
本記事では、ECサイトのリプレイス検討のタイミングから、リプレイスの流れと注意点、リプレイスを成功させるためのポイントなどについて解説しています。
「リプレイスを検討すべきタイミングを知りたい」「移行にかかる費用・期間・リスクを把握したい」という方はもちろん、「自社に最適なECプラットフォームを比較したい」「移行後の保守運用体制や拡張性について知りたい」という方も、ぜひご一読ください。
ECサイトをリプレイスする主な理由

ECシステムのリプレイスを検討する具体的な理由や目的は、大きく分けて以下の3点に集約されると言えるでしょう。
システム・技術的な課題の解決
現在のシステムが老朽化したり、最新の技術や環境に対応できなくなったりした際に、システムの根本的な問題を解消するためにリプレイスが行われます。
・セキュリティ強化とシステムの安定化
システムが古くなり、セキュリティ対策が不十分になったり、動作が不安定になったりする問題をリプレイスにより解消します。これは顧客の安全と信頼を守る上で最も重要な施策の一つです。
・処理速度の限界とパフォーマンス向上
売上やアクセス数の増加に伴い、既存システムでは処理速度が追いつかなくなった際に、システムのスペックやアーキテクチャを刷新し、パフォーマンスを根本的に改善します。
・ランニングコストの削減
古いシステムやカスタマイズが複雑化したシステムの運用・保守にかかるコストを、新しいプラットフォームへ移行することで削減します。
事業成長・機能面の強化
ビジネスの拡大や市場の変化に対応するため、現行システムでは実現できない新しい機能の導入や拡張性の確保を目的にリプレイスが行われます。
・機能の不足・拡張性の確保
「欲しい機能がない・使いたい機能がない」ことがリプレイスの大きな理由の一つです。特に、「マーケティング機能、分析機能、CRM(顧客管理)機能の強化」「定期通販に特化した機能の導入」のような、事業成長に必要な機能の導入をリプレイスにより実現します。
・オムニチャネル・OMOの実現
実店舗や他のチャネルとの連携(顧客情報、在庫データ、ポイント連携など)が既存システムでは困難な場合に、新しいプラットフォームでオムニチャネル戦略を推進し、顧客体験を向上させることを目指します。
・外部システムとの連携
基幹システム(ERP)、POSシステム、倉庫・在庫管理システムなど、自社の多様な外部システムとのスムーズなデータ連携を実現するためにリプレイスを行います。
ユーザー体験(UI/UX)と運用面の改善
顧客にとっての使いやすさや、社内スタッフにとっての運用効率を向上させることも重要な目的です。
・UI/UXの改善とデザインの刷新
サイトのデザインが古くなったり、モバイル対応が不十分だったりする場合に、最新のデザインやユーザビリティを取り入れ、購入率の向上を目指します。
・管理画面の使いやすさ
日々の商品登録や受発注管理など、管理画面の操作性が悪く運用に支障が出ている場合に、管理画面を刷新して業務効率を改善します。
リプレイスの検討タイミングを見極める
ECサイトのリプレイスは、多大なコストと労力がかかるため、単に「古いから」という理由ではなく、「今のシステムでは事業の成長が阻害されている」という明確な課題が見えたときが、検討を見極めるべきタイミングです。
主な見極めのポイントは、「システム寿命」と「ビジネス課題」の2つの側面から判断できます。
システム・技術的な限界(寿命による見極め)
ECサイトのシステム(サーバーを含む)は、一般的に5年程度でリプレイスを検討すべき時期に入ると言われます。これは、物理サーバーの法定耐用年数(5年)や、技術の陳腐化、保守切れの時期が目安となるためです。
診断ポイントと、それぞれの具体的な兆候・現象は以下の通りです。
・システム(サーバー)の老朽化
導入から5年以上経過している。OSやハードウェアのサポート切れが近づいている。
・セキュリティリスク
最新のセキュリティ基準(PCI-DSSなど)に準拠できない。脆弱性への対応に時間と費用がかかりすぎる。
・パフォーマンスの限界
サイトの表示速度が遅い、セール時などにサーバーが頻繁にダウンする、または重くなる。
・運用コストの悪化
月額保守費や追加開発費が年々膨れ上がり、費用対効果が悪化している。
・カスタマイズの限界
過去の複雑なカスタマイズにより、ちょっとした改修にも莫大なコストや時間がかかる。
事業・ビジネス的な課題(成長阻害による見極め)
現在のシステムが、事業目標の達成や競争優位性の確保の足かせになっている場合は、リプレイス検討のタイミングと言えるでしょう。
診断ポイントと、それぞれの具体的な兆候・現象は以下の通りです。
・機能不足
新しいマーケティング施策(例:SNS連携、高度なCRM、定期購入機能など)を導入したくても、現在のシステムでは機能がない、または実現できない。
・売上・成長の停滞
売上が伸び悩んでいる、または売上規模の拡大に対し、システムのスペックや機能が追いついていない。
・運用効率の低下
管理画面が使いにくい、基幹システムやPOSシステムとの連携が手動で非効率など、日々の運用業務に支障が出ている。
・顧客体験(UX)の悪化
サイトのデザインが古く、ブランドイメージに合わない。スマートフォンへの対応が不十分で、ユーザーの利便性が低い。
・オムニチャネル対応の遅れ
実店舗との顧客・在庫・ポイント情報の一元管理が実現できない。
リプレイスは、単に問題を直すだけでなく、「将来的にどういうECサイトにしたいか」という目標を達成するための手段です。上記のような問題が「現行システムの枠内での改修では根本的に解決できない」と判断できたときに、リプレイスを本格的に検討するタイミングとなります。
リプレイスの流れと注意点
ECサイトのリプレイスは、計画から開発、移行、公開まで、通常半年から1年以上かかる大規模なプロジェクトになります。以下で必要なステップと、その内容について解説いたします。
ECサイト リプレイスの主な流れ
ステップ① 現状分析と目的の明確化
現行システムの「課題」と「長所」を洗い出す。リプレイス後の目標(売上目標、業務効率化目標など)を具体的に定め、リプレイスの目的を社内全体で共有することで、プロジェクトの判断基準を確立する。
ステップ② 要件定義とシステム選定
新システムに必要な機能要件(何を実現したいか)と非機能要件(セキュリティ、パフォーマンスなど)を詳細に定義する。複数のベンダーに提案依頼書(RFP)を提示し、最適なシステムとベンダーを選定する。
ステップ③ 開発とデザイン構築
新しいシステム環境での構築、デザイン、外部システム(基幹システム、POSなど)との連携開発を進める。
ステップ④ テストとデータ移行
開発したサイトで、受け入れテスト(動作検証)と負荷テストを実施。最も重要な顧客・受注・商品データを新システムへ移行する計画を立て、テスト環境で実行することで、システムの品質を担保し、顧客データや取引履歴を安全に引き継ぐ。
ステップ⑤ リリースと運用開始
新旧システムを切り替える(サービス停止期間を最小限に)。URLのリダイレクト設定(SEO対策)を行う。公開後は不具合がないか監視し、迅速に対応する。
ECサイト リプレイスの重要な注意点
ここで特に失敗につながりやすいポイントと、その対策について解説します。
・目的が曖昧なまま進めてしまう
「とにかく古くなったから」ではなく、「リプレイス後に購入率をX%向上させる」「運用工数をY時間削減する」といった具体的な目標を明確にすることが必要です。
・現場の意見を無視してしまう
現場の運用担当者やカスタマーサポート部門など、多くのメンバーから現在の運用フローの課題や「無意識に使っている長所」をヒアリングし、要件定義にしっかり反映しましょう。
・機能の絞り込みをしないまま進める
予算やスケジュールの都合で、全てを新システムで実現するのは困難です。目的達成に必須な機能に優先度をつけ、「やらないこと」を決断する勇気を持ちましょう。
・売上規模に合わないプラットフォーム選定をしてしまう
自社の売上規模に合わせてプラットフォーム(Shopify、Commerce Cloud、EC-CUBE など)を選定しましょう。
・ベンダー任せにしてしまう
開発はベンダーが行いますが、ECサイトの責任者は自社です。開発中も主体的に情報共有し、定期的に動作確認を行うなど、リスクヘッジできる体制を構築しましょう。
リプレイスを成功させるためのポイント
ECサイトのリプレイスを成功させるためには、単なるシステム交換に終わらせず、事業成長のための戦略的なプロジェクトとして進めることが重要です。以下でリプレイス成功のための主要なポイントを、3つのフェーズに分けて解説します。
計画・戦略フェーズの成功ポイント
プロジェクトの目的とゴールを明確にする
リプレイスの最大の失敗原因は「何のためのリプレイスか」が曖昧になることです。
現行システムの課題だけでなく、無意識に使っている「長所」も徹底的に洗い出します。
ゴールを「システムを新しくする」ではなく、「リプレイス後1年で売上をX%増加させる」「運用コストをY%削減する」といった具体的な事業指標(KGI)で設定し、関係者全員で共有しましょう。
現場の「業務フロー」と「要件」を整理する
システム開発会社に依頼する前に、自社の業務を徹底的に整理します。現場の運用メンバー(受発注、CSなど)からヒアリングを行い、日々の業務フローやイレギュラーな対応をすべて文書化します。
この業務フローに基づき、新システムに必要な機能要件(何ができるか)と非機能要件(セキュリティ、速度、拡張性など)を詳細に定義します。
機能要件には優先度をつけ、予算やスケジュールに応じて「今回は見送る機能」を明確に決断する勇気を持ちましょう。
ベンダー選定は「相性」と「実績」で判断する
システム選定では、機能や費用だけでなく、自社の業界特有の商習慣やシステム要件を理解しているか、リプレイスの実績が豊富かを確認します。
ベンダーを「開発の下請け先」として見るのではなく、事業成長を共にする「パートナー」として捉え、積極的に意見交換ができる関係性を築きましょう。
開発・実行フェーズの成功ポイント
データ移行計画を「最も重要なタスク」とする
データ移行は最も難易度が高く、失敗しやすい工程です。移行するデータ範囲(顧客情報、受注履歴、商品データなど)を明確に定義し、移行作業に要する時間を正確に測定することが必要です。
移行時の文字コードや日付フォーマットの不整合、データ欠損がないかをチェックリスト化し、テスト環境で複数回、慎重にテストを繰り返しましょう。
開発をベンダー任せにせず「受け入れテスト」を徹底する
開発中も主体的に情報共有に努め、定期的に開発途中の動作確認(中間レビュー)を行うことが重要です。リリース前の受け入れテストでは、PCだけでなくスマートフォンでの操作も念入りに行います。
また繁忙期を想定した負荷テストを実施し、アクセス集中時の安定稼働を確保しましょう。
SEO対策(リダイレクト設定)を確実に行う
リプレイスでサイトのURL構造が変わる場合、検索エンジンの評価を維持するために必須です。旧URLから新URLへの301リダイレクト設定を全ページに対して確実に行いましょう(特に流入の多いページ)。
さらにリニューアル後にサイトマップを更新し、検索エンジンに新しいサイト構造を正確に伝えることも忘れずに。
リリース・公開フェーズの成功ポイント
顧客への周知とフォローを徹底する
サイトデザインや機能が急に変わると、顧客は戸惑い離脱する可能性があります。
リプレイスの時期や、顧客の利便性が向上する変更点を事前にメルマガ、サイト内告知などで丁寧に周知しましょう。
リプレイスによって自動ログインが解除されたり、パスワードの再設定が必要になったりする場合は、その手順を分かりやすく案内し、必要に応じて再ログインを促すキャンペーン(ポイント付与など)を実施することが必要です。
リリース後の初期運用体制を強化する
公開直後は予期せぬ不具合や、顧客からの操作に関する問い合わせが増加しやすいものです。リリース後数週間は、サポートスタッフを手厚く配置し、問い合わせに迅速に対応できる体制を整えましょう。
また事前にFAQや操作ガイドを整備するなど、顧客の混乱を最小限に抑える準備をしましょう。
これらのポイントを押さえ、リプレイスを「新しい事業成長のスタートライン」と位置づけて進めることが、成功の鍵となります。
まとめ
ECサイトにおけるリプレイス(Replacement)」とは、「既存のECシステムやプラットフォームを、完全に新しいシステムに入れ替えて再構築すること」を意味します。
単にサイトのデザインやコンテンツを修正する「リニューアル」とは異なり、ECサイトの根幹となるシステム基盤そのものを刷新する、大規模なプロジェクトです。
その意味でリプレイスはコスト負担だけでなく成長戦略に直結する投資であり、専門パートナーの活用が成功の近道と言えるでしょう。
ルビー・グループは、ECサイトのリプレイスにおいて、戦略立案から構築、そしてリプレイス後の運用・成長までをワンストップで支援いたします。
特に、ハイエンドブランドや大規模ECサイトの支援実績が豊富で、技術的なリプレイスだけでなく、事業成長を見据えた多角的なサポート体制の構築が可能です。
ECサイトのリプレイスについてのご相談は、ぜひルビー・グループまでお願いいたします。
この記事を書いた人
ルビー・グループ コーポレートサイトチーム
各分野の現場で活躍しているプロが集まって結成されたチームです。
開発、マーケティング、ささげ、物流など、ECサイトに関するお役立ち情報を随時更新していきます!
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