
その中でも、接客業務の一部を自動化する「AI接客」の導入を検討している企業は年々多くなっています。
本記事ではAI接客の定義や仕組みから、導入のメリット、活用事例、導入ステップなどについて詳しく解説しています。
「AI接客の導入でどんな業務が自動化できるのか?」「店舗やECサイトでの導入事例や成功例を知りたい」という方はもちろん、「売上やリピート率など、数値的な効果はあるか?」「継続的にAIの精度を上げていくための運用設計について調べている」という方も、ぜひご一読ください。
AI接客とは?定義と仕組みをわかりやすく解説

AI接客とは、AI技術を利用して顧客とのコミュニケーションを行うサービス手法です。
AIによる自然言語処理や機械学習アルゴリズムを搭載し、質問や問題に対して人のような理解と適切な対応を提供します。
そのため複雑な質問やクレームにも適応し、高度な問題解決能力を発揮します。また、複数の言語に対応し、国際的な顧客層にも柔軟かつ効果的なサービスを提供できます。
従来の人間による接客業務の一部をAIで代替することにより、迅速かつ効率的なサービス提供が可能になります。人手不足や人件費の高騰が問題視される中で、業務負担の軽減やコスト削減の有力な手段としてAI接客が注目されています。
具体的には、以下のようなものがAI接客に含まれます。
AIチャットボット
ウェブサイトやECサイトで、顧客からの問い合わせに自動で対応。定型的な問い合わせであれば、24時間365日体制で問い合わせ対応ができる。コールセンターの負担が軽減できるだけでなく、利便性の良さから顧客満足度の向上にもつながる。
AIロボット
店舗や公共施設で、案内や商品の紹介を行う。自律移動型であれば、施設情報を紹介するだけでなく顧客を目的地まで案内することができる。会話をベースにした周辺の飲食店や最寄り駅などへの道順の案内も。外国語対応も可能であり、従業員の業務負担を軽減できる。
アバター接客
接客を担当する従業員がバーチャル空間でのアバターとして表示され、顧客対応を行う。従業員もアバターであれば場所にとらわれずに遠隔で接客ができるため、働き方改革の側面でも効果的。
AI接客は、ECサイトや店舗以外でも、以下のような業務を行うことが可能です。
◆観光案内所
多言語対応のAI接客を活用することで、多様な宿泊客のニーズに応えた接客サービスが提供可能に。
◆ホテル
AI顔認証によるチェックインや、宿泊客からの問い合わせに対応し、予算や要望に合わせて観光情報を提供するなどが可能。
◆病院
診療予約や診断の補助、病院内を案内。また、診断支援や治療法の提案などによって、正確な診療が行われることが期待できる。
◆金融機関
顧客の口座開設や資産運用をサポート。生成AIを搭載したチャットボットによるオンライン窓口では、24時間365日いつでも問い合わせ対応が可能に。
◆公共機関
たとえば自然災害の後に急増する緊急住宅支援に関する問い合わせ対応など、各種マニュアル作業を自動化することで、行政職員のケース作業の迅速化を支援、各種手続きのサポートが可能に。
AI接客は、人間が指示を出さなくても自動で作業を任せられるのが特徴です。また、業務の経験を積んで学習し、自ら能力を向上させていくシステムも存在します。
例えば、生成AIを搭載したチャットボットは、ユーザーとの対話経験を積むことで、質問に対する回答の精度を高めます。このように、AI接客は継続的な改善を実現でき、顧客により良い接客サービスを提供できるところが魅力です。
AI接客の導入メリットと期待できる効果
ここでは、AI接客導入のメリットと期待できる効果について解説します。その前に、AI接客が注目される背景について探っていきましょう。
顧客ニーズの多様化
近年の顧客の価値観は多様なものになっており、さらにインバウンド客が急増していることから、接客場面においてあらゆるニーズに柔軟かつ迅速に対応することが求められています。
人手不足問題と業務効率化の課題
多くの企業が人手不足に悩み、定型業務の自動化は不可欠となりつつあります。また、従業員の業務負荷を軽減して限られた人的リソースを有効に活用することが求められています。
人件費の高騰
AIチャットボットは、導入の初期費用や運用に必要な費用がかかるとしても、長い目で見れば専任スタッフを置くよりも安価に顧客満足度を上げることが可能です。
こうした社会的な環境変化やニーズに対応するために、いまAI接客の導入は各企業にとって急務になりつつあります。
それでは、AI接客導入によるメリットを具体的に見ていきましょう。
⇒24時間365日対応
AIは人間のように休憩や疲労がないため、24時間365日顧客対応が可能。ユーザーは時間帯に依らずいつでもAIに問い合わせや質問を行うことができるため、顧客満足度や利便性が高まり、ビジネスの成長に貢献する。
⇒人的リソースの最適化
人が行っていた業務の多くの部分を代替することができるため、人件費や労務費を削減できる。また、AI接客に定型的な接客業務を代替させることで、従来のスタッフを人でしかできないより重要な業務へ振り分けることもできるなど、人的リソースの最適化を図ることが可能に。
⇒サービス品質の均一化
個人のスキル・経験・体調にサービス品質が依存することがないため、高度な接客・高品質な接客を学習させておけば、常に高いレベルの接客を行うことができる。
⇒多言語対応が可能
多言語対応のAIチャットボットや音声認識技術を導入することで、外国人顧客への対応も容易。言語の種類がいくら増えても常に一定以上の品質の接客を提供し続けることができる。
⇒顧客満足度向上
顧客との直接的なやり取り以外にも、顧客の購買行動の履歴の分析にも優れるため、好みに合わせた商品のおすすめやキャンペーンの案内などの販売促進にも活用可能。顧客満足度や売上の向上に貢献することが期待できる。
⇒データ分析
接客を通じて獲得した顧客情報・対応履歴等を自動的に記録・集計、大量のデータを分析し、顧客の行動やニーズを把握することで、ビジネスの改善に役立てることができる。
AI接客の活用事例|店舗・ECそれぞれのケーススタディ
次に、積極的にAI接客を導入している企業の事例をご紹介します。
ユニクロ/GU〜AIチャットボット導入で、サポート対応可能量が2倍に〜
ユニクロとGUは、ECサイトでの購入をサポートするAIチャットボットサービス「IQ」を公式アプリに導入しています。過去の問い合わせ内容や情報をもとに、AIがお客様からのお問い合わせに対応。AIで回答できない質問や困りごとには、オペレーターがリアルタイムチャットで回答し、AIと人の利点をうまく組み合わせた接客を行っています。
ユニクロではこのサービスをアプリ版コンシェルジュと位置づけ、「注文」「商品の配送」「返品・交換」といった一般的なFAQのサポートにとどまらず、「商品検索」「商品サイズの確認」「コーディネートの提案」など、オンラインでの買物に関するさまざまな質問にも対応。セールス代行の役割も担わせています。
「UNIQLO IQ」の導入により、電話やメールで来ていた問い合わせの半数以上がチャット経由に切り替わったことでサポート対応可能量が増え、前年比で2倍の問い合わせ量に対応できる体制になったということです。
ABEMA〜AIチャットボットと有人オペレーターを連携し、タイムラグなく問題を解決〜
オリジナルのドラマや恋愛リアリティーショー、アニメ、スポーツなど、多彩な番組を展開しており、特に若年層に絶大な人気を博している「ABEMA」では、顧客から問い合わせをいただいてから回答するまでの時間短縮を目的に、AIチャットボットを導入しています。
導入したチャットボットでは、2種類の対応を実施。一つはヘルプページへの案内で、問い合わせの種類が多岐に渡るため、掲載ページへの導線の簡易化を目的として使用。もう一つは有料プランに関する問い合わせ内容の分類で、チャットボット内で必要項目のヒアリングと分岐を実施している。
また、チャットボット内で解決できない内容については有人オペレータへ接続し、タイムラグなく解決できるようにしています。
イオンリテール〜AI肌診断で顧客ごとに最適な「おすすめアイテム」を提示〜
イオンリテールでは、総合スーパー、「イオン」「イオンスタイル」の「Glam Beautique(グラム ビューティーク)」の一部店舗にAI肌診断を導入。店舗に設置したタブレットで肌測定を試すことを可能にしています。またその診断を受け、店舗で自身の肌状態に合ったカウンセリングを受けることも。
独自アプリ「Glam Beautique」にも、AI肌診断機能を実装。簡単なカウンセリング後に顔写真を撮影すると、肌質、毛穴、キメ、透明感、シミ、シワ、潤いの7項目で肌測定結果を表示し、ビューティアーティストからのアドバイスコメントのほか、自分と似た肌データのユーザーの行動情報(購買データ)を、AIが学習・分析し、顧客ごとに最適な「おすすめアイテム」を予測して提示します。
ハイセンス~商品知識や専門用語を個別に学習するAI接客アドバイザー~
電機メーカー「ハイセンスジャパン」では、顧客がお買い物をする際に気軽に質問できる環境を提供することを目的に、「AI接客アドバイザー」を導入。同時に、販売員がより効果的に接客を行うためのツールとしても活用することで、顧客満足度の向上を図っています。
OpenAIプラットフォームの技術を活用して独自にカスタマイズしたサービスで、生成AIを活用し、商品知識や専門用語を個別に学習することで、同社ののテレビに関する質問にも素早く適切な回答を提供するだけでなく、ハイセンス商品の特長やシリーズ別の比較や、テキストまたは音声対話によるコミュニケーションが可能になります。
一部の店舗ではタブレットが設置され、ボタンをタップするだけで利用可能。その他の店舗では、スマートフォンでQRコードをスキャンすることで同様の接客を受けることができます。
AI接客導入のステップと成功のポイント
ここでは、AI接客を成功させるための具体的なステップと、注意すべきポイントについて解説します。導入を検討する際の参考にしてみてください。
導入のゴールとKPI設定
AI接客の導入により、自社の接客のどのような課題を解決し、最終的にどのような目標を達成したいのかを明確にしなければ、自社にとって最適なAIサービスを導入することはできません。
活用の成果を評価するためにも「どの業務をAIに任せるのか」「AI導入により何をどの程度改善するのか」など、目的を明確にし、ゴールを定量的に設定しましょう。
導入コストの把握
AIシステムの導入コストや運用コストを正確に把握し、予算的に問題がないかを事前に確認することも大事なステップです。自社の課題解決に必要なAIサービスの機能を洗い出し、それぞれに必要なコストを算出しましょう。
また運用にもコストがかかることを忘れてはいけません。これらを含めたAIシステム費用の方が人件費よりも高くなってしまうと、導入のメリットが得られないので、コストシミュレーションをしっかり行うことが重要です。
自社の課題に合ったソリューションの選択
AI接客のソリューションは数多く存在します。人手不足を解消したいのか、接客サービスを均質化したいのかなど、自社の課題と改善ポイントを明確にした上で、適切なソリューションを絞り込みましょう。
従業員の協力体制整備
AIは万能ではなく、もちろん弱点もあります。AIの限界とも言えるのは、人間とは違いイレギュラーな対応ができない点。
接客の場面においては、顧客からのクレームなど、事前にAIに学習させたマニュアルでは対処しきれない事態が必ず発生します。そういったケースに備えるために、従業員の協力体制を整え、AIと人間が連携して業務を行う体制を構築する必要があります。
このようにAI接客を導入すると、オペレーションの変更が生じます。AIがヒアリングした結果にもとづいて従業員が対応する場合や、AIが解決できなかった場合の接客フローなどは必ず事前に作成し、AIと人間の連携を密にすることで、顧客満足度の向上や業務効率化を図りましょう。
分析と改善の継続
AIは日々の業務で蓄積したデータを学習して精度を上げていくことができますが、最適なAI接客を継続するためには、定期的にデータのモニタリングと改善が必要になります。正しい情報を返せているか、AIが接客対応できていないものはないか、ユーザーからのフィードバックを活用できているかなどを確認し、適切なチューニングをしていきましょう。
まとめ
本記事では、AI接客の定義や仕組みから、導入のメリット、活用事例、導入ステップなどについて解説してきましたが、いかがでしたでしょうか。
単なる効率化だけではなく、「接客品質の平準化」や「売上最大化」にも貢献するAI接客の活用は、今後の店舗・EC運営において競争力の鍵になります。
しかしAI接客を導入する際には、自社の状況を的確に分析し、適切なシステムを選択することが重要です。
ルビー・グループではこれまで、数多くのラグジュアリーブランドにおけるECの構築、マーケティング、 オペレーションなどを手がけ、様々なマーケティングソリューションをご提供しています。
AI接客を含め、接客品質の向上や売上の拡大などに関するご相談などがございましたら、お気軽にお問い合わせください。
この記事を書いた人

ルビー・グループ コーポレートサイトチーム
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