
本記事では、ECサイトにおける決済エラーの原因と対策を多面的に解説、さらに、決済成功率を確実に引き上げる5つのアクションをご紹介しています。
「決済エラーが起こる利用者側とシステム側それぞれの具体的な原因とエラーコードを知りたい」「決済成功率を向上させるために、EC事業者がすぐに取り組めるチェックリストと対策を知りたい」という方はもちろん、「エラーを減らしつつ、不正利用によるチャージバックをどう防ぐか悩んでいる」「不正検知システム(FDS)や3Dセキュアなど、セキュリティ対策を導入する際の最適な設定を知りたい」という方も、ぜひご一読ください。
決済エラーは「顧客体験の破壊」と「避けられる機会損失」

機会損失の最大化
決済エラーは、お客様が購入を決意し、カートに商品を入れた後の最終段階での離脱であり、これは、ECサイトがそれまでに費やした集客コストや労力がすべて無駄になることを意味します。
カゴ落ち(ドロップオフ)に直結
決済画面でのエラーは、お客様が購入を諦める(カゴ落ちする)決定的な原因となります。カゴ落ち率が高いほど、潜在的な売上が失われ続けます。
コンバージョン率の低下
決済が完了しなければ、コンバージョン(CV)は発生しません。決済エラー率が高いサイトは、どれだけ集客しても最終的なコンバージョン率が低くなります。
リピート購入の可能性喪失
初回の購入で決済エラーに遭遇すると、そのお客様は「このサイトは信用できない」「面倒だ」と感じ、二度とサイトを訪れない可能性が高くなります。
顧客満足度とブランドイメージの毀損
スムーズな決済は、お客様にとって「気持ちの良い買い物体験」の最後の仕上げです。そこでつまずくと、ブランドイメージ全体に悪影響を及ぼします。
ストレスと不信感の増大
エラーメッセージが不親切だったり、原因が不明だったりすると、お客様は大きなストレスを感じ、「セキュリティが不安」「システムが不安定」といった不信感につながります。
ネガティブな口コミの拡散
決済エラーの体験は、SNSや口コミサイトでネガティブな評判として拡散されやすく、新規顧客の獲得にも悪影響を及ぼします。
サポートコストの増加
決済エラーが発生すると、「なぜ買えないのか」という問い合わせが殺到し、カスタマーサポート部門の対応工数と人件費が急増します。
不正利用による損失リスクの発生
決済エラーの中には、システム側の不正検知やセキュリティ設定の不備に起因するものもあります。
チャージバックリスクの増加
セキュリティ対策が不十分で不正な取引を許してしまうと、後日カード会社からチャージバック(売上取消)が発生し、商品代金に加えてチャージバック手数料も負担することになります。
健全な取引の誤拒否(過剰検知)
不正利用を恐れてセキュリティ設定を厳しくしすぎると、健全な顧客の取引までエラーとして誤って拒否してしまい、上記1の機会損失を引き起こします。このバランスが非常に重要です。
決済代行会社との関係とコスト
決済成功率は、ECサイトと決済代行会社との関係においても重要です。
手数料率への影響
決済成功率が極端に低い場合、決済代行会社がサイトのリスクが高いと判断し、手数料率の交渉に不利になる可能性があります。
契約継続への影響
不正利用率が異常に高いサイトは、決済代行会社やカード会社から取引の停止(アカウント凍結)を求められるリスクがあります。これは、ECサイトの決済手段そのものを失う致命的な事態です。
結論として、ECサイト運営にとって「決済エラー」対策は、単なるシステム改善ではなく、売上を担保し、ブランドを守るための最重要課題なのです。
次項以降で、決済エラーの「利用者側」「システム側」それぞれの原因別チェックリストと、対処法をご紹介しています。ぜひ参考にしてみてください。
【利用者側が原因】EC事業者が対策を打てる「3大エラー」とUI/UX改善
決済エラーの原因の中でも、お客様側(購入者)に原因があるケースは最も多く、お客様自身で解決できる可能性が高いことが特徴です。ECサイトの決済エラーのうち、お客様側(購入者)に原因がある場合は、サイト運営者がお客様を適切にサポートすることで、カゴ落ちを防ぐことが可能です。
クレジットカード情報の入力ミス
「カード番号」「有効期限」「セキュリティコード」の誤入力
