物流品質の向上がECビジネス成功の鍵 ~顧客満足度を高める物流戦略~

2025.02.20

2025.02.20

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一般的に物流とは、商品が倉庫から顧客の自宅に届くまでの一連の流れを指します。一方「EC物流」は、商品を仕入れてユーザーに届けるまでの一連のプロセス、つまり、「EC事業におけるモノの流れ」の総称です。

「EC物流」は、ECサイトの円滑な商取引を支えるバックヤードとしての重要な役割があり、その品質がEC事業の成否を握っていると言っても過言ではありません。

本記事では、物流品質の向上がいかにして顧客満足度やリピート率の向上に寄与するのかを具体的に解説しています。

「物流品質の向上が顧客満足度にどう影響するのか知りたい」「他社の成功事例を通じて効果的な物流戦略を学びたい」という方はもちろん、「物流改善後に発生する運用面での新たな課題(コスト管理やスタッフ教育など)の解決のために参考にしたい」という方も、是非ご一読ください。

物流品質がECビジネスに与える影響

「EC物流」は、通販やオンラインショップに特化した物流プロセスのことです。商品の保管・流通加工・梱包・配送などのほか、商品の入荷やオーダー管理、返品の対応なども含まれます。昨今、「EC物流」の重要性が叫ばれている背景には、EC市場規模の急激な拡大があります。

国土交通省の「電子商取引に関する市場調査(※1)」「宅配便等取扱個数の調査(※2)」によると、EC市場規模(物流系分野)は2016年の時点では約8兆円でしたが、2021年には13兆円以上にまで拡大。それに伴い、宅配便の取り扱い個数は約50億個増加しました。

電子商取引に関する市場調査
宅配便等取扱個数の調査
また、EC事業において「物流」はきわめて重要な役割を担います。「生活者のネットショッピング1200名の実態調査(※3)」によると、「ECサイトで、購入することを途中で止めてしまう時に気にすることは何でしょうか」という質問に対して、「配送条件が良くない」が47.6%と上位3位になる結果となりました。
生活者のネットショッピング1200名の実態調査
「早くて、便利で、安心」という安定した配送プロセスが一般的になりつつあるからこそ、その水準をクリアできないと購入をストップしてしまう人が多数いるというわけです。

商品に誤りが無いこと、破損が無いこと、配達希望日に届くこと、商品返品や交換のプロセスがスムーズであることなど、消費者にとって当たり前のことができなかった場合、顧客満足度は大きく下がり、顧客離れが起きかねません。

さらに、「EC物流」の各工程(保管・ピッキング・検品・出荷)におけるミスは、売上に大きく影響します。特に倉庫作業のピッキング・検品ミスなどにより出荷遅延や出荷ミスが発生すると、エンドユーザーからのキャンセルが発生するだけでなく、入荷や返品商材の棚入れ業務が後回しになることで、新商品や売れ筋商品の販売機会が低下。売上アップの機会を損失してしまいます。

余剰在庫や機会損失をなるべく減らし、売上や顧客満足度を向上させるためには、複雑になりやすい物流業務を効率化するなどして、品質向上を図ることが必須なのです。

※1.参考:国土交通省「電子商取引に関する市場調査」 https://www.meti.go.jp/press/2022/08/20220812005/20220812005.html
※2.参考:国土交通省「令和4年度 宅配便等取扱個数の調査及び集計方法」 https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001625915.pdf
※3.参考:生活者のネットショッピング1200名の実態調査 https://business.kuronekoyamato.co.jp/hakken_delivery/articles/hd_0008/

高い物流品質を実現するための重要ポイント

それでは、どんな取組みをすれば「EC物流」の品質向上を図ることができるのか。以下で具体的にご紹介します。

作業ミスは「システムの導入」で防ぐ

「EC物流」の各工程(保管・ピッキング・検品・出荷)におけるミスは、売上に大きく影響します。特に倉庫作業のピッキング・検品でミスが多数発生すると、返品が増え、その対応に人的リソースを奪われるだけでなく、返品コストが積み重なるなど、EC事業運営にとって大きな負担となりかねません。

特にヒューマンエラーが絡んだミスは、個人で防ぐことは難しく、システム導入により仕組み化することが求められます。

たとえばWMS(倉庫管理システム)を導入し、システムの指示通りに決められたロケーションで商品をピッキングするだけなど、作業手順を単純化することが理想的です。また、配送状況をリアルタイムで追跡できるシステムを導入すれば、顧客に正確な到着予定時刻を提供することができ、顧客満足度の向上につながります。

基幹システムや受注管理システム、顧客管理システムなど、他のシステムとのシームレスな連携が可能なシステムを導入すれば、物流業務の自動化が可能となり、リソース削減と作業の精度アップの両方を図ることができるでしょう。

