2024.5.29

2024.6. 4

#物流

ECの物流とは?仕組みやよくある課題・改善策について解説

ECの物流とは?仕組みやよくある課題・改善策について解説
EC物流とは、オンラインショッピングにおける商品の保管・梱包・配送などの物流プロセスのことです。それと同時に、ECサイトの運営における、顧客満足度の向上や効率化、コスト削減などに欠かせない重要な要素でもあります。
しかし、ヒューマンエラーによる作業ミス、商品管理・物流コストの増加や人手不足など、多くの課題が存在し、改善が求められています。
本記事では、「ECサイトを新たに構築するので物流について知りたい」「ECの物流についての仕組みや、課題・改善策を知りたい」という事業者の皆様向けに、EC物流のプロセスや主な特徴、代表的な課題と改善ポイントについて解説をしています。EC物流のスムーズな運用を実現したい方は、ぜひご一読ください。

ECの物流とは?

ECの物流とは?

EC物流とは、ECサイトでの商品購入から配送までの一連のフロー、商品の入荷・オーダー管理・パッキング・配送・返品対応など、オンラインショッピングに関連する物流活動全般を指します。

 

ECサイト運営において、物流は以下の観点からきわめて重要な役割を担っていると言えます。

 

売上や顧客満足度に大きく関わる

日本では「早い・便利・安心」という配送サービスが当たり前になっていると言えます。その水準をクリアできないと、ECサイトのブランディングに悪影響を及ぼし、売上や顧客満足度に大きく関わります。

 

経営のコア業務に影響を及ぼす

EC物流を自社内で手がけると、日常的な業務負担がどうしても大きくなりがちです。その結果、戦略立案やマーケティングなどに集中できない、といった悪影響をもたらします。逆に、EC物流の業務を効率化できれば、EC事業のコア業務に集中できると言えます。

 

効率的な物流システムの構築が必須

ECの市場規模は右肩上がりでどんどん成長を続け、それに比例するかのように、配送量の増加や人員不足などによる「物流コスト」も増え続けています。 いかに効率的で安定した物流システムを構築できるかが、事業成功の鍵を握っていると言っても過言ではないでしょう。

 

EC物流の特徴5点

EC物流の特徴は、以下の5点に集約されます。

 

商品管理・物流コストは増加傾向にある

多くのECサイトはBtoCで一般消費者をターゲットにしているため、1件あたりに届ける商品の数量は少なく、配送先の数は多くなりやすい傾向にあります。

 

例えば、一日に合計で商品30個ぶんの注文が入ったとして、BtoBの場合なら、その配送先の内訳は1社か数社程度です。しかしBtoCの場合は、1個単位で配送先や注文商品がそれぞれ異なることがほとんど。

 

そのため、1件ずつ個別対応が必要となります。そこで悩みの種となるのが、梱包や商品管理にかかる労力と輸送コスト。とくに輸送コストは、配送ドライバーの人手不足もあって年々上昇の傾向にあり、経営を圧迫しつつあります。 輸送コストを劇的に圧縮するのは難しいぶん、商品の管理や、梱包・出荷業務などをいかに効率化するかが重要になります。

 

スピーディーな配送や受取方法の柔軟性が必要

ECサイトでショッピングをする際、翌日配送など、ユーザーは迅速な配送を強く求めます。スピーディーな配送を実現するためには、効率的な在庫管理、配送ルートの最適化、配送パートナーとの連携強化などが必要になります。

 

また、商品を受け取る方法として、直接手渡し以外にも、「置き配」「宅配ボックス」「通販専用宅配ロッカー」「コンビニ受け取り」など、柔軟に対応することも重要。あるオンラインショッピングに関する調査で、希望の受取方法が選べず購入を諦めた経験がある人が、30%以上もいるという結果が出ています。

 

購入に前向きなユーザーが途中で離脱しないよう、多様な受取方法に対応する必要があります。

 

ラッピングや同梱などの個別対応が欠かせない

じっくりと買い物に時間をかけられない忙しい現代では、ネットショッピングのプレゼント需要は年々高まっています。それに伴い、メッセージカードやオリジナルラッピング、個包装などのオプションを用意しているECサイトが増えています。

 

とくにクリスマスや母の日などのイベント時には、ラッピング業務が集中します。多様なラッピングや個別のオーダーに、スムーズに対応できる仕組み作りが欠かせません。

 

簡素かつ迅速な返品交換の対応も重要

リアル店舗と違い、ECサイトで買い物をする際は、商品そのものを直接見たり試したりすることはできません。そのため、商品が届いてから「イメージと違った」「サイズが合わない」などの理由で、返品になるケースはよくあります。実際、「ECの返品率は実店舗の3倍にのぼる」という専門家の声もあるほど。

 

それだけに、EC物流における返品や交換の対応は、顧客満足度とリピート購入に直結する重要な要素。ユーザーは、スムーズで手間のかからない返品・交換を期待するものです。

 