最も多いエラー原因です。特に、有効期限の「月/年」の順序間違いや、セキュリティコードの誤認(例:American Expressは4桁、他は3桁が多い)が頻発します。
名義人名の誤り
カードに記載されているローマ字氏名と決済画面の入力が一致しない(例:全角/半角、姓/名の順序、ミドルネームの有無など)。
カードの利用状況に関する問題
利用限度額の超過
カードの月間利用枠(ショッピング枠)を超えた金額の決済を行おうとした。
有効期限切れ
使用しているカードがすでに期限切れになっている。
利用停止・凍結
支払いの遅延や、カード会社が不正利用の疑いを検知して一時的にカードをロック(利用停止)している。
海外利用制限
発行会社によっては、セキュリティ上の理由で初期設定で海外(または海外とみなされる)ECサイトでの利用を制限していることがある。
本人認証(3Dセキュア)の失敗
パスワード・ワンタイムパスワードの誤入力
「3Dセキュア(本人認証サービス)」が導入されているECサイトで、カード会社に登録しているパスワードを間違えた。
認証画面の表示エラー
お客様のブラウザやセキュリティソフトの設定により、認証用のポップアップ画面がブロックされ、認証が完了できない。
ECサイト運営者がとるべき対策
入力補助と分かりやすい画面設計
リアルタイムバリデーションの導入
カード番号の桁数や有効期限の形式など、入力内容に誤りがあれば即座に赤字で警告を表示する。
入力フォームの工夫
・有効期限は「月」と「年」をドロップダウン形式にするなど、手入力を減らす。
・セキュリティコードの入力欄には、カード上のどこにあるかを示す画像やヒントを表示する。
・オートコンプリート(自動入力)機能が正しく動作するように設計する。
全角/半角の自動変換
名義人名などの入力欄で、全角で入力されても自動で半角に変換する機能を持たせる。
エラーメッセージの具体化と対処法の提示
決済代行会社から返ってくるエラーコードを、お客様にわかりやすいメッセージに変換して表示することが極めて重要です。エラーコードの推定原因と、表示すべきメッセージ例を以下でご紹介します。
入力情報ミス
「カード番号または有効期限が誤っています。カードをよくご確認の上、再度ご入力ください」
限度額超過
「ご利用限度額を超過している可能性があります。他のカードをご利用いただくか、カード会社にお問い合わせください」
不正利用検知
「セキュリティ上の理由により決済が拒否されました。カード発行会社(裏面に記載の電話番号)へご連絡のうえ、再度お試しください」
代替決済手段の提供
クレジットカードエラーが解決しない場合に備え、他の決済方法への導線を明確にします。
後払い決済
クレジットカード情報が不要なため、エラー回避策として有効です。
コンビニ決済・銀行振込
カードを持たないお客様や、カードエラーを避けたいお客様に対応できます。
FAQとサポート体制の強化
FAQの充実
「決済エラーが出たのですが、どうすればいいですか?」といったQ&AをFAQに設置し、上記の具体的な原因と対処法(例:カード会社への連絡を促す)を記載する。
問い合わせ先の明記
エラー画面にサポートデスクの電話番号やチャット窓口を分かりやすく表示し、不安を抱えたお客様がすぐに問い合わせできるようにする。
【システム・承認編】「売上ストップ」を引き起こすシステム側エラーと対策
ECサイト側または決済システム側で発生するエラーは、お客様の努力では解決できないため、カゴ落ちに直結しやすく、早急な対応が必要です。
以下で、ECサイトの決済エラーのうち、システム側(ECサイトや決済代行システム)に起因する主な原因と、それに対してECサイト運営者がとるべき具体的な対策について詳しく解説します。
決済代行サービスとの連携・設定ミス
APIキー/認証情報の誤り
決済代行サービスとの連携時に使用するAPIキーやシークレットキー、マーチャントIDなどの情報が間違っている、あるいは更新されていない。
URL・エンドポイントの誤り
決済結果をECサイト側に返すための「戻りURL(リダイレクトURL)」や、決済通知を受ける「通知URL」の設定に誤りがあり、処理が完了しない。
契約・権限の不備