人手不足は「業務の単純化」「従業員の多能工化」で補う

「EC物流」においてよく問題となるのが、受注量の大幅な増加に伴い、従来の人的リソースでは入出荷作業に対応できなくなるケースです。こうした「EC物流」の人手不足問題を回避するためには、「業務の単純化・標準化」「従業員の多能工化」などが必要になります。

まずは、現在の物流業務を単純化・標準化することで業務の属人化・専任化が進まないようにしましょう。例えば、前述したWMSを導入すれば、それまで人間が実施していた複雑な作業を単純で正確な機械処理に変えてしまうことが可能となります。

さらに、業務マニュアルや職能管理表を作成・運用し、作業スタッフ全員が複数の業務を行えるようにすれば、繁忙期においても物流品質が維持できる上に、残業代など人件費の圧縮にも繋がります。

在庫管理業務の煩雑化には「アウトソーシング」で対応を

EC事業は、多品種小ロットの入出荷が一般的なため、常に各商品の在庫状況を正確に把握し、管理する必要があります。これが在庫管理業務を複雑にする大きな要因です。

また、季節やセール時期によって注文量が大きく変動することで、在庫の増減が激しくなり、在庫管理が一層難しくなります。

在庫管理を適切に行わないと、繁忙期には在庫が不足し、閑散期には過剰在庫が発生するリスクに結びつきます。さらにギフトラッピングや特定の配送日時指定など、顧客の個別ニーズに対応しようとすると、在庫管理がより複雑になります。

「EC物流」をアウトソーシングすれば、こうした入荷や検品、保管、ピッキング、梱包、出荷などの一連の業務を委託することができ、リソース不足の解消やプロによるサービス品質の向上が実現できます。

近年では、これらの物流業務に加えて「注文データの処理」「カスタマーサポート対応」などの業務を依頼できる「フルフィルメントサービス」も登場しています。

物流業務をアウトソーシングする際は、自社商材に合った対応ができるか、ニーズに合わせてシステムをカスタマイズできるかなど、詳細を事前にしっかり確認してから依頼するようにしましょう。

成功事例から学ぶ物流品質向上のヒント

ここでは、EC事業者の成功事例をご紹介します。物流品質向上のためのヒントにしてみましょう。

エンタメ商材特有の要望に対応する柔軟な物流体制を構築|株式会社コアミックス

株式会社コアミックス
株式会社コアミックスは、「北斗の拳」「シティーハンター」などの名作の著作権管理をする傍ら、「月刊コミックゼノン」をはじめとする雑誌発行や、単行本・電子書籍の出版などを行い、さらに、国内外へのライセンスアウトやイベント企画など、多角的な事業を展開しています。

その多角事業の一つとして展開しているのが、グッズのEC事業。当初は、物流業務も含めてすべて自社で対応していましたが、後にアウトソーシングに踏み切ったことで物流品質が大きく改善しています。

ECカートシステム「BASE」と在庫管理システム(WMS)との連携により、リアルタイムで在庫状況を把握できるようになり、発送業務や在庫管理業務に発生していた時間を大幅に減らすことができました。

とくにランダム系グッズの販売は、バーコードを読み取って商品を一つずつ管理するため、ミスが発生しやすくなるなどの物流の難易度が高く、さらに、そのランダム商品のコンプリートセット版なども別で用意するとなると、物流オペレーションがより複雑になります。

物流システムの構築は、こうした課題も解決。今後は、様々な国や地域への展開を視野に入れ、世界中のファンに喜んでいただけるようなグッズを販売していきたいと考えているそうです。

最大出荷が2倍超でも“誤出荷・未出荷・在庫差異”ゼロに|株式会社プライア

株式会社プライア
株式会社プライアは、「ヒルズアヴェニュー」というブランドで、直営店舗をはじめ自社ECサイトなどでオリジナルの婦人靴を販売するメーカーです。

それまで基幹システムはあったものの、物流に関してのDX化が遅れ、さらに人の注意力に依存したアナログ管理であったため、誤出荷や在庫差異などのケアレスミスも発生していました。

こうした問題の解決に加え、「EC在庫と店舗在庫を一元管理して保管スペースを圧縮したい」「返品対応のスピードを高め、EC売上を拡大したい」といった社内のニーズを叶えるために、「客注」「返品システム」「WMS内で出荷指示を生成し、取り込む」などの機能を実装したWMSを構築。

「客注」は、スマホやタブレットを使ってリアルタイムで在庫を確認し、ワンプッシュで倉庫に出荷依頼が可能に。「返品システム」により、返送されてくる返品伝票に記載された受注番号をキーに出荷情報を呼び出し、画面上で返送された商品を選択、数量を入力するだけで返品が完了する仕組みを構築しています。

さらに、出荷管理画面の中に新しく「出荷指示を作る機能」と「出荷指示データを弊社側で取り込む用のテーブル機能」の追加開発を実施。これにより、マニュアルがなくても誰でも簡単に出荷指示ができるようになりました。

こうして新たな物流管理システムを構築することで、最大出荷が2倍超でも“誤出荷・未出荷・在庫差異”ゼロを実現しています。

物流品質向上のための最新ソリューションと今後の展望

毎年変わるECのトレンドへの対応に加え、今後も続くとみられる人手不足や人件費の高騰などに対応するなど、先を見据えた運営に着手する必要がある「EC物流」。
ここでは「EC物流」の品質向上に直結する最新のソリューションや、物流業界の未来に関する考察をご紹介いたします。

物流サービスも「クラウド型」が当たり前に

「クラウド型物流サービス」とは、インターネットを介して提供される物流サービスのことです。従来のシステムでは、情報が複数のシステムやファイルに分散しており、リアルタイムでのデータ共有が難しかったのに対し、「クラウド物流サービス」ではデータが一元化され、オンライン上でリアルタイムに在庫管理や配送状況などデータの共有や更新が可能です。

また「クラウド物流サービス」はスケーラビリティに優れており、需要が急増した際にはクラウド上でシステムを拡張することで迅速に対応が可能です。

さらに、EC事業者も倉庫側もソフトウェアやサーバーを自前で用意する必要はないため、初期費用負担を大幅に削減可能。データの管理やインフラ運用はもちろん、システムのアップグレードもサービス提供企業によって行われるため、定期的なメンテナンス費用やそのための担当者配置も不要になります。

フルスクラッチでWMSを設置するとなると半年から1年以上もの期間を要するところ、クラウド型なら1〜2ヶ月程度で導入できる点も、EC事業者にとっては大きなメリットです。

「サステナブル」を企業の成長戦略に活用へ

昨今、企業活動においてグローバルで存在感を高めているキーワードである「サステナブル(Sustainable)」。物流業界においても、様々な持続可能な取り組みが求められています。

具体的には、電動配送車両、排出量削減のためのルートの最適化、環境に優しい梱包材の使用に多額の投資などを行っています。

また、2019年3月に国土交通省から関連企業へ参加要請文書が送付された「ホワイト物流推進運動(※)」に参加する会社も確実に増加。トラック運転手の労働環境の改善を通じ、業界における人手不足問題の解消と、安定的な物流の確保を目指しているこの運動への賛同企業は、令和7年1月16日時点で3,000社を超えるまでになっています。

このように、「サステナブル」を企業の成長戦略や他社との差別化に活用する物流会社は、今後ますます増えてくるでしょう。

※参考:「ホワイト物流」推進運動について
https://white-logistics-movement.jp/outline/

最新テクノロジーや小型物流倉庫がもたらすEC物流革命

最新ロボット工学の導入による倉庫内の各種作業の自動化は、物流業務を最適化する上で、多くの企業が避けては通れない取組みとなるでしょう。

例えば、無人搬送車 (AGV) やロボットアームの導入などによる倉庫内の自動化は、人件費を削減し、物流業務の効率をさらに向上。洗練された仕分けシステムとコンベアベルトの導入は注文処理のスピードを格段に上げ、より迅速かつ手頃な価格の発送を可能にします。

また、IoT接続とセンサーを備えたロボットがリアルタイムでデータ分析を行い、需要予測やプロセスの最適化に貢献するでしょう。

さらに、首都圏など顧客が密集したエリアでのマイクロフルフィルメントセンター(小型物流倉庫)の設立が進むことで、商品の移動距離と時間が短縮。加えて自動運転車やドローンなどの代替配送方法を使用することで、ラストワンマイルの配達における人件費と燃料費が大幅に削減されるでしょう。

【まとめ】物流品質の向上がECビジネス成功の鍵 ~顧客満足度を高める物流戦略~

本記事では、物流品質の向上がいかにして顧客満足度やリピート率の向上に寄与するかを解説してきました。

しかし、物流システムの構築や日々の作業をすべて自社内で行うのは限界があり、アウトソーシングをすることが現実的です。

EC物流業務をアウトソーシングすることで得られるメリットは、以下の通りです。
・プロのスタッフが担当するため作業ミスが軽減できる
・従業員の人件費などのコストを大幅に削減できる
・人材の採用・育成が難しいなどのリソース不足を解消できる
・繁忙期・閑散期による稼働量の変化に柔軟に対応できる
・EC物流のリソースをコア業務(商品開発や分析など)にあてられる

ルビー・グループでは、在庫施策をご提案し売上向上に貢献する「物流代行サービス」を承っています。

フリーロケーションによる運用で、シーズンによる緩急にも柔軟に対応。倉庫とCSや関係部門との連携も容易、クライアント様基準に応じた検品のQC受託も可能と、様々なメリットをご提供できます。「EC物流」の品質向上をお考えなら、ぜひ一度ご相談ください。

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この記事を書いた人

ルビー・グループ コーポレートサイトチーム

各分野の現場で活躍しているプロが集まって結成されたチームです。
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