返品ポリシーを明確化するのはもちろんですが、返品・交換の手続きの簡素化と迅速な対応が必要です。また、返品や交換の理由をデータとして蓄積し、その分析を通じて商品の品質改善やサービスの向上を図ることも重要になります。

 

手厚いカスタマーサービスとコミュニケーションが鍵

ECサイト運営において、EC物流におけるユーザーとのコミュニケーションは極めて重要です。「注文の確認」、「配送状況のリアルタイム更新」、「返品・交換のサポート」など、ユーザーとのコミュニケーションを密に行うことで、顧客満足度を高めるだけでなく、リピート注文の獲得や、口コミによる新規顧客獲得につながります。

 

カスタマーサポートに関する人的リソースが限られている場合は、チャットボットやAIを活用した自動応答システムなども活用してみましょう。

 

EC物流の主な流れ

EC物流では、どのような仕組みで商品がユーザーの手元に届くのか。各プロセスごとの説明と、それぞれの効率化のコツを解説いたします。

 

入荷・検品

入荷・検品

ECサイトでは、アパレルや雑貨など多品種かつ小ロットの商材を扱うことが多いため、入荷時はケース数の間違いや棚入れミス、検品漏れなどが発生しやすいため、注意しましょう。


<効率化のコツ>

(1)入荷プロセス最適化 商品を効率よく倉庫内に収めるために、入庫伝票のデジタル化などをするなどして、迅速な入荷を行うことが大切です。

(2)検品の質向上 検品作業は、目視などアナログな手法だけでなく、AIを活用した自動検品システムを導入すれば、高精度かつ効率的な検品が可能です。

 

保管 検品

保管 検品

入荷した商品を決められた場所に保管しますが、扱う商材の大きさ、種類、SKUの多さ、返品の頻度等に応じたロケーション管理を徹底していない場合、保管効率や作業効率が悪くなるので注意してください。

 

<効率化のコツ>

(1)計画的な棚割り たとえば回転の早い商品を出し入れしやすい位置に配置することで、ピッキング効率を向上させることができます。商品の特性(サイズ、重量、頻度など)に基づいて、棚割りを計画的に行いましょう。

(2)在庫ロケーション管理のシステム化 多品種の商品を大量に扱う場合は在庫管理が複雑化するので、在庫ロケーション管理システムの導入を検討してみましょう。ピッキング時間の短縮と、エラーの軽減を実現することが可能です。

 

ピッキング・検品

ピッキング・検品

オーダーが入ると倉庫に出荷指示が送られ、それに従い倉庫内の所定のエリア・棚から商品をピッキングします。その後、商品の配送先や品番、数量などが、出荷指示通りにピッキングされたかを確認するための出荷検品作業を行います。

 

<効率化のコツ>

(1)倉庫内レイアウトを最適化 作業員の歩行距離を減らす、作業員同士がぶつからないなど、最適な動線確保を優先したレイアウトにすることで、ピックキング作業のスピードを上げることは十分に可能です。

(2)WMSの導入 WMSとは「Warehouse Management System」のことで、在庫管理システムと呼ばれます。在庫管理ができるだけでなく、在庫の最適な出荷順序を指定することで、商品を効率よく出荷することができます。

 

梱包

梱包

梱包作業商品の中身や大きさなどに応じた段ボールや緩衝材を用意する必要があります。最も合理的なサイズの段ボールに商品を梱包することで、運賃費用を圧縮することが可能です。

 

<効率化のコツ>

(1)最適な梱包資材の選定 梱包の際に商品との間に隙間ができてしまい、緩衝材をたくさん必要としないよう、取り扱い商品に応じた最適なサイズの段ボールを選定しましょう。ワンタッチ式の段ボールなどを利用すれば、作業時間の削減が可能になります。

(2)適切な梱包台を使用 作業効率を上げるためには、「梱包台」の見直しも有効です。「作業しやすい高さであるか」「不必要なスペースがないか」などをチェックし、梱包作業の効率化を図りましょう。

 

出荷

出荷

商品の梱包が完了したら注文者ごとに発送先を登録し、配送業者に引き渡します。小ロット・多品種・多頻度・即時対応などが求められることで、出荷ミスや出荷遅延が少なからず発生しがちなので、注意や工夫が必要です。

 

<効率化のコツ>

(1)業務フローのマニュアル化 業務フローや作業手順が決まっていないと、スタッフの作業は自己流になりがちで、作業ミスが起こりやすくなります。マニュアルを作成すれば、全スタッフが効率的に作業できるようになり、新人や短期アルバイトも採用しやすく、繁忙期にも役立ちます。

(2)出荷管理システムを導入する 出荷管理システムとは、受注・発注・仕入・売上・決済・出荷のデータをまとめ、リアルタイムで在庫情報が自動更新されるツールです。出荷管理をシステム化すると業務が効率化するだけでなく、ミスの防止や顧客への迅速な対応も可能です。

 