導入している決済方法(例:特定の国際ブランド、3Dセキュアなど)が、決済代行サービスとの契約内容やアカウント設定で有効化されていない。
ECサイトのシステム不備(サーバー・プログラム)
通信のタイムアウト
決済処理中に、ECサイトと決済代行サービス間の通信が混雑やサーバーの高負荷により途切れ、規定の時間内に応答が得られなかった。
SSL/TLS証明書の期限切れ・設定ミス
暗号化通信(SSL/TLS)の証明書が期限切れであるか、セキュリティ設定に不備があり、決済情報の通信が拒否された。
セッション情報の不整合
お客様がカートに商品を入れてから決済画面に進むまでの間に、セッション情報(ユーザー識別情報)が失われたり、正しく引き継がれなかったりしたため、決済処理が中断された。
データ型の不一致/バリデーションエラー
決済システムへ送る金額データなどが、システム側で想定されている形式(例:数値型)と異なっていた。
決済代行会社のシステム障害
決済代行会社側のサーバーダウン
大規模なシステム障害により、決済代行会社のシステム全体が一時的に機能しなくなった。
特定の決済手段のメンテナンス
銀行やカード会社側のシステムメンテナンス、あるいは決済代行会社側でのメンテナンス時間とお客様の決済タイミングが重なった。
ECサイト運営者がとるべき対策
システム側の原因によるエラーを最小限に抑え、また発生時に迅速に対応するための対策は以下の通りです。
事前チェックと設定管理の徹底
導入時の徹底したテスト
新しい決済手段を導入する際やシステムを更新した際は、本番環境と極めて近いテスト環境で、あらゆるエラーパターンを想定した決済テストを徹底的に行う。
連携設定の二重チェック
APIキー、シークレットキー、通知URLなどの重要設定情報は、導入時だけでなく定期的にチェックリストを用いて確認し、誤りがないか二重に確認する。
証明書の期限管理
SSL/TLS証明書の期限をシステムで自動通知するなどして管理し、期限切れになる前に必ず更新する。
エラー時の対応と監視の強化
ログの収集と監視
決済処理に関するすべての通信ログ、エラーコードを詳細に収集し、リアルタイムで監視する体制を構築する。特にエラーの発生頻度が高い場合はアラートを出すように設定する。
分かりやすいエラーコードの表示
決済代行会社から返されるエラーコードをそのまま表示せず、運営者側で原因を推定し、「現在システム側で確認中です。お手数ですが、しばらく経ってから再度お試しください」といった具体的な対処方法を併記して表示する。
システム障害時のアナウンス
決済代行会社側の障害などにより決済不能な場合は、迅速にサイトのトップページやお知らせに告知し、お客様の混乱を防ぐ。
代替決済手段の推奨
特定のエラーが続く場合、お客様に別の決済方法(後払いやコンビニ決済など)を即座に利用できるように導線を案内する。
パフォーマンスとシステムの安定化
サーバーの負荷対策
セール時などアクセス集中が予想される場合は、サーバーリソース(CPU、メモリなど)を一時的に増強し、タイムアウトが発生しにくい環境を整える。
定期的なシステムメンテナンス
システムのセキュリティパッチ適用やパフォーマンス改善のためのメンテナンスを定期的に実施し、安定稼働を維持する。
【実践チェックリスト】決済成功率を確実に引き上げる5つのアクション
ECサイトの決済成功率(Payment Success Rate)は、購入手続きを開始したお客様が、最終的に決済を完了する割合を示す指標であり、ECサイトの収益に直結する最も重要な要素の一つです。
決済成功率を確実に引き上げるためには、以下のような具体的かつ技術的なアクションを取る必要があります。
1. フォームとフローの徹底的な最適化(UX/UI)
決済フローにおける「面倒くささ」や「分かりにくさ」を排除し、カゴ落ちを防ぐ。
【入力項目の最小化】
・必須情報のみに絞り、不要なアンケート項目などは極力削除
・会員登録なしでゲスト購入できるオプションを必ず提供
【アドレス(住所)入力補助の強化】
・郵便番号を入力したら住所が自動入力される機能を導入し、入力の手間とミスを減らす
・請求先と配送先が同じ場合、チェックボックス一つで自動反映できるようにする
【視覚的補助の充実】
