大きく伸ばします。

会員ランク・コミュニティによるロイヤリティ強化

LTVの「継続期間」を伸ばすには、顧客をファン化させることが最も重要です。

【企業名】
Nike(NikePlus)

【施策のポイント】
会員制度(ロイヤリティプログラム)の展開

【LTV向上の仕組み】
会員にのみ限定商品やセール情報、イベントの先行予約権などの特別な特典を与え、ブランドへの帰属意識を高める

⇒顧客を単なる購入者ではなく「コミュニティの一員」にすることで、ブランドへの愛着(ロイヤリティ)を最大化し、長期的な関係性を築くことに成功します。

なお、LTV向上施策を始める際の優先順位付けは、「現状の事業課題」と「施策の投資対効果(ROI)」に基づいて決定することが重要です。

まず、自社のLTVが低い原因が、「平均購買単価」「購買頻度」「継続期間」のどこにあるのかを特定。

課題が特定できたら、それぞれの施策を「効果の大きさ」と「実行の難しさ」の2軸で評価し、優先順位を決定します。

最後に、LTV向上施策の目標設定において、「顧客獲得コスト(CAC)」を意識することが非常に重要です。LTV > CACの状態を常に維持し、LTVがCACの3倍以上になることを目指しましょう。

まとめ

EC市場は年々競争が激しくなり、新規顧客の獲得コスト(CAC)が高騰しています。そのため、既存顧客にリピート購入してもらい、長期にわたって関係を維持する戦略が、EC事業の持続的成長には不可欠となっています。

EC事業は、短期的な売上を追うフェーズから、いかに長く、顧客と良好な関係を築き、生涯にわたって取引を継続してもらうかという「リテンション・マーケティング」が成功の鍵となるフェーズへと移行。LTVは、その長期的な視点での事業の成功を測るための中心的な指標なのです。

ルビー・グループでは、データに基づいて顧客を理解し、適切なタイミングで自動的にアプローチすることで、EC事業におけるLTVの最大化を強力に後押しする各種ソリューションをご用意しています。LTV ECでお困りのことがあれば、ぜひお気軽にご相談ください。

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この記事を書いた人

ルビー・グループ コーポレートサイトチーム

各分野の現場で活躍しているプロが集まって結成されたチームです。
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