EC物流におけるよくある3つの課題と改善策

EC物流には、人員不足やコストの肥大化など、さまざまな課題があります。ここではその課題を明確にし、改善ポイントについて解説をいたします。

 

作業ミス

EC物流の各プロセス(保管・ピッキング・検品・出荷)におけるミスが多くなると、返品が増え、返品対応に人的リソースをとられ、送料などの費用負担が増加するなど、経営を圧迫しかねません。

 

なかでもミスが起こりやすいのは、「ピッキング・出荷検品」作業です。特定の人員だけが保管場所を認識しているなど、属人化がその主な原因となっています。

 

<作業ミス発生の改善策>

作業ミスの発生を根本的に抑制するために必要なのは以下の2点になります。

(1)作業のマニュアル化

(2)管理システムの導入

ヒューマンエラーが絡むミスは、個人で防ぐことは難しく、人海戦術でカバーしようとしても失敗するケースもあります。必要なのは、マニュアルやシステム導入などによる「仕組化」です。

 

各作業に関するマニュアルを作成し徹底することで、全スタッフが効率的かつ均一に作業することが可能になり、ミスの発生を抑えることができます。

 

また「WMS」(在庫管理システム)の導入により作業を単純化、さらに作業の属人化を防ぐことで、作業ミスを減らすことができます。一定のルールを守りさえすれば、新人からベテランまですべての人員が正しく作業を行える仕組みづくりを心がけましょう。

 

人手不足

ECサイト運営でよくあるのが、受注量の大幅増加に伴い、従来の人的リソースでは倉庫内の入出荷作業が対応できなくなるケース。

 

人手不足により、出荷ミスが発生し、エンドユーザーからのキャンセルが増え、売上が低下。入荷や返品商材の棚入れ業務を後回しにしてしまい、新商品などの販売機会が低下 。サービスのクオリティが落ちてしまうことによる、ブランドイメージの著しい棄損 といった事態を招いてしまいがちです。

 

しかし、派遣費用や残業代など人的コストが大幅に増加することが懸念されるため、単純に人手を増やせばいいという問題ではありません。

 

<人手不足の改善策>

EC物流の人手不足を解決する方法として、以下の2点を検討してみましょう。

(1)業務の単純化・標準化

(2)スタッフの多能工化

 

最初に着手すべきは、物流業務を単純化・標準化することです。業務の属人化・専任化が進まないようにするのがその目的です。たとえばWMSを導入することで、従来は人間が実施していた複雑な確認作業などを、単純な機械処理に変えてしまうことが可能です。

 

さらに、業務マニュアルや職能管理表などを作成・運用することで、スタッフ全員が複数業務を行えるようにしましょう。これにより、繁忙期でも物流品質が維持されるなど人手不足のリスクを軽減できるとともに、残業代など人件費の圧縮にも繋がります。

 

コスト増加

EC事業の売上が伸びても利益が上がらない原因として挙げられるのが、コスト増加。具体的には、運送費・人件費・倉庫の保管費用・システム運用費などです。運送業界の人手不足と再配達問題などから、運送費は高止まりしています。

 

また、エネルギー価格の高騰により電気代が上昇、それにともない倉庫保管費用が増加し、さらに働き方改革と最低賃金上昇による人件費の上昇など、物流コストはますます増加傾向にあります。コストの抑制や削減は、EC事業者にとって最大の課題と言えるでしょう。

 

<コスト増加の改善策>

EC物流のコスト増加を解決するために検討すべきは、在庫管理システムの導入とマニュアル運用の徹底。これにより熟練者が手間と時間をかけていた作業を迅速化することができ、さらに確認作業やダブルチェックも少なくできるため、労働時間を大幅削減することが可能。アルバイトやパートスタッフで業務の多くをまかなえる体制を確立することで、人件費を大幅に圧縮しましょう。

 

【まとめ】ECの物流とは?仕組みやよくある課題・改善策について解説

EC事業が拡大すればするほど、コストの肥大化や人手不足といった、EC物流の課題が次々と発生します。事業を安定させるためにも、最小限の人手で、コスト増加を防ぐための施策を現場に取り入れましょう。

 

また、ピッキングや在庫管理などの業務におけるヒューマンエラーの解決には、マニュアル化の徹底による属人化の排除や、WMSなどのシステム導入による作業の効率化が適しています。ただし、このような業務マニュアルの作成や、管理システムの導入実現には、高い物流ノウハウが必要となります。

 

EC物流をコア業務の一環として自社内で手がけるのか、アウトソーシングを利用するのか、経営状況に合わせ最適な選択をすることが重要になります。

 

ルビー・グループでは、EC物流全般に関するご相談も受けておりますので、お困りの際はぜひお問い合わせ下さい。

この記事を書いた人

ルビー・グループ コーポレートサイトチーム

各分野の現場で活躍しているプロが集まって結成されたチームです。
開発、マーケティング、ささげ、物流など、ECサイトに関するお役立ち情報を随時更新していきます!