・クレジットカードの入力フォームには、カード番号とセキュリティコードの位置を示す画像を添える
・リアルタイムバリデーション(入力ミスがあれば即座に赤字で警告する)を導入し、お客様がエラーに気づきやすくする
【レスポンシブ対応と速度改善】
・スマートフォンでの決済プロセスを最優先で最適化(モバイルファースト)
・決済ページにおける画像容量やスクリプトを最適化し、ページの読み込み速度を極限まで速くする(タイムアウトや離脱防止)
2. エラーコードの体系化
決済代行会社から返される専門的なエラーコード(例: G55, 301, E99など)を、お客様が理解しやすい具体的なメッセージ(例: 「カードの有効期限が誤っています」「ご利用限度額を超過している可能性があります」)に変換して表示。同時に、顧客向け対応マニュアルに落とし込む。
3. 多様な決済手段の拡充
特定のカードでエラーが出た場合に備え、主要な国際ブランド(Visa、Mastercard、JCBなど)に加え、後払い、キャリア決済、各種Pay決済(PayPay、楽天ペイなど)など、幅広い選択肢を提供する。
4. 決済フローのモニタリング
・ECサイトと決済代行サービス間のAPI連携や通知URL(戻りURL)が正しく機能しているかを、システム更新時だけでなく定期的にテスト
・決済サーバーと通信ログを常時監視し、決済代行会社側の障害情報を素早く察知できるアラートシステムを構築
5. 安全性と利便性の担保
お客様の信頼感を高め、セキュリティ上の理由による離脱や不正利用によるチャージバックを減らしながら、お客様にとっての利便性も確保する。
・セキュリティの可視化
SSL証明書(鍵マーク)が正しく表示されていることを確認し、PCI DSS準拠などのセキュリティ基準を満たしていることを明示
TRUSTeやベリサインなどのセキュリティバッジ、または提携している決済代行会社のロゴを決済画面の目立つ位置に表示し、安心感を与える
・不正検知システムの導入とチューニング
「3Dセキュア(本人認証)」を導入し、不正利用によるチャージバックリスクを低減
・不正検知システム(FDS)を導入し、不正取引と疑わしい取引を自動で拒否しつつ、誤って正規の取引を拒否したり、利便性を損なわないようシステムを慎重にチューニング
これらの5つのアクションを継続的に実行し、数値(決済成功率・カゴ落ち率・各決済手段のエラーコード別発生率)を追跡することが、決済成功率引き上げの鍵となります。
まとめ
ご覧の通り、決済エラーの原因は、お客様側のミスからシステム障害、不正利用対策まで多岐にわたりますが、数多くの総合的なEC支援事業を手がけてきたルビー・グループでは、以下のように決済エラーに関する問題解決を支援できます。
サーバー・インフラの安定化によるエラー防止(システム側の原因対策)
決済フローにおける最も深刻なエラーの一つは、アクセス集中やシステムダウンによるものです。ルビー・グループは、ECサイトのインフラ構築・運用に強みを持つため、この根本原因の解決が可能です。
決済手段の適切な導入と連携(UX/機能面の原因対策)
ECサイト構築のプロフェッショナルとして、エラーを防ぎ、カゴ落ちを減らすための最適な決済環境を提供できます。
CVR最適化とエラーメッセージの改善(顧客側の原因対策)
デジタルマーケティングやUI/UXの改善支援を通じて、お客様側の入力ミスや離脱を防ぐ対策を講じます。
不正対策とセキュリティの強化(リスク管理の対策)
不正利用によるチャージバックを防ぎ、健全な取引を守るためのセキュリティ対策を支援します。
このようにルビー・グループは、ECサイトの「裏側(インフラ・システム)」と「表側(UX/マーケティング)」の両面から、決済エラー対策、ひいては決済成功率の向上に貢献できますので、決済エラーでお困りのことがあれば、ぜひお声がけください。
この記事を書いた人
ルビー・グループ コーポレートサイトチーム
各分野の現場で活躍しているプロが集まって結成されたチームです。
開発、マーケティング、ささげ、物流など、ECサイトに関するお役立ち情報を随時更新していきます!
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