
本記事では、セキュリティ・拡張性で大きく進化したEC-CUBEの最新版「Ver.4.3.1」について解説しています。
「EC-CUBEの最新バージョンの特徴や新機能を知りたい」という方はもちろん、「プラグインやカスタマイズの互換性はどうなっているのか」「将来的な拡張性や運用コストを比較したい」という方も、ぜひご一読ください。
EC-CUBE最新バージョン(Ver.4.3.1)の概要

【リリース日】
2024年7月29日
【対応環境】
フレームワークを最新の Symfony 6 に、PHPを PHP 8.3 以上にアップデート。これにより、システムの安定性とセキュリティが向上し、より長く安心して利用できる基盤を構築
【主な追加機能】
・マーケティングおよび売上UP機能:Googleアナリティクスの設定機能、新着商品ブロックの商品を動的に表示する機能など
・運用効率UP機能:メールテンプレートの新規登録・削除機能、規格・規格分類情報のCSV入出力機能など
【主な改善点】
・パフォーマンスの向上:大規模なデータの処理速度が改善され、ECサイトの表示速度が向上
・カスタマイズ性の向上:EC-CUBEの特徴である購入フローのカスタマイズがより柔軟に行えるよう、機構が改善
・開発互換性の維持:EC-CUBE 4.2との互換性を保つように設計されており、4.2/4.3の両バージョンでプラグインを動作させることが可能に
【セキュリティ強化内容】
・パスワードのハッシュアルゴリズムの改善:より安全なアルゴリズムにアップデート
・スロットリング機能:総当たり攻撃などを防ぐための機能
・重要操作時のメール通知機能:重要な操作が行われた際に管理者へ通知する機能
・フロント画面のIPアクセス制限:アクセス元IPによる制限機能
・デバッグモード/メンテナンス状態の通知:管理者が安心してサイト更新ができるよう、これらの状態を通知する機能
・多要素認証プラグインの登場(SMS認証やアプリ認証が可能に)
【その他トピック】
・Amazon Payを標準搭載:EC-CUBEでAmazon Pay導入時に必要だった煩雑な設定作業が不要となり、月額5,000円の固定費も無償化
・法的要件への対応:インボイス制度や改正特定商取引法への対応(4.2系以降で対応)が継承
以上のように、EC-CUBE Ver.4.3.1は、基盤技術を最新化し、安定性、セキュリティ、利便性を向上させたバージョンであり、新規構築や4.2系からのバージョンアップが推奨されています。
最新版へのアップデートで得られるメリット
EC-CUBE Ver.4.3.1へのアップデートは、単なる機能追加に留まらず、ECサイトの「安全性」「持続可能性」「売上拡大」という3つの側面で大きなメリットをもたらします。
特に、旧バージョン(4.2系やそれ以前)からのアップデートで得られる主なメリットは以下の通りです。
サイト運営の「安全性・持続可能性」の向上(最も重要)
EC-CUBE Ver.4.3.1は、EC-CUBE 4系の中で「最も安心・安定して利用できるバージョン」と位置づけられています。
・セキュリティの大幅強化
パスワードのハッシュアルゴリズムの改善、スロットリング機能(不正ログイン対策)、重要操作時のメール通知機能、フロント画面へのIPアクセス制限など、多岐にわたるセキュリティ対策が標準で追加されます。これにより、ECサイトの安全性が飛躍的に向上します。
・技術基盤の長寿命化
フレームワークが Symfony 6、PHPが PHP 8.3 以上にアップデートされます。これにより、ミドルウェアのサポート切れ のリスクを回避し、将来的なセキュリティパッチや新しいプラグインの恩恵を長く受けられるようになります。
・パフォーマンスの改善
データベースクエリの最適化やキャッシュ機能の強化により、大規模なデータ処理でもサイト表示速度が向上し、ユーザー体験が改善されます。
EC事業の「売上・運用効率」の改善
ECサイトの売上向上と、日々の運用負荷軽減に直結する以下の機能が追加されています。
・マーケティング・データ連携強化
管理画面から Googleアナリティクスの設定 が容易に行えるようになり、分析環境への連携がスムーズになります。
・コンテンツ訴求力の向上
新着商品ブロックの商品を動的に表示する機能 の追加により、訪問者に対して常に鮮度の高い情報を提示でき、訴求力の高いページ構築が可能です。
・管理者業務の効率化
メールテンプレートの新規登録・削除機能 や、規格・規格分類情報のCSV入出力機能 の追加により、これまで煩雑だった管理業務の工数を削減できます。
「拡張性・カスタマイズ性」の向上
EC-CUBEの強みであるカスタマイズ性がさらに強化されています。
・購入フローの柔軟なカスタマイズ
ECサイトのコンバージョンに直結する購入フロー(カート〜注文完了)について、カスタマイズ機構が改善され、より柔軟で自由度の高い独自の購入体験を実現しやすくなりました。
・プラグイン開発の互換性
4.2系との互換性が維持されているため、4.2向けに開発されたプラグインも比較的スムーズに対応でき、機能拡張を継続しやすくなります。
このように、Ver.4.3.1へアップデートを行うことで、ECサイトは最新のセキュリティレベルを維持しつつ、より高いパフォーマンスで、より多くの機能拡張を行い、長期的に安定した事業成長を目指すことが可能になります。
アップデート時の注意点とリスク
EC-CUBE Ver.4.3.1へのアップデートは多くのメリットをもたらしますが、予期せぬトラブルやサイト停止といったリスクを避けるために、いくつかの重要な注意点を理解しておく必要があります。
アップデート時の最大のリスクは、「カスタマイズやプラグインの非互換性によるサイトの機能不全・停止」です。
また、現在のバージョンによっては、一からサイトを構築するのと同等の工数がかかる場合がありますので、注意が必要です。EC-CUBE Ver.4.3.1へのアップデート時の注意点とリスクは以下の通りです。
事前準備
・バックアップの不備データベースとEC-CUBEインストールディレクトリ全体の完全なバックアップを必ず取得してください。失敗した場合のデータ損失リスクがあります。
・テスト環境での未検証
本番環境で直接アップデートを行うと、問題が発生した場合に即座にサイト停止につながります。必ずテスト環境(ステージング環境)で十分な検証を行ってください。
互換性
・プラグインの非互換性
導入済みの全てのプラグインがEC-CUBE Ver.4.3.1に対応しているか、オーナーズストアや開発元に確認が必要です。非対応プラグインは、機能しない、サイトがエラーで停止するといったリスクがあります。
・独自カスタマイズの非互換性
コアファイルを直接編集したり、独自の機能を追加している場合、新しいバージョン(Symfony 6やPHP 8.3)の仕様変更により、機能が動作しなくなるリスクが非常に高いです。コードの再調整(マイグレーション)が必須となります。
システム環境
・PHP/ミドルウェアのバージョン
サーバーのPHPバージョンをEC-CUBE Ver.4.3.1の要件である PHP 8.3 などにアップグレードする必要があります。もし現在PHP 7.x系などで動作している場合、プログラムコード(特に非推奨となった記述)の修正が必要となり、動作しないリスクがあります。
・パスワードハッシュアルゴリズムの変更
Ver.4.3.1では新しいアルゴリズムが採用されています。アップデート時に自動でデータが更新されますが、万が一のトラブルに備え、データベースのバックアップが重要です。
機能面
・デザインの崩れ
標準テーマやカスタマイズしたテーマを使用している場合、EC-CUBE本体のテンプレート(Twig)やCSSの構造変更により、デザインが崩れる可能性があります。テスト環境でのフロント画面の確認が必要です。
・利用できなくなった機能
過去のバージョンで標準搭載されていた機能(例:ダウンロード商品、メルマガ機能、一部の売上集計機能など)は、EC-CUBE 4系以降ではプラグイン化されている場合があります。これらの機能を引き続き利用するには、対応するプラグインを導入する必要があります。
アップデートを成功させる進め方
EC-CUBE Ver.4.3.1へのアップデートを成功させるためには、徹底した「事前準備」と「テスト検証」が鍵となります。特に4.2系からのアップデートは手動での手順が基本となるため、確実なロードマップに沿って進めることが重要です。
ここでは、アップデートを成功させるための具体的なロードマップをご紹介します。アップデート作業は、大きく「準備フェーズ」「実行フェーズ」「検証フェーズ」の3つのステップで構成されます。
【フェーズ 1】徹底的な事前準備
このフェーズが、トラブルを防ぐための最も重要な土台となります。
1.1. 移行計画の策定
アップデートの対象範囲(コア、カスタマイズ、プラグイン)、作業担当者、スケジュール、本番切り替え日時を決定します。
サイト停止時間を最小限に抑えるため、余裕を持ったスケジュールを組みましょう。
1.2. システム要件の確認
サーバーのPHPバージョンが8.3以上、その他ミドルウェアが4.3の要件を満たしているか確認し、必要に応じてアップグレードします。
PHPのバージョンアップは、既存のコードにエラーを発生させる可能性があるため、特に注意が必要です。
1.3. テスト環境の構築
本番データ(データベース、アップロードファイル)をテスト環境にコピー。本番環境と全く同じ構成(サーバー環境、PHPバージョン、データベース)で新しいEC-CUBE 4.3のテスト環境を構築します。
1.4. プラグインの互換性確認
導入済みの全てのプラグインがEC-CUBE Ver.4.3.1に対応しているかを確認し、対応バージョンを準備します。
非対応プラグインは機能しないため、代替プラグインの検討や、独自改修の計画が必要です。
1.5. カスタマイズコードの整理
独自にカスタマイズしたファイル(特にコアファイルではないapp/Customize以下のファイル)を洗い出し、Ver.4.3.1のコードベースに移植が必要な箇所を特定します。
フレームワークの変更(Symfony 6)による影響を受ける箇所がないか確認しましょう。
【フェーズ 2】アップデートの実行とコードの移行
テスト環境で以下のステップを何度も繰り返すことで、手順を確立します。
2.1. 旧環境の最終バックアップ
最終作業前に、テスト環境(または本番環境)のファイルとデータベースの完全バックアップを取得します。失敗した際に確実に元の状態に戻せるようにします。
2.2. メンテナンスモードへの移行
ユーザーからのアクセスを遮断するため、管理画面からメンテナンスモードを有効にします。トラブル時のユーザー影響を防ぎます(本番切り替え時)。
2.3. EC-CUBE Ver.4.3.1 本体ファイルの更新
Ver.4.3.1のリリースノートに従い、手動でコアファイルを更新します(4.2からのアップデートは、自動アップデートプラグインがないため手動です)。カスタマイズしたファイルの上書きを防ぐよう、注意深くファイルを入れ替えてください。
2.4. データベースのスキーマ更新
コマンドラインなどから、EC-CUBEのマイグレーション(スキーマ更新)コマンドを実行し、データベースをVer.4.3.1の構造に合わせます。実行前にデータベースのバックアップを再確認しましょう。
2.5. カスタマイズ/プラグインの移植
準備フェーズで洗い出した独自カスタマイズやプラグインを、新しいVer.4.3.1環境に移植・再適用し、必要に応じてコードを修正します。PHP 8.3の非推奨機能を利用している場合などは、修正が必要です。
【フェーズ 3】徹底的な検証と本番公開
直接的に売上や顧客サービスに関わる部分なので、徹底的な検証をした上で公開しましょう。
3.1. 基本動作の確認
「管理画面ログイン」「商品登録/編集」「会員登録/編集」「受注処理」など、日々の運用に関わる全ての機能が正常に動作するか確認します。運用の根幹に関わる部分を最優先でチェックしましょう。
3.2. 重要な購入フローの検証
最も入念なテストが必要です。「商品検索・一覧表示」「カートへの追加」「決済方法選択」「注文完了(決済成功)」「注文確認メールの送信」など、一連の購入導線を検証。決済が正常に行われないと直接売上損失となるため、全決済方法での検証が必要となります。
3.3. デザイン・表示の確認
PC、スマートフォンなど複数のデバイスでサイト全体のデザイン崩れがないか、レイアウトが意図通りかを確認します。新しいテンプレート構造の影響を受けていないか確認しましょう。
3.4. 本番環境への切り替え
テスト環境での検証が完了次第、本番環境でフェーズ2の作業を実行し、メンテナンスモードを解除して公開します。サーバーのキャッシュクリアを忘れずに行いましょう。
3.5. 最終監視
公開後、数日間はエラーログやアクセス状況を重点的に監視し、予期せぬトラブルが発生していないかを確認しましょう。
まとめ
EC-CUBE Ver.4.3.1へのアップデートは、セキュリティリスクを最小限に抑えるために不可欠であり、また、ECサイトの利便性やマーケティング効果を高めることを可能とします。
しかし現在、EC-CUBE 2系や3系を利用している場合、Ver.4.3.1への移行は「バージョンアップ」ではなく「新規構築(リニューアル)」として進めることになります。この場合、EC-CUBE公式のデータ移行プラグインを活用しつつ、デザインやカスタマイズはゼロから作り直すことになり、専門の制作会社に相談するのが一般的です。
ルビー・グループでは、これまでEC-CUBEにて多くのオンラインストアを制作・運営しており、制作と運用実績に関しては豊富な情報量を持っております。 柔軟なカスタマイズ対応だけでなく、サイト開設後の運用やバージョンアップにおいても安定的にサポートをさせていただきます。EC-CUBEに関するご質問などあれば、ぜひお問い合わせください。
この記事を書いた人
ルビー・グループ コーポレートサイトチーム
各分野の現場で活躍しているプロが集まって結成されたチームです。
開発、マーケティング、ささげ、物流など、ECサイトに関するお役立ち情報を随時更新していきます